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[過労自殺] 社員の健康に目配りを

2008年05月26日 | スクラップ
社説(2008年5月26日朝刊)




 日本の経済力を支えている働き手たちが追い詰められている。過労が原因で精神疾患にかかり自殺した(未遂を含む)として労災認定された人が二〇〇七年度は八十一人に上った。前年度の六十六人を上回る過去最悪の数字だ。

 自殺を含む過労による精神疾患の認定者は、〇六年度に比べ三割増え、労災申請は九百五十二人、四年前に比べると倍増だ。

 大きな特徴として、
(1)過労による脳・心臓疾患の申請者を初めて上回った
(2)年代別認定者は三十代が37%、二十代25%、四十代23%、と若い世代に広がっている
 ―が挙げられる。

 こういった過労自殺に追い込まれた人たちの中には、月平均の残業時間が百時間を超える人が少なくない。県内で昨年自殺した五十代の男性は、自宅にパソコンを持ち帰って仕事をした結果、残業時間は百六十時間に達したと指摘されている。男性は今年三月に労災認定されたが、遺族らによると、自宅で深夜まで作業するうちに不眠を訴え睡眠薬を服用。体重が約二十キロ減り、「数カ月で別人のようになった」という。

 職場で心の病が広がっている背景には、リストラなどで負担が格段に増えていることがある。

 かつて日本企業は、社員が連帯し組織力で経済成長を支えた。しかし、バブル崩壊で環境は一変、コスト削減に躍起になった。そして現在、企業が体力を回復し光を取り戻す半面、個人の暮らしぶりには格差が目立つ。職場では社員が減り、ノルマの達成や成果主義などで個人の力量が試される中、仕事への生きがいや展望が見えないという閉塞感が漂う。

 社員は、企業にとって大切な人材であり資産といえる。しかし、収益アップに血道を上げるあまり、社員の個性を見失い、単なる労働の駒としかとらえていないのではないか、と疑いたくなる企業もある。

 もちろん、問われるのは組織だけではない。働き手である私たち一人一人も忙しさにかまけて、孤立する人から目を背けてはいないだろうか。社内の風通しをよくし、誰にも相談できずに悩む同僚に手を差し伸べつつ、集団的に問題解決に当たる余裕がほしい。

 そのためにも企業の意識改革が求められよう。社員の労働時間や業務内容に偏りがないかを十分に把握し、職場環境の改善に向けどう対策を打ち出すのか。「社員は宝である」と認識し、雇用に対する企業倫理を厳しく問い直す必要がある。

 二年前、改正労働安全衛生法が施行され、事業者に対して、長時間働いている社員への医師による面接指導などが義務付けられた。今年四月からは労働者五十人未満の事業所にも適用されるようになった。

 前述の県内男性の場合、会社側が、業務内容を十分把握しきれていなかった部分がある。県内は零細企業が多く、業績を向上させるためには個人の力に頼らざるを得ない。だからこそ会社の浮沈を左右しかねない社員の健康問題には、より細かい配慮が必要だ。それを怠る企業に未来はない。




沖縄タイムス
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