湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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マーラー:交響曲第6番

2005年04月06日 | マーラー
○コンドラシン指揮南西ドイツ放送管弦楽団(バーデン・バーデン)(SIBERIAN TIGER:CD-R)1981/1/18LIVE

話題盤になってもよさそうなものなのに話題にならなかったのはやはり録音の悪さ(明らかにエアチェックもの)と演奏の荒さのせいだろう。晩年のコンドラシンとは思えない粗雑さというか、オケ側にもミスが目立ち精度に問題があるし(この精密機械のようなオケにはあるまじきことだ)、解釈もやけを起こしてその場限りで荒々しくなっているのか?というように感じるところがある。気まぐれにも感じる。弦のスピッカートが頻発する曲でそれが音楽にきびきびした律動を与えるのだが、一部なぜかレガートでやらせたりしている、これはロシア時代のコンドラシンであればむしろ逆、粒立たせるほうに専心したであろうものなのに。しかも余り意味を感じない。オケの技術的問題か?と考えると辛い。音色に期待できないオケだけに技術面についても完成度が低いと厳しいのだ。1楽章の最初のアルマの主題やクライマックスなど大きくリタルダンドして格好をつけているのだが、無理があるというか機械的に感じられて仕方ないのは音楽にのめりこまないオケのせいだろう。音は出ているがイマイチ感情を煽らない。3楽章(通常どおり緩徐楽章)もコンドラシンはいつになくゆっくりしたテンポでしっとり聞かせようとするが、入り込めない。どこか音が醒めているのである。解釈に奇怪さをまじえ聞かせるシェルヒェンみたいなタイプならこれでもイケたかもしれないが、率直な解釈で直線的に突き進むコンドラシンにとっては厳しかったのではないか。このオケとの相性は余りよくなかったのではと言わざるをえない。コンドラシンらしい激しく突き刺すような音表現が無いとも言えない(2楽章)のであるが、まとまりがなく強い特徴としては感じられないのである。

4楽章は正真正銘速い。揺れず即物的で豪速球勝負、コンドラシンらしい凝縮された表現がオケにも浸透してテンション高い音楽が繰り広げられる。余りの速さに弦など厳しいところも僅かにあるが、概ねこのオケらしい機械のような精度が戻ってきたと感じた。胸のすくようなスポーツ的快感があり、ドラマティックな曲想とあいまってまるでジェットコースターに乗っているような何も考えなくていい心地よさ。とにかく1楽章に比べればかなりアンサンブル精度が高い(元々マニアックで無理のある書法ゆえ録音バランス次第で聞こえかたがかなり違ってくるから、1楽章はそんなところでたまたまおかしく録れてしまっただけなのかもしれない)から安心して聞ける。最後の奈落に至るまで余りの即物ぶりに拍手にも戸惑いを感じる。ひとつの見識ではあるが、マーラー的な物語性を求めるならお勧めできない演奏であることは確かだ。

とはいえコンドラシン好きはロシアでの正規録音との比較も含め興味深く聞けるだろうし、決して演奏として悪いというわけではない。異常に速くショスタコのようなマーラー、という寸評がいろいろなところに流用されているがあまり知らない人はそういう印象を受けるだろうから、そのてのものが好きなら聞いて損はなかろう。ただ正規を聞いてないなら正規から聞くべきだ。そうすると別にショスタコのようなというよりこれはそういう解釈なのだということがわかるし、シェルヒェンを知っていれば決して速くは無くそう奇異なものでもないということがわかるだろう。すれっからしは思ったより「らしく」ないところが気に入らないというだけで、マニアは情報だけで楽しめるだろうし。ラフ2、チャイ5と並んで三大コンドラシン亡命後ライヴとなりうるかと期待したのだが・・・やや拍子抜けした。それにしてもホワイトノイズが非常に煩い。

最後に、これは2005年1月の新譜であり、一部小売店でのみ取り扱われるCD-R即ち海賊盤である(殆どがアメリカ産のプライヴェート盤を名乗っている)。一部というところがミソで、大々的に売り出せない種類の商品なので情報が不正確だったり素早く入ってこなかったりする。「レーベル」自体消えては新しく出来たり名前を変えたり頻繁に変化していく(SIBERIAN TIGERは前からあるが)。そのため私は誤解してこの盤の中古を物凄い高額(新品の13倍!)でオークション落札してしまった。基本的にCD-Rはクレームが入ったり余りに売れないということがなければ何枚でも注文で作れるたぐいのものなので、ネット通販なら1年くらいは確実に手に入る。入手したいかたは、是非私みたいなヘマをしでかさないようにしてくださいね。中古CD-Rは中古買取店には原則売れないし、ネットオークションも本来的にはそういう出品を禁止していますからリスキーでもあります(逃げ切りで短期出品してる人が多いから私みたいなのが出るんですけどね)。ちなみにCD-Rで人気が出ると正規盤が出るという構図もある。逆に少数販売盤をCD-Rで増産という場合もあり、VOXなどは注文生産型で廃盤の「正規CD-R」を作ったりもしている(一部国内店でも行っているところがある)。様様な形態があるが、いずれにせよ「CD-R」はいずれ正規化のリスクのあるブート盤で、品質も期待できないものとして肝に銘じて入手していただきたい。
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