劇場彷徨人・高橋彩子の備忘録

演劇、ダンスなどパフォーミングアーツを中心にフリーランスでライター、編集者をしている高橋彩子の備忘録的ブログです。

デラシネラβ 小野寺修二『ロミオとジュリエット』

2011-09-25 02:17:34 | 観劇
デラシネラβ『ロミオとジュリエット』@IID 世田谷ものづくり学校・マルチプルスペース


公演規模の小ささからして、ささやかなトライアル的公演だと思っていたけど、
(実際そういう趣旨もあるにしても)、さすがにセンスが良いし完成度もかなり高い舞台だった。

■コンパクトな空間での贅沢なパフォーマンス

上演場所の世田谷ものづくり学校は、廃校となった中学校の教室をリノベーションした小さな空間。
ちょっと動けばぶつかりそうな壁、ダンス的な内容には不向きであろう低い天井・・・

しかし、作・演出の小野寺修二やスタッフたちはこの特性を逆手にとって、
極めて贅沢なパフォーマンスを作っていた。
低い天井からの明かりはダイレクトに輝き、コンパクトな空間全体の色を刻々と変えて行く。

そんな中で、大庭裕介、河内大和、斉藤悠、菅彩夏、藤田桃子、そして小野寺自身が、
躍動的な動きあり台詞あり、あるいはミニチュアの小道具や指人形あり…の、
多彩で雄弁な世界を作っていて、ニクいほど素敵だった。
観客は50名くらいだろうか? 1/3ほどは舞台スペース内に座ることになる。
あの空間、あの演出でなら、観客参加やラフなおふざけもOKな私であった。


■独特の表現を模索しながら、文学へ

さて、この舞台は、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を扱っている。
そうしたダンス/パフォーマンス作品は珍しくないが、たいてい、おおまかな流れを踊りで綴っていく。
一方、ストレートプレイとしてシェイクスピアのホンを上演する場合、
古風な言い回しや長さを、どうカットして現代に即した公演とするかは、一つのポイントと言っていいだろう。

だが今回、小野寺は、原本の言葉(松岡和子訳)をかなり忠実に使い、
原本に隠れている面白さも含めて取り出し、ある時はざくっと組み合わせ、
かと思うとユニークな動きや趣向でつなぎ、なんと1時間に再構成してしまった。
キャスト・スタッフ一同のこの力技には脱帽である。

近年、文学的大作に挑んでいる小野寺率いるデラシネラ。
次回以降『オイディプス』『カラマーゾフの兄弟』と続く。
『ロミオとジュリエット』ほどポピュラーとは言えない重厚な作品群のため、また課題も出るだろうが、
小野寺が今挑んでいる新たな表現ーー動きと言葉のバランス含め――の展開に早くも胸は高鳴っている。

と先走ったけど、『ロミオとジュリエット』の公演は9月29日(木)まで。
当日券もあるらしいのでぜひ。2500円、損はないと思うなあ。

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