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バングラデシュの船舶解体場=社会部・福田隆、写真部・森田剛史

2009年03月05日 | スクラップ

 

 
■重油の海、輝く笑顔


 世界の廃船(100トン以上)の44%を扱う世界最大の船舶解体の場がある。バングラデシュ東部にある第2の都市・チッタゴン市のベンガル湾岸だ。危険労働や環境汚染から、欧州を中心に批判が強いが、安易な廃止論は、地元の貴重な職の場を奪うだけでなく、世界規模の船舶リサイクルの破綻(はたん)を招き、日本など海運国は廃船であふれてしまう。そこで働く人たちの油まみれの笑顔は、グローバル経済を考える格好の教材でもある。

 「こっちに来い、お前も中に入れよ!」。干潟に乗り上げた廃船を取材中、船底で油をかき出していた労働者たちに、笑顔で招かれた。別の場所では、若い男性がバーナーを使って大きな部材を運搬可能な大きさに切断している。見事に切り落とすと、私の方を見て「どんなもんだい!」と目を輝かせた。

 辺りは重油のにおいが立ちこめ、黒煙が上がり、海には重油が流れ出している。そんな問題だらけの、劣悪な場所で遭遇した彼らの躍動感あふれる姿からは、体を張って稼いでいるんだという「誇り」さえ感じられた。

 ただ、過去30年間に少なくとも1000人が労災事故などで死亡しているという市民団体の推計もある。船舶解体を安全でクリーンな産業に改善するために、国際海事機関(IMO、本部・ロンドン)は現在、日本政府の主導で、シップリサイクル条約の制定作業を進めている。

 船舶解体が必要とされる現状を知った私は、安易に「危険だからやめろ」とは言えない。安全な船舶解体の実現のため、海運国に住む者として何ができるか、真剣に考えたい。




毎日新聞 2009年3月4日 大阪朝刊


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