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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

安全と賃金が真っ先に切り捨てられる「死にたくなければ団結せよ」

2012年09月12日 | 格差社会
 =規制緩和と安全=陸運業界③
 ◆ 安全と命を削るトラック労働者
服部恭子(洛南地域合同労働組合書記長)

 3年ほど前から、トラック労働者の相談が続いている。ユニオンに相談に来る運転労働者のほとんどは、中小零細の運送業で働いていて労働条件は最悪だ。
 地場の運送業の賃金は、最低賃金ベースで下回るケースもある
 賃金が低いから長時間労働になる。長距離運転手も超長時間労働だ。過労死水準の労働時間を容認する「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準告示」でさえも守られている職場はない。
 指定時間に遅れないように早く出発し、取引先で長時間待機する。
 時間通りに到着しても何時間も待たされる。
 積み降ろしの順番取りのために、取引先の始業時間の何時間も前に受付を済ませる。
 渋滞を避けるために深夜・早朝に運転して待ち時間に小刻みな睡眠を取る。
 長距離の場合、日曜の午後か月曜の早朝に家を出たら、金曜の夜か土曜まで家に帰れない。
 高速代を浮かせるため、深夜に九州-関西間を下道で走り続ける。
 過労と睡眠不足で、朦朧としながらハンドルを握っている。

 規制緩和でトラック労働者の仕事や労働条件が大きく様変わりした
 1990年、物流二法改悪で運送業は許可事業に、認可運賃は「届出制」になり自由競争が始まった。
 事業者の約95%が車両50台未満、半数以上は10台未満の零細事業者だ。
 10台のトラックの売上で、運行管理者や整備員、事務員、営業などの間接部門の人数を配置するのはほとんど不可能だ。
 零細事業所では、安全と賃金が真っ先に切り捨てられる

 規制緩和による結果は極めて深刻だ。
 関越道のような大規模な事故が起きると、マスコミも騒ぎ規制緩和の問題があちこちで語られる。人の犠牲が目に見えて初めて問題にされるが、見えないところですでに膨大な犠牲者が生み出されている。
 事故の犠牲だけでなく、毎年働き過ぎで運転者が亡くなっている。
 2010年度に、過労死認定されたトップ業種は運送業(約2割、57件)である
 ネットで注文すれば翌日に商品が届く便利さ、物流コストを極限まで削って実現する安価な商品やサービス。
 消費者としては有り難いが、その陰で健康と安全を犠牲にし、命を削って働く労働者がいる。
 電力の便利さの陰に、被曝労働が続いているのと同じ理屈がここにもある。

 規制緩和の見直し、労働分野の規制強化を早急に実現しなければならない。
 どうすればできるのか。
 最低賃金の引き上げは地場の零細運送業では、実際の賃上げをする有力な手段になっている。
 政策決定に影響力をもたない小さなユニオンだが、「死にたくなければ団結せよ」という労働者の闘いの原点に立って、個々の労働者に寄りそいながら、あらゆる機会を通じて『団結せよ』の呼びかけを発していきたい。
 安全や健康や人の命が、便利さや金儲けよりも大切なのだという当たり前の社会をめざして。
『労働情報』(845・6号 2012/8/15&9/1)

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