湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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ウォルトン:バレエ音楽「審問」組曲(トースキー1961編)

2019年01月27日 | イギリス
作曲家指揮LPO(lyrita)1971初版・CD

1943年の作品だがこれはしばしば演奏されるだけあってウォルトンに期待される「ワクワク」「メランコリー」「カタルシス」がぎゅっと詰め込まれている。ゴージャスで新古典で映画音楽的で、ほぼウォルトンダイジェストである。ジョン・ウィリアムスと言ってもいい。全曲はブライデン・トムソンなど録音しているがそれほどながいものではないしネットでも聴けるが、明るく透明でかつ響きの濃い切れたウォルトンは音源で聴いたほうがいいかもしれない(この良い録音ならなおさら)。ここにはウォルトンとその同時代「だった」作曲家の匂いが濃厚に漂う。第二次大戦中にもかかわらずウォルトンは戦意高揚映画など抱え多忙で、これは依頼から初演が四半期ほどと非常に短期だったそうで、思わず有りものを使ったところがかえって面白くなったのかもしれない…二曲目「呪文(シシリアーナ)」の下降音形のリズムがウエストサイドストーリーに聴こえるのは逆としても、アメリカ音楽からのエコーは無いとは言えまい。四曲目「リユニオン(パッサカリア)」は和声的につみあげていく音楽で、親交あった新ウィーン楽派の遠いエコーや、シンフォニア・ダ・レクイエムのフィナーレとの近似性を感じさせられるが、終幕に近づくに連れ、これは親友ヒンデミットの「世界の調和」の最後ではないかとびっくりする。いや、そこまで露骨ではくスコアでは違う見た目になっていると思うが、そんなところを楽しむこともできる。やや長いが。四曲からの組曲。ウォルトンは呆れるほど捌き方がしっかりして重くならない。
 
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