ウォルフィッシュ(Vc)カーティス指揮スワン管弦楽団(NAXOS)CD
二楽章に甘やかなディーリアスふうのメロディが流れるが、全体としてチェロのための曲らしく渋く薄暗い雰囲気が蔓延する。とくに焦燥感溢れる3楽章は硬質な作品を書いていたころの作風だが、アイアランドの個性の一つである呪術的なフレーズは1楽章にあらわれるにとどまり、むしろ同時代者によくあった時代の景色をうつしたような、ある意味個性の薄い音楽になっている。昇りつめて明るい響きを獲得したとしても、旋律性には逃げず奇妙な揺らぎで個性を発揮し、奇妙なくるくる回る装飾音の連環により終わる。演奏はアイアランドの平易な曲とは違った腕の見せ所を、といったところで、バックの弦楽合奏は上手い。いまどきの弦楽合奏の精度だ。ソリストは高音で少し不安定になるところもあるがおおむね曲の邪魔はしない・・・そう、なぜこの曲を弦楽だけで編曲しようと思ったのだろう。均質の音でそろえてしまったため、とくに1楽章は全体の響きの中にソロが埋没し、変な印象派めいた曲になってしまっているというか、何の楽器のためのソナタなのかわからなくなる。終楽章終盤でも弦楽合奏が高音域で重音を伸ばしている下で、ソリストが旋律をかなで続けるが、そう意識して聴かないと、ロマン性の薄い旋律自体を見失う。この編曲はじつにわからない。
二楽章に甘やかなディーリアスふうのメロディが流れるが、全体としてチェロのための曲らしく渋く薄暗い雰囲気が蔓延する。とくに焦燥感溢れる3楽章は硬質な作品を書いていたころの作風だが、アイアランドの個性の一つである呪術的なフレーズは1楽章にあらわれるにとどまり、むしろ同時代者によくあった時代の景色をうつしたような、ある意味個性の薄い音楽になっている。昇りつめて明るい響きを獲得したとしても、旋律性には逃げず奇妙な揺らぎで個性を発揮し、奇妙なくるくる回る装飾音の連環により終わる。演奏はアイアランドの平易な曲とは違った腕の見せ所を、といったところで、バックの弦楽合奏は上手い。いまどきの弦楽合奏の精度だ。ソリストは高音で少し不安定になるところもあるがおおむね曲の邪魔はしない・・・そう、なぜこの曲を弦楽だけで編曲しようと思ったのだろう。均質の音でそろえてしまったため、とくに1楽章は全体の響きの中にソロが埋没し、変な印象派めいた曲になってしまっているというか、何の楽器のためのソナタなのかわからなくなる。終楽章終盤でも弦楽合奏が高音域で重音を伸ばしている下で、ソリストが旋律をかなで続けるが、そう意識して聴かないと、ロマン性の薄い旋律自体を見失う。この編曲はじつにわからない。