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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

「奨学金」返済をめぐって

2008年10月13日 | 格差社会
 ◆ 「奨学金」返済をめぐって
古葉計一

 「奨学金を返済しないでいるとどうなるか」の件で若干でもお伝えしたく、ここに奨学金をめぐる現状を書かせていただきます。
 修士・博士の大学院の期間中受け、育英会からの第一種奨学金で計450万ほど「借りて」おりますが(さらに支援機構とは別種の貸与の奨学金もあり、こちらもおなじく悩みの種です)、私の場合、猶予期間を過ぎ、収入もおぼつかないので放置しておりました。すでに払い込み票は何度も自宅に届いています。
 支援機構からの直接の電話も何度かありました。その後、「保証人」である親元にも払い込み票とともに、返済しない場合、法的措置を講ずる旨の通知が届きましたが、そのため親が精神的に不安定となり、それゆえ自身も大変な精神的負担を強いられるという事態が発生しております。現在も彼らの精神的な不安定状況は継続しているといえるのですが、この先このような状態が続くことははっきりいって耐えがたいし、さまざまなことに支障をきたします。
 また、支援機構でなく民間の債権管理会社からも電話がかかり、払い込み票の入った封書が届いております。これは私本人の所にも、それからやはり親の所にもあり、管理会社の電話対応はいまのところはまだソフトでしたが(私の所にかかってきたときは「返済を願います」という感じだったのですが、親にかかってきた方はわかりません)、民間でもありますので、これから先どんな取立てをされるかと思うとやはり不安になります。

 法的措置云々というのは、「返済未済奨学金の一括返還請求(支払い督促申し立て予告)」が届いたことです。この書類には、上記の返済金額とともに、4月末までに入金しないと「返還強制の手続きをとることになるのでご承知おきください」との文言が入っています。裁判所に「支払督促申立」をする旨が別紙にて「最終通知」という形で添付されており、内容も形式もほとんど水道料金滞納時の給水停止予告書と同様のものでした。こういうものが届いて、これについて親とのあいだで諍いが生じています。
 親はすでに年金生活で夫婦15万たらずで生活しており、私と同じくこの金額では「返済」などできるはずもないのですが、「おまえが返せない(返さない)というのなら支援機構と交渉してこちらで少しずつでも返す」といってききません。親にかんしていうなら、「借金」を「返さない」ことは「人でなし」であり、世間的には「落伍者」であり「国」のやることに間違いはない、という通念が強く、また「法的措置」という脅迫めいた文言が彼らにはきいているようです。こうした親との無意味なやりとりだけで、私の方は過重な負担となり精神的にも追い詰められます。
 裁判所が絡むことを回避し、親の精神的不安を取り除くためにも、仕方なく私自身が支援機構に直接電話をかけ、担当者たちとかけあいました。二度三度とかけたのですが、対応したのは、債権管理課と返還猶予課という部署です。対応としては、債権管理課のほうはあまり聴く耳もたずな感じで、マニュアル的に応じている印象をもちました。
 やりとりの過程おいて、現在の時点の収入が過少であることを述べると、「月収10万でも返済している」などとの返答もあり、耳を疑うというか埒が明かない感じです。それに比べ、あとから電話をかけた猶予課のほうは、対応に若干幅がありました。ときどき対応する人にもよるのでしょうが、一応対話可能とでもいうのでしょうか。その条件なら猶予可能性もあり、(猶予になるかどうかわからないが)審査をしてみるので課税証明や源泉徴収票など所得関係の書類を提出してくれとのことで、書類を提出し、現在のところなんとか猶予となった次第です。返済し始めれば、ただでさえ現状苦しいのに、今よりもいっそう生活、研究、教育活動に支障をきたすことは自明です。
 そのうえ民間会社に取立てをさせるとなると、今後どのような措置が講じられるかわかったものではありません。「契約なんだから返すのが当たり前」だとか、親にまで返済をせまり、その点でも事実上ローンである「奨学金」という名ばかりのこのひどい制度には、不安とともに非常に強い憤りを覚えます。
 奥島元早稲田総長は「いまどきお金がなくて大学にいけない子なんかいない」と放言したそうですが、まずもってそんなことを口にすること自体信じがたいし、怒りを通り越してその精神性の貧弱さと救いがたさに呆れ返るばかりです。財務省が教育関係費を圧縮するため、「奨学金」の返済延滞が2300億あり、取り立て努力を怠っているなどと文部科学省・学生支援機構をはじめ関係各所の非難キャンペーンを張っているようですが、教育を無償で提供できないというのはどういうことなのか、財務省はいわずもがな文科省や支援機構には考えてもらいたいと思います。財務省の思惑でいえば、今後そもそも、教育の分野に教育ローンなどで民間金融機関が乗り込もうと手ぐすね引いているのは誰がどう見たって明らかで、それゆえ支援機構などは、いわば民業圧迫ということで邪魔になるからはやく潰してしまえ、というのがみえみえです。
 目を疑うような大学の高額の学費状況が野放しであり(私たちや学生たちが勉強し研究することを妨げているとしか思えず、血の滲む思いをして払ってきた学費をいますぐ返却せよと言いたいくらいですが)、教育を受けたことで借金を負うような制度は崩さねばならないと思います。
 非常勤講師の待遇と日本の「奨学金」制度、学費の状況は、文教政策の無思考、貧困ぶりと相俟って同根なのだと思います。高等教育体制のこうした理不尽さを解除するためにも、当方としても何らかの手立てを考えていきたいと思っております(たとえば、さらなるローン化の一環で、免除職規定がなくなったようですが、専任になれば「返して」しまえるので、「返せない」こちらにいっそう皺寄せがくるような気がします。専任にも訴え「返せるようになった、ああよかった」ではなく、学費は無償であるべきことを前提として、「返して」しまえることの意味を考えてもらわないといけないと思っています)。
 上記、参考になるかどうかわかりませんが、ここに一例としてご報告いたします。

『控室』第68 号(2008年9月14日発行)
首都圏大学非常勤講師組合ニュース
東京公務公共一般労働組合 大学非常勤講師分会
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