■中学校
◆総則
◇社会形成に参画 情報手段を積極活用
教育基本法などに従い、教育課程を編成する。道徳活動では職場体験活動などを通じ、規律ある生活、自己の将来、法やきまりの意義の理解を深め、主体的に社会の形成に参画し、国際社会に生きる日本人としての自覚を身に付けるようにする。
10分間程度の短い時間を単位として特定の教科の指導(朝の10分間読書など)を行う場合、体制が整備されているときはその時間を当該教科の年間授業時間に含めることができる。
生徒が情報モラルを身に付け、コンピューターなど情報手段を適切かつ主体的、積極的に活用できるようにし、視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図る。
部活動はスポーツや文化および科学などに親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養(かんよう)等に資するものであり学校教育の一環として教育課程との関連が図られるよう留意する。
障害のある生徒などには、個々の生徒の障害の状態などに応じた指導内容や指導方法の工夫を計画的、組織的に行う。
◆理科
◇2年で電力量/3年でイオン
エネルギーや粒子など科学的概念を柱に、小学校からの指導内容の一貫性を重視する。
また、観察や実験の結果を分析・解釈する学習活動を充実させる。第1、第2分野共通の指導内容に「自然環境の保全と科学技術の利用」を新設し、環境教育を充実。
▽1年
※力とばねの伸び
※質量と重さの違い
※水圧
※種子をつくらない植物の仲間
▽2年
※電力量
※周期表
※生物の変遷と進化
※大気の動きと海洋の影響
▽3年
※力の合成・分解
※イオン
※遺伝の規則性
◆数学
◇統計、確率を充実
一部の内容を複数の学年で重複して指導する反復指導で、基礎的・基本的な知識と技能の定着を図る。「資料の活用」を新設し、統計や確率に関する指導を充実させる。
学ぶ意義を実感できるよう、知識を実際に活用する「数学的活動」を新たに規定。
▽1年
※数の集合と四則
※図形の(平行、対称、回転)移動
※投影図
※球の表面積と体積
※資料のちらばりと代表値
※不等式
▽3年
※有理数、無理数
※二次方程式
※相似形の面積比と体積比
※円周角の定理の逆
※事象と関数
※標本調査
◆外国語
◇英単語、900から1200へ
「聞く・話す・読む・書く」を総合的に学ぶ活動を充実。指導語数を現行の900語から1200語程度に増やす。このうち、現行100語の共通語数は削除。教材の題材例として日本の伝統文化や自然科学を追加する。
※まとまりのある英語を聞き、概要や要点を聞き取る
※テーマを決めて簡単なスピーチをする
※読んだ内容に対し、感想や賛否、その理由などを述べられる
※文と文のつながりに注意して文章を書く
※言語活動と効果的に関連させて文法を指導する
◆国語
◇言語活動に重点
生活や学習に必要な能力を身につけるため、言語活動を充実。現行2、3年でまとめて規定していた目標と内容を各学年ごとに示す。「伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項」を新設。教材に近代以降の代表的な作家の作品を取り上げることを規定。
▽1年
※構成についての指導事項を新設
▽2年
※詩歌をつくる、物語を書く
※説明や評論などの文章を読み、自分の考えを述べる
▽3年
※時間や場の条件に合わせたスピーチをする
※批評する文章を書く
※論説や報道などに盛り込まれた情報を比較して読む
◆社会
◇歴史は25時間増
日本と世界の諸地域の地誌学習を充実。我が国の歴史の流れの理解を重視し、近現代に関する学習を充実させる。地図や資料の読み取り、解釈、論述、意見交換などの学習活動を重視する。
分野別配当時間を地理的分野120時間(15時間増)▽歴史的分野130時間(25時間増)▽公民的分野100時間(15時間増)とする。
▽地理的分野
※日本の地域的特色を動態地誌的な手法で学習
※世界の宗教分布
▽歴史的分野
※冷戦の終結
※沖縄返還、日中国交正常化、石油危機
▽公民的分野
※現代社会における文化の意義や影響
※裁判員制度
◆保健体育
◇武道とダンス必修--1、2年
発達段階に応じて指導内容を明確にし体系化。1、2年で武道とダンスを選択から必修に。健康と安全を重視するため、自然災害に伴うけがの防止、医薬品に関する指導を充実する。
球技は「ゴール型」「ネット型」「ベースボール型」の3類型に分けて規定。
▽1、2年
※武道とダンスを必修化
※2次災害に伴うけが(2年)
▽3年
※医薬品の正しい使用
◆音楽
◇「赤とんぼ」「荒城の月」…歌唱教材に7曲
表現・鑑賞活動で「共通事項」を新設。伝統的な邦楽の指導を充実させるほか、歌唱教材に国内で親しまれてきた歌7曲を規定。
※表現領域を「歌唱」「器楽」「創作」の項目に分類
※「赤とんぼ」「荒城の月」など7曲について、各学年で1曲以上を指導
※民謡、長唄など
<必修となる歌唱教材の曲名>
(1学年で1曲を選ぶ)
曲名 作詞 作曲
赤とんぼ 三木露風 山田耕筰
荒城の月 土井晩翠 滝廉太郎
早春賦 吉丸一昌 中田章
夏の思い出 江間章子 中田喜直
花 武島羽衣 滝廉太郎
花の街 江間章子 團伊玖磨
浜辺の歌 林古渓 成田為三
◆技術家庭
◇エネルギーの変換、生物育成を必修化
エネルギー変換や生物育成に関する学習を必修化。インターネット上のマナーなど情報モラルの学習を充実させる。食育を推進。
▽技術分野
※生物育成に関する技術
※著作権など情報モラル
▽家庭分野
※幼児とのふれ合い
※地域の食文化への理解
◆美術
◇作品への思い、互いに批評も
指導内容を資質や能力ごとに整理。表現・鑑賞活動で共通して必要となる能力を示した「共通事項」を新設。日本の美術文化について鑑賞指導を充実させる。
※分かりやすさ、美しさを考える活動
※作品に対する思いを互いに説明、批評する活動
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◇「落ちこぼれ増える」 授業時間増に疑問--京都造形芸術大教授・寺脇研氏
授業時間に加えて、学習内容も増えれば、落ちこぼれが再び増えてしまう。まず授業時間で言えば、画一的に増やす必要は全くない。学習意欲もあり、学習方法も身につけている子どもは自由に勉強をさせればいい。一方、逆の子どもは標準時間以上の授業をしてもいい。画一的な教育をすればするほど、授業についていけない子どもが増えることになる。
学習内容について言えば、「イオンを教えないのはおかしい」と現行学習指導要領を批判する人がいるが、その人たちはそれを必要としているんでしょう。私はイオンなんて知らないし、子どもの人生にイオンがどれほど必要だろうか。それが新しい学習指導要領の案で復活し、覚えなければ落ちこぼれと言われる。イオンを学びたい子や必要な子が学べばいい。
現行学習指導要領の狙いは落ちこぼれを減らそうということだった。東京・渋谷のセンター街を見てください。10年前はチーマーがいて歩けなかった。それが今は違う。落ちこぼれてやけになることが少なくなり、吹きだまりではなくなった。学力低下と騒いでいる学者や政治家、メディアは「中の上」以上のレベルの子どもを見て騒いでいる。落ちこぼれはどうでもいいのですか。文部科学省の本音も、騒いでいる人がうるさいから分量を増しただけですよ。
私立学校に人気が出るのも、現在はオーダーメードの教育が求められているからだ。学習指導要領は基本的に既製品。公立でもオーダーメードの教育ができれば、行きたい人が増える。私が「さらば ゆとり教育」と言っているのは、さらば学習指導要領という意味であり、指導要領に振り回されずに目の前にいる子どもに自信と希望を持たせる教育をしようという意味だ。地方分権が進めば、指導要領や文科省はいらないんですよ。
学習指導要領改定よりも、今の教育委員会や教師がどれだけ変われるか。愛知県犬山市や京都市、横浜市など一部自治体では文科省を頂点とする教育体制から離れ、独自に変わり始めている。文科省がなくても、指導要領がなくても教育はできる。それが理想だということを忘れないでほしい。教育委員会や教師がこのことに気づかないまま既製品の教育をしている限り、10年後の公立学校は崩壊しているでしょう。
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■人物略歴
◇てらわき・けん
京都造形芸術大教授。元文科省官房審議官でゆとり教育の「旗振り役」と言われた。近著に「さらば ゆとり教育」(光文社)。
毎日新聞 2008年2月16日 東京朝刊
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