大井川の風

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商人の心 未来のための推譲 受け継がれる報徳思想

2010-03-20 17:30:00 | あきんど入門
毎月20日は「あきんど入門」をお届けしています。今日は昨年12月の続きで報徳思想の根幹の一つ「推譲」について考えます。

まず「勤労」を行い、その結果としての消費行動が「分度」という説明をいたしました。収入に見合った生活を送ることを「分度を立てる」と呼びます。そして分度が立ったならば、次の段階として分度の余りを将来のため、そして子孫のために、さらには地域や国のために譲っていく。その譲る行動が「推譲」と呼ばれる思想です。写真の分度袋には「自己・子孫・一族のための推譲」とあり、内訳には預貯金、株式をはじめ事業資金、保険、教育費が入っています。「推譲」は難しいことではなく、日々の消費行動を経て残った財貨を、将来のために準備をすることなのです。


では、なぜ「推譲」が大切なのでしょうか。二宮尊徳は、「推譲」は人間が励んで得た結果であり、その点では単なる贈与とは違うと言っています。「勤労」「分度」「推譲」というサイクルを維持することに価値があるのだと説いています。
そしてもう一つ、何か事が起きたらこの「推譲」から支出することも説いています。現代では万一の時には借入をして対応することもできます。しかし借入は一時的にはうまく対応できるようで、実際には返済がありますから、返済分が日々の分度に加わることで、長い間収支のバランスを欠くことになります。またインフレ傾向の時は、物価の上昇とともに収入も増え返済も楽になってきますが、現在のようなデフレ局面では、収入が減っても返済の金額は変わらないので、分度への影響はたいへん大きなものになってきます。

尊徳は飢饉に備えて普段から米を備蓄したり、田畑の改良を行ったりしました。そしていざ飢饉の時には備蓄していた米を放出して、餓死者を出さずにその年を乗り切りました。尊徳は「飢饉の時には雑草を食べればよいというが、飢えはしのげても、その草が原因で必ず病気が蔓延し病死するものがでる。」と説いています。現代に置き換えると、「様々な支援制度によって収支は一時的に凌げても、後々それが必ず尾を引く」ということになるでしょうか。

推譲からどんどん話が膨らみましたが、つまり「景気が良いときに何をするか、何をしてきたか」ということ。・・・本当に身につまされるお話です。

※明日はまた空の話題に戻ります。