一度も任期をまっとうしたことのない政治家〜吉村洋文大阪府知事
志水博子(元教員)
現大阪府知事吉村洋文氏の経歴をご存じだろうか。市会議員、衆議院議員、市長、すべて
任期途中で辞職している。まずはその経歴を見てみよう。
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①2011.4.10大阪市会議員としてスタート
大阪維新の会公認で大阪市会議員選挙に出馬し当選。
なお、任期中の2013年5月から大阪維新の会市議団政調会長を務める。
②任期途中辞職し衆議院議員に立候補
ところが、任期半ばにして大阪市会議員を辞職。2014年12月14日に行われた衆議院議員総
選挙に維新の党公認で出馬するも落選。が、比例近畿ブロックで復活当選。
なお、在職中、大阪維新の会の「都構想推進本部」の局長も務める。橋下徹大阪市長の信
頼も厚く、大阪都構想の制度設計では中心的な役割を担っていた。
③またもや任期途中で辞任し大阪市長選に
ところがである。またしても任期半ばにして、2015年10月1日に辞職、橋下徹の引退に伴
う大阪市長選に大阪維新の会公認で出馬し当選。2015年12月19日大阪市市長に就任。
なお、2017年には、2025年万博博覧会誘致委員会日本副会長に就任している。
④またまた任期途中辞任、府知事に。
ところが、ご承知のように、大阪都構想住民投票の実施をめぐり公明党との協議決裂を受
けて、2019年3月20日付で大阪市長の辞職願を提出し、大阪府知事選に出馬を表明。これ
に対し、大阪市議会は反対多数で不同意としたが、3月21日の府知事選告示日に市長職は
自動失職、2019年4月7日大阪府知事選挙当選。
なお、2019年8月、日本維新の会の副代表に就任。
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さて、この経歴をどのように解釈したらよいのだろうか。吉村知事という政治家は、いったい誰のため何のために政治を行なっているのだろうか。
まず、彼は徹底した組織人ではないだろうか。市会議員も衆議院議員も市長も任期途中で辞職したのは、彼個人の意思というよりは「大阪維新の会」ひいては橋下徹氏の意思だったのではないだろうか。地域政党であった大阪維新の会結成当時の綱領だったか党則だったか、見て驚いたことがあった、何も規定されていないのだ。それだけ橋下徹という個人が担っている面が大きかったのだろう。そして、それは現在でも続いているように思う。
テレビで見る吉村知事はとても真面目に見える。それに熱い。それに嘘はないかもしれない。でもいったい誰のために何のために努力しているのだろうか。
一昨年、あれほど熱心に取り組んでおり、全国的にもよく知られた吉村市長の施策、すなわち全国学力テストの順位向上を目指し、テスト結果を学校予算や教員の人事評価・給与に反映するという施策。熱心に取り組んでいたが、任期途中でいとも簡単に投げ出してしまった。もっとも、私たち市民は、学力テストの順位に支配された彼の教育観を危険視していたので、よかったと言えばよかったのだが。これは現在のところ大阪の市民運動や組合が抗することによって頓挫している。しかし、あの時の彼は本気だったに違いない。にもかかわらずそれを全うしようとはしなかった。
知事としても同じ傾向は見られる。本年5月5日大阪府新型ウイルス対策本部会議で、彼は教委を差し置き、いともあっさりと今年度の中3チャレンジテスト中止を自ら言い出したのである。教委でさえ知事に忖度するあまり言い出せなかったのだが。教委の独立性を冒すと同時に、何事も「政治が決める」と言うのが彼の、と言うより橋下維新のお家芸である。
吉村さんを見ていると、現職高校教員だった頃こういう生徒いたなぁ、と思い出す。真面目な努力家なのだが、目前のことしか見ないというか、見えていない生徒だ。例えば今度の学期末テストでは、学年十番以内に入るとか、そういう目の前の目標のためには頑張れるが、はて、それであなたは何をしたいの?と問うと答えられない。思うに、吉村知事もいつも眼前の目標には、それこそ目が血走るほど疲れも忘れて一生懸命取り組むのだが、それを簡単に放り出すところを見ると、目前の成果しか頭にないのかと勘繰ってしまう。
ひょっとして吉村知事が維新の指示によって国政を目指すなら、全国学テも今年度中止と
なり、学力アップを目指したところで、戦略的に既に賞味期限切れであり、あっさり捨て
たのかもしれない。
今、安倍政府のコロナ禍無策に対し“大阪モデル”とやらを強調し、それによって人気を
博すれば国政に打って出るつもりなのかもしれない。しかし、それも自分の意思というよ
りは、彼を操る誰かによってマインドコントロールされているように見える。つまり、彼
にはある種の思想など、ただのカケラもないのだかもしれない。彼は「優秀」だが、彼を
「優秀」としているのは、大阪維新の会すなわち橋下氏から見てのことである。つまり吉
村氏は橋下氏の狙い通りに動いてくれる政治家なのだ。でなければ、そうそう任期途中辞
職はしないだろう。大阪維新の会にとってみれば彼は非常に使い勝手のいい駒なのかもし
れない。しかし、それは市民である我々から見れば、どれほどの思いで選挙で選ぼうが、
彼にとっては1票を入れた市民などは眼中にないということかもしれない。
彼の政治理念は何であろう。私には橋下徹の思い通りに動くだけで、彼自身の政治理念な
どないのかもしれないと思えるのだが、さて大阪府知事として今度は任期をまっとうする
だろうか? 誰かに言われて辞職するようなら、彼はやはり維新の駒に過ぎないように思う。
志水博子(元教員)
現大阪府知事吉村洋文氏の経歴をご存じだろうか。市会議員、衆議院議員、市長、すべて
任期途中で辞職している。まずはその経歴を見てみよう。
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①2011.4.10大阪市会議員としてスタート
大阪維新の会公認で大阪市会議員選挙に出馬し当選。
なお、任期中の2013年5月から大阪維新の会市議団政調会長を務める。
②任期途中辞職し衆議院議員に立候補
ところが、任期半ばにして大阪市会議員を辞職。2014年12月14日に行われた衆議院議員総
選挙に維新の党公認で出馬するも落選。が、比例近畿ブロックで復活当選。
なお、在職中、大阪維新の会の「都構想推進本部」の局長も務める。橋下徹大阪市長の信
頼も厚く、大阪都構想の制度設計では中心的な役割を担っていた。
③またもや任期途中で辞任し大阪市長選に
ところがである。またしても任期半ばにして、2015年10月1日に辞職、橋下徹の引退に伴
う大阪市長選に大阪維新の会公認で出馬し当選。2015年12月19日大阪市市長に就任。
なお、2017年には、2025年万博博覧会誘致委員会日本副会長に就任している。
④またまた任期途中辞任、府知事に。
ところが、ご承知のように、大阪都構想住民投票の実施をめぐり公明党との協議決裂を受
けて、2019年3月20日付で大阪市長の辞職願を提出し、大阪府知事選に出馬を表明。これ
に対し、大阪市議会は反対多数で不同意としたが、3月21日の府知事選告示日に市長職は
自動失職、2019年4月7日大阪府知事選挙当選。
なお、2019年8月、日本維新の会の副代表に就任。
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さて、この経歴をどのように解釈したらよいのだろうか。吉村知事という政治家は、いったい誰のため何のために政治を行なっているのだろうか。
まず、彼は徹底した組織人ではないだろうか。市会議員も衆議院議員も市長も任期途中で辞職したのは、彼個人の意思というよりは「大阪維新の会」ひいては橋下徹氏の意思だったのではないだろうか。地域政党であった大阪維新の会結成当時の綱領だったか党則だったか、見て驚いたことがあった、何も規定されていないのだ。それだけ橋下徹という個人が担っている面が大きかったのだろう。そして、それは現在でも続いているように思う。
テレビで見る吉村知事はとても真面目に見える。それに熱い。それに嘘はないかもしれない。でもいったい誰のために何のために努力しているのだろうか。
一昨年、あれほど熱心に取り組んでおり、全国的にもよく知られた吉村市長の施策、すなわち全国学力テストの順位向上を目指し、テスト結果を学校予算や教員の人事評価・給与に反映するという施策。熱心に取り組んでいたが、任期途中でいとも簡単に投げ出してしまった。もっとも、私たち市民は、学力テストの順位に支配された彼の教育観を危険視していたので、よかったと言えばよかったのだが。これは現在のところ大阪の市民運動や組合が抗することによって頓挫している。しかし、あの時の彼は本気だったに違いない。にもかかわらずそれを全うしようとはしなかった。
知事としても同じ傾向は見られる。本年5月5日大阪府新型ウイルス対策本部会議で、彼は教委を差し置き、いともあっさりと今年度の中3チャレンジテスト中止を自ら言い出したのである。教委でさえ知事に忖度するあまり言い出せなかったのだが。教委の独立性を冒すと同時に、何事も「政治が決める」と言うのが彼の、と言うより橋下維新のお家芸である。
吉村さんを見ていると、現職高校教員だった頃こういう生徒いたなぁ、と思い出す。真面目な努力家なのだが、目前のことしか見ないというか、見えていない生徒だ。例えば今度の学期末テストでは、学年十番以内に入るとか、そういう目の前の目標のためには頑張れるが、はて、それであなたは何をしたいの?と問うと答えられない。思うに、吉村知事もいつも眼前の目標には、それこそ目が血走るほど疲れも忘れて一生懸命取り組むのだが、それを簡単に放り出すところを見ると、目前の成果しか頭にないのかと勘繰ってしまう。
ひょっとして吉村知事が維新の指示によって国政を目指すなら、全国学テも今年度中止と
なり、学力アップを目指したところで、戦略的に既に賞味期限切れであり、あっさり捨て
たのかもしれない。
今、安倍政府のコロナ禍無策に対し“大阪モデル”とやらを強調し、それによって人気を
博すれば国政に打って出るつもりなのかもしれない。しかし、それも自分の意思というよ
りは、彼を操る誰かによってマインドコントロールされているように見える。つまり、彼
にはある種の思想など、ただのカケラもないのだかもしれない。彼は「優秀」だが、彼を
「優秀」としているのは、大阪維新の会すなわち橋下氏から見てのことである。つまり吉
村氏は橋下氏の狙い通りに動いてくれる政治家なのだ。でなければ、そうそう任期途中辞
職はしないだろう。大阪維新の会にとってみれば彼は非常に使い勝手のいい駒なのかもし
れない。しかし、それは市民である我々から見れば、どれほどの思いで選挙で選ぼうが、
彼にとっては1票を入れた市民などは眼中にないということかもしれない。
彼の政治理念は何であろう。私には橋下徹の思い通りに動くだけで、彼自身の政治理念な
どないのかもしれないと思えるのだが、さて大阪府知事として今度は任期をまっとうする
だろうか? 誰かに言われて辞職するようなら、彼はやはり維新の駒に過ぎないように思う。
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