レストラン『アメスコ』の思い出

私の実家は、昔、四谷、舟町でレストランを経営していた。
そして、もうかれこれ十数年前に、２０年近くの歴史に幕を閉じ、
今では、そこはビルになり、叔父がバーをやっている。

このレストラン、名前は「アメスコ」。
店舗の裏と二階は、住居になっていて、私はそこで１５年ほど
過ごした。そして高校生の頃などは、料理を作る叔父や、
カウンターを任されている叔母たちにお願いして、ウエイトレス
のアルバイトもした。
裏で仕込みの手伝いなどもした。

「アメスコ」は、当時めずらしく、とてもオシャレな店であった。
店内は、ウッド調（笑）、カウンターとテーブルがいくつかあり、
割と広めの店内には、観葉植物がたくさん置いてあった。
入口側の壁は、入口も含め、すべてガラスだったので、店の
中はいつも明るかった。
壁には、デザイナーである叔母の趣味で、アンディーウォーホール
の”ミックジャガー”などがかかっていたっけ。

昼間は、ハンバーグやシチューやら、とにかくおいしい食事を
出してたが、夜にはバーになり、昔流行った”カフェバー”（なつかしい）
の走りだったように思う。
料理なども、おいしかったので、ちょっとは有名な店であった。

カウンターには洋酒がたくさん並び、エスプレッソマシンなども置いて
あり、当時からエスプレッソや、カフェオレなどのメニューがあった。
いつもJAZZやブルース、ロックなどのレコードがかかっており、
その影響で、私も割りと小さい頃から、いろいろな外国の曲に触れる
ことになった。
子供の頃から、店には出入りしていたのだ。

そして、場所柄、「アメスコ」には、多くのいわゆる”業界人”の人たち
がたむろしていた。当時はフジテレビが近かったので、テレビ局の人、
出版社の人、プロダクションの人・・・・
芸能人などもよく来ていたっけ。
そんな世界の人たちは、やっぱり変わっている人が多くて、話も
おもしろい。小学生、中学生の私にはとても刺激的で、しょっちゅう
怒られながらも店に顔を出し、そんな人たちの話を聞いていた。

そして、今では、そのお客さんの多くは、有名なカメラマン、俳優、
コピーライター、作家、モデル、プロデューサーとして大活躍している
のであった。もちろん、今も付き合いがある人たちもたくさん居る。
もうみんな、とっくに偉い人たちになってしまったのだけど、
会えば、あの時のまま、私に接してくれる。相変わらずおもしろい話を
たくさん聞かせてくれるし、その人たちの大活躍は、非常に嬉しいものだ。

兄や従姉妹などは、今でもそんな人たちとの人脈を、大事にし、
仕事に役立てている。

とにかく、今思えば、「アメスコ」は、刺激や楽しみの宝庫であり、
子供ながらに、ある種、憧れの世界をのぞき見ることのできる場所だった
ように思う。
「アメスコ」のおかげで、人と知り合うこと、人の集まる場所の重要さ、
人との出会い、など、たくさん勉強したのだろうし、計り知れない財産を
得たのだ、と今にして思う。
そうして有名になって活躍している人たちの中でも、「アメスコ」での
知り合い同士で仕事をし、成功している人たちも居るくらいだ。

今、もし「アメスコ」があったら・・・と時々考える。
また、大人になってからのそんな場所というのも、きっと楽しかったのだ
ろうなああ、としみじみ思うのだ。

やはり、人の集まることろ、自分の知らない世界のいろいろな話を
聞けるというのは貴重で、自分の人生を豊かにしてくれる大切な場所
なのだと思う。

アメスコをやっていた叔母が、銀座で小さな素敵なバーを開いている
のだが、当時の「アメスコ」のお客さんも来てくれている。
「アメスコ」が恋しい私は、叔母の店を手伝う！という名目で、お酒も
飲めないくせにバーに通い、また自分の知らない世界を覗いたりしてる。

相変わらず、いろんな人が居て、おもしろいのだ。

※そういえば、田宮二郎の「白い巨塔」のドラマ版だったか映画版だったか
のロケに、「アメスコ」が使われている。
今度、チェックしてみたい。