ビラ配布の自由を守る会(リンク)
外形的微罪で「表現の自由」を弾圧した公安事件
◆立川反戦ビラ配布事件<住居侵入罪>
(自衛隊イラク派兵反対のビラを防衛庁官舎に配布)
一審:無罪(2004/12/16)、二審:罰金10万~20万円(2005/12/9)
◆板橋高校卒業式事件<威力業務妨害罪>
(開式前の保護者席に君が代強制を批判するチラシを配り不起立を訴えた)
一審:罰金20万円(2006/5/30)
◆社保庁ビラ配布事件<国家公務員法違反>
(『赤旗』を衆院選挙前の休日に自宅近くで配布)
一審:罰金10万円・執行猶予2年(2006/6/29)。
<ビラ配布>「住居侵入」否定し無罪 東京地裁
東京都葛飾区のマンションに共産党のビラを配布するために侵入したとして、住居侵入罪に問われた僧侶、荒川庸生(ようせい)被告(58)に対し、東京地裁は28日、無罪(求刑・罰金10万円)を言い渡した。大島隆明裁判長は「ビラ配布の目的だけであれば、共有部分への立ち入り行為を刑事上の処罰の対象とするとの社会通念は、いまだ確立していない」と指摘し、住居侵入罪の成立自体を否定した。
公判で弁護側は「ビラ配布は政治的表現の自由の一つとして憲法で保障されている。玄関はオートロックではなく、ドアポストにビラを配布しただけで住居侵入罪は成立しない」と、無罪か公訴棄却を主張。
検察側は「立ち入り拒否の張り紙が掲示されており『侵入』に当たることは明白。政治的意見の表明であっても、他人の権利を侵害することは許されない」と指摘していた。
判決はまず、マンションへの立ち入りが許されるかどうかについて「他人の住居の平穏を不当に害することは許されず、憲法だけを根拠に直ちに正当化することは困難。目的や態様に照らし、法秩序全体の見地から社会通念上容認されざる行為と言えるか否かによって判断するほかない」と指摘した。
そのうえで(1)政治的主張のビラ受領で、住民の平穏が侵害されるとの不安感を抱くことは少ない(2)配布の際の滞在時間は7、8分程度でプライバシー侵害の程度もわずか(3)ビラ投かんでの立件はほとんどない――などと判断。「立ち入り拒否の張り紙は商業ビラの投かん禁止とも読み取れ、マンション側が政治目的のビラ配布を禁じていたとしても、その意思表示が来訪者に伝わる表示となっていない」として、正当な理由のない違法な立ち入り行為に当たらないと結論付けた。
荒川被告は04年12月23日午後2時20分ごろ、葛飾区の7階建てマンションに入り、共産党の「都議会報告」などのビラを3~7階27戸のドアポストに入れた、として起訴された。注意した住民が現行犯逮捕し、23日間にわたり拘置された。
ビラ配りを巡っては、東京都立川市の防衛庁官舎に自衛隊イラク派遣に反対するビラを配って同罪に問われた男女3人を1審・東京地裁八王子支部が無罪(04年12月)としたが、東京高裁が昨年12月に罰金10万~20万円の逆転有罪判決を言い渡した(被告側が上告中)。【佐藤敬一】
▽岩村修二・東京地検次席検事の話 検察の主張が理解されず遺憾である。判決内容を検討し、上級庁とも協議の上、控訴の要否を判断したい。
▽弁護団の話 当然の結論。憲法が保障する言論の自由の重要性を明確にすることで「憲法の番人」としての司法の役割が見事果たされた。検察が控訴することは断じて許されない。
▽土本武司・白鴎大法科大学院教授(刑事法)の話 ビラ配りなどを禁止するとの張り紙がされており、ビラ配りを拒否する住民の意思は明白だ。政治的主張の表現行為であっても「住居の平穏」という他人の権利を侵害することは許されない。違法性が軽微とはいえ、ゼロでないのであれば有罪とすべきで、裁判所の判断に誤りがあると言わざるをえない。
▽白取祐司・北海道大大学院教授(刑事訴訟法)の話 判決は住民の不安感や不快感に配慮しつつ、刑事罰の対象にすべきだという社会通念は確立されていないと判断して、無罪とした。社会常識に沿った妥当な結論だ。一方で、憲法で保障された表現の自由を十分に考慮していない点には不満が残る。無罪になったとはいえ、起訴されたことで、被告自身は大きな社会的ダメージを受け、市民運動への萎縮(いしゅく)効果も生じさせた。特定の政治的活動を狙い撃ちにして起訴した検察の責任が問われるべきだろう。
(毎日新聞) - 8月28日13時8分更新
外形的微罪で「表現の自由」を弾圧した公安事件
◆立川反戦ビラ配布事件<住居侵入罪>
(自衛隊イラク派兵反対のビラを防衛庁官舎に配布)
一審:無罪(2004/12/16)、二審:罰金10万~20万円(2005/12/9)
◆板橋高校卒業式事件<威力業務妨害罪>
(開式前の保護者席に君が代強制を批判するチラシを配り不起立を訴えた)
一審:罰金20万円(2006/5/30)
◆社保庁ビラ配布事件<国家公務員法違反>
(『赤旗』を衆院選挙前の休日に自宅近くで配布)
一審:罰金10万円・執行猶予2年(2006/6/29)。
<ビラ配布>「住居侵入」否定し無罪 東京地裁
東京都葛飾区のマンションに共産党のビラを配布するために侵入したとして、住居侵入罪に問われた僧侶、荒川庸生(ようせい)被告(58)に対し、東京地裁は28日、無罪(求刑・罰金10万円)を言い渡した。大島隆明裁判長は「ビラ配布の目的だけであれば、共有部分への立ち入り行為を刑事上の処罰の対象とするとの社会通念は、いまだ確立していない」と指摘し、住居侵入罪の成立自体を否定した。
公判で弁護側は「ビラ配布は政治的表現の自由の一つとして憲法で保障されている。玄関はオートロックではなく、ドアポストにビラを配布しただけで住居侵入罪は成立しない」と、無罪か公訴棄却を主張。
検察側は「立ち入り拒否の張り紙が掲示されており『侵入』に当たることは明白。政治的意見の表明であっても、他人の権利を侵害することは許されない」と指摘していた。
判決はまず、マンションへの立ち入りが許されるかどうかについて「他人の住居の平穏を不当に害することは許されず、憲法だけを根拠に直ちに正当化することは困難。目的や態様に照らし、法秩序全体の見地から社会通念上容認されざる行為と言えるか否かによって判断するほかない」と指摘した。
そのうえで(1)政治的主張のビラ受領で、住民の平穏が侵害されるとの不安感を抱くことは少ない(2)配布の際の滞在時間は7、8分程度でプライバシー侵害の程度もわずか(3)ビラ投かんでの立件はほとんどない――などと判断。「立ち入り拒否の張り紙は商業ビラの投かん禁止とも読み取れ、マンション側が政治目的のビラ配布を禁じていたとしても、その意思表示が来訪者に伝わる表示となっていない」として、正当な理由のない違法な立ち入り行為に当たらないと結論付けた。
荒川被告は04年12月23日午後2時20分ごろ、葛飾区の7階建てマンションに入り、共産党の「都議会報告」などのビラを3~7階27戸のドアポストに入れた、として起訴された。注意した住民が現行犯逮捕し、23日間にわたり拘置された。
ビラ配りを巡っては、東京都立川市の防衛庁官舎に自衛隊イラク派遣に反対するビラを配って同罪に問われた男女3人を1審・東京地裁八王子支部が無罪(04年12月)としたが、東京高裁が昨年12月に罰金10万~20万円の逆転有罪判決を言い渡した(被告側が上告中)。【佐藤敬一】
▽岩村修二・東京地検次席検事の話 検察の主張が理解されず遺憾である。判決内容を検討し、上級庁とも協議の上、控訴の要否を判断したい。
▽弁護団の話 当然の結論。憲法が保障する言論の自由の重要性を明確にすることで「憲法の番人」としての司法の役割が見事果たされた。検察が控訴することは断じて許されない。
▽土本武司・白鴎大法科大学院教授(刑事法)の話 ビラ配りなどを禁止するとの張り紙がされており、ビラ配りを拒否する住民の意思は明白だ。政治的主張の表現行為であっても「住居の平穏」という他人の権利を侵害することは許されない。違法性が軽微とはいえ、ゼロでないのであれば有罪とすべきで、裁判所の判断に誤りがあると言わざるをえない。
▽白取祐司・北海道大大学院教授(刑事訴訟法)の話 判決は住民の不安感や不快感に配慮しつつ、刑事罰の対象にすべきだという社会通念は確立されていないと判断して、無罪とした。社会常識に沿った妥当な結論だ。一方で、憲法で保障された表現の自由を十分に考慮していない点には不満が残る。無罪になったとはいえ、起訴されたことで、被告自身は大きな社会的ダメージを受け、市民運動への萎縮(いしゅく)効果も生じさせた。特定の政治的活動を狙い撃ちにして起訴した検察の責任が問われるべきだろう。
(毎日新聞) - 8月28日13時8分更新
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