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四谷 左近 『洋風うどん』

左近(さこん) 『洋風うどん』

昔、新宿の四谷三丁目に、「左近(さこん)」という甘味処があった。
交差点近くの裏通りにある、四人がけのテーブルが4つほどあるくらいの、
小さなお店だった。優しいおとなしい、人のよさそうなおばさんと、
旦那さんであるおじさんとが、2人でやっているお店だった。

私の生まれ育ちが四谷三丁目だったので、子供の頃からその店
に行っていたのだが、中学、高校のときには、それはそれは頻繁に通った
のを覚えている。

お目当ては、「洋風うどん」たしか650円くらいだったか。
それが、とにかくおいしい!トマト味のスープに、うどんが煮込んであり、
それに煮込まれたキャベツと、ハム、チーズ、ピーマンがのっている。
アツアツの鍋に入って出てくるのだが、オレンジ色のスープを
洋服にはねないよう気をつけながら、ズルズルといただくのだ。
うーん。こうして書いていても、匂いがしてきて食べたくなる。

一緒にオーダーするのは「抹茶フロート」。こちらも絶品なのだ。
抹茶と牛乳がシェークされている冷たいジュースの上に、丸いアイス
が乗っている。ジュースに漬かっているアイスの部分が凍っていて、
うーーーーん、何とも言えぬおいしさなのだ。

洋風うどんのアツアツトマト味に、ほんのり苦い抹茶の冷たい味が
妙にマッチしていて、とにかく最高の組み合わせだった。

いつも食べられる!と思っていると、それが食べられないと知った時の
衝撃は大きいもので、高校を卒業し、しばらくぶりで「左近」を訪ねた
ときのこと。久しぶりだったから、とにかく洋風うどんが食べたくて、
ウキウキした気持ちで店の前に行くと、なんと、閉店していたのだ!

同じく一緒に左近に通っていた友人と、しばし店の前で立ち尽くして
しまった。張り紙には、「長い間ありがとうございました」としか書かれて
いず、引越してしまったのか、とにかく店を閉めたのか、何もわからない
状態だった。
仕方なく、がっくり肩を落とし家に帰ったのだが、どうしてもあきらめきれ
ず、「左近」の行方を探すことにした。
また、転居先で、もしかしてお店をやっているのでは!と考えたのだ。

何をどうしたのか、覚えていないのだが、恐らく近所の人に聞いて、
そこを管理していた不動産屋に連絡したのは覚えている。
そして、努力の甲斐あり、「左近」のおばさんと電話で話しができることに。
何でも、おじさん(旦那さん)の実家である埼玉に、店をたたんで引っ越して
しまった。お店はもうやっていず、残念ながら洋風うどんももう作っていない、
と、残念な結果を知ることになったのだ。

永い間、おいしいうどんをありがとう!とおばさんにお礼を言い、電話を
切った。おばさんも、何度も何度もお礼を言ってくれて、なんとも感動的な
瞬間だった。(^^;ゞ

しかし!やはりあの味が忘れられず、友人と「洋風うどん」を作るべく
研究に研究を重ねた結果、あの味には到底およばないのだが、限りなく
近い、あの味を再現することに成功。

今では時々、自分で洋風うどんを作る。作るたび、まるでタイムスリップした
ように、中学高校時代のあの頃に戻ったような感覚になる。
味、においとは、そんなものなのかもしれない。

トマト味が甘く、すっぱい。
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