◆ 長時間労働対策~各党の公約は? - Yahoo!ニュース
佐々木亮 | 弁護士・ブラック企業被害対策弁護団代表
◆ 長時間労働規制が争点になっていいはず
さて、総選挙も後半戦となってまいりました。
本来であれば、長時間労働対策も選挙の重要な争点になっていて然るべきなのですが、残念ながらあまりスポットライトを浴びていません。
しかし、この間も、NHK職員の過労死の問題、新国立競技場建設現場での過労自殺の問題など、長時間労働を起因とした痛ましい事件は後を絶ちません。
こんな状況ですから、本来は、長時間労働規制をどうやって実現するかが争点となってもいいはずなのです。
しかし、今からでも遅くありません。
投票日まであと1週間ほどありますので、参考までに長時間労働に関する各党の公約をチェックしてみます!
◆ 自由民主党
まずは、自由民主党。
自民党の公約を見ると、
この他にも、「長時間労働を是正する」との記載がありますが、具体的な記述はありません。
もっとも、現在政府は、「働き方改革」の名の下に長時間労働を是正するとして次の政策を掲げています。
その1つが労働時間の上限設定です。
上限の内容はざっくり言うと、以下のとおりです。
・月45時間、年間360時間を法律で整備し違反は罰則あり
・特例としての1カ月の残業時間の上限は平均80時間まで
・特例としての単月の残業時間の上限は月100時間未満まで
これまで大臣告示だった基準を罰則付きで法律に高めたところはOKなのですが、その例外(特例)が、過労死ラインと呼ばれる1か月の残業時間は80時間と同じになってしまっています。
また、勤務間インターバル規制(終業時刻から次の労働日の始業時刻まで一定の時間をとらなければならないとする規制)は公約では触れていないようですが、政府の「働き方改革」の法案の中では、企業の努力義務として入る予定です。
法的には努力義務はあまり強い義務ではなく、あくまで努力すればいい、というものなので、弱いです。
◆ 公明党
次に与党である公明党です。
公明党の公約を見ると、
当たり前ですが、公明党は与党ですから、政府と同じ政策になっています。
勤務間インターバル制度も「普及を促進」となっており、政府の法案と同じ路線です。
希望の党
◆ 希望の党
次に希望の党です。
希望の党の公約は
これについては、新党であるため時間がなかったのかもしれませんが、抽象的過ぎて論評できません。
なお、こちらの記事もご参考にどうぞ。
https://news.yahoo.co.jp/byline/sasakiryo/20171007-00076635/
◆ 立憲民主党
さて、次は立憲民主党です。
立憲民主党の公約では、
う、薄い・・・。中身もない・・・。
希望の党以上に、立党から公約発表まで時間がなかったのだろうと推察できますが、それにしても薄い・・・。
◆ 日本共産党
次は日本共産党です。
共産党の公約は、逆に長すぎて全部引用できないので、小見出しと内容を要約すると、次のとおりです。
長い分、内容が充実していて、「さすが」というほかないです。
長時間労働規制が争点であれば、他党を圧倒しているといえるでしょう。
◆ 日本維新の会
次に、日本維新の会です。
日本維新の会の公約には、
高齢者用の勤務間インターバル規制のようですが、普通の労働者に対する長時間労働規制は書かれていません。
過労死や過労自死に対して、特に問題意識を持っていないものと思われます。
◆ 社会民主党
最後に、社会民主党です。
社民党の公約では、
長時間労働規制の具体的な数字は示していませんが、勤務間インターバル規制は11時間としています。
また、裁量労働制の要件の厳格化をかかげています。
分量は多くないですが、具体性はありますね。
◆ 日本のこころ
最後に日本のこころです。
公約では、
それだけでした。
◆ 勝手にランキング
長時間労働規制を良しとする私から評価すると、公約でダントツ1位は共産党ですね。
次にインターバル規制を明確にかかげる社民党が2位。
3位以下はなかなかランク付けが難しく、ビリは維新の会でしょう。
いや、本当のビリは幸福実現党でした。同党は「時間外労働規制の強化に反対します」なので・・・。
さて、選挙はいろいろな争点があります。
上記は長時間労働規制を一例として紹介しました。
みなさんの参考になれば幸いです。
『佐々木亮 - 個人 - Yahoo!ニュース』(2017/10/14)
https://news.yahoo.co.jp/byline/sasakiryo/20171014-00076921/
※佐々木亮 弁護士・ブラック企業被害対策弁護団代表
弁護士(東京弁護士会)。旬報法律事務所所属。日本労働弁護団常任幹事。ブラック企業被害対策弁護団代表。ブラック企業大賞実行委員。首都圏青年ユニオン顧問弁護団。民事事件を中心に仕事をしています。労働事件は労働者側のみ。労働組合の顧問もやってますので、気軽にご相談ください! ここでは、労働問題に絡んだニュースや、一番身近な法律問題である「労働」について、できるだけ分かりやすく解説していきます!
佐々木亮 | 弁護士・ブラック企業被害対策弁護団代表
◆ 長時間労働規制が争点になっていいはず
さて、総選挙も後半戦となってまいりました。
本来であれば、長時間労働対策も選挙の重要な争点になっていて然るべきなのですが、残念ながらあまりスポットライトを浴びていません。
しかし、この間も、NHK職員の過労死の問題、新国立競技場建設現場での過労自殺の問題など、長時間労働を起因とした痛ましい事件は後を絶ちません。
こんな状況ですから、本来は、長時間労働規制をどうやって実現するかが争点となってもいいはずなのです。
しかし、今からでも遅くありません。
投票日まであと1週間ほどありますので、参考までに長時間労働に関する各党の公約をチェックしてみます!
◆ 自由民主党
まずは、自由民主党。
自民党の公約を見ると、
働き方改革を推進することで長時間労働を是正するとあります。
この他にも、「長時間労働を是正する」との記載がありますが、具体的な記述はありません。
もっとも、現在政府は、「働き方改革」の名の下に長時間労働を是正するとして次の政策を掲げています。
その1つが労働時間の上限設定です。
上限の内容はざっくり言うと、以下のとおりです。
・月45時間、年間360時間を法律で整備し違反は罰則あり
・特例としての1カ月の残業時間の上限は平均80時間まで
・特例としての単月の残業時間の上限は月100時間未満まで
これまで大臣告示だった基準を罰則付きで法律に高めたところはOKなのですが、その例外(特例)が、過労死ラインと呼ばれる1か月の残業時間は80時間と同じになってしまっています。
また、勤務間インターバル規制(終業時刻から次の労働日の始業時刻まで一定の時間をとらなければならないとする規制)は公約では触れていないようですが、政府の「働き方改革」の法案の中では、企業の努力義務として入る予定です。
法的には努力義務はあまり強い義務ではなく、あくまで努力すればいい、というものなので、弱いです。
◆ 公明党
次に与党である公明党です。
公明党の公約を見ると、
過労死等の防止や長時間労働是正のため、時間外労働に罰則付きの上限規制を導入します。また、勤務終了時から翌日の始業時までに一定の休息時間を設ける「勤務間インターバル制度」の普及を促進します。とあります。
当たり前ですが、公明党は与党ですから、政府と同じ政策になっています。
勤務間インターバル制度も「普及を促進」となっており、政府の法案と同じ路線です。
希望の党
◆ 希望の党
次に希望の党です。
希望の党の公約は
長時間労働に対する法的規制とありますが、具体的にどんな規制をするかは書かれていません。
これについては、新党であるため時間がなかったのかもしれませんが、抽象的過ぎて論評できません。
なお、こちらの記事もご参考にどうぞ。
https://news.yahoo.co.jp/byline/sasakiryo/20171007-00076635/
◆ 立憲民主党
さて、次は立憲民主党です。
立憲民主党の公約では、
長時間労働の規制と、一言だけあります・・・。
う、薄い・・・。中身もない・・・。
希望の党以上に、立党から公約発表まで時間がなかったのだろうと推察できますが、それにしても薄い・・・。
◆ 日本共産党
次は日本共産党です。
共産党の公約は、逆に長すぎて全部引用できないので、小見出しと内容を要約すると、次のとおりです。
・残業時間の上限規制要約しても長い。
残業上限時間を週15時間、月45時間、年間360時間を労働基準法に明記し法制化
・連続11時間の休息時間の確保
終業から翌日の始業までのあいだに最低連続11時間の休息時間(勤務間インターバル規制)を確保するよう労働基準法を改正
・残業の割増賃金率を引き上げる
1日2時間をこえる残業と、週8時間をこえる残業に対して、割増賃金率を50%に、また、連続した残業を規制するために、残業が3日連続し4日目以降も残業させる場合の割増賃金率を50%にする。
・労働時間管理の強化
労働時間を正確に記録するために、労働時間管理台帳をつくることを使用者に義務づけ、管理台帳をつくらない、記録しない、保存しない場合は、罰則を科す。管理台帳は労働者が自由に閲覧できるようにし、職場から長時間労働をなくしていく運動に役立てるようにする。
・「名ばかり管理職」を規制
厳格に適用するとりくみを強める
・有給休暇取得の促進
年次有給休暇を最低20日(現行は10日)とし、一定日数の連続取得と完全消化を保障。傷病や家族の看護の心配によって年休取得を控えることのないように、有給の傷病・看護休暇を創設。
・「サービス残業」を根絶
「サービス残業」が発覚したら不払い残業代を2倍にして労働者に支払わせ、「ただ働き」を根絶
長い分、内容が充実していて、「さすが」というほかないです。
長時間労働規制が争点であれば、他党を圧倒しているといえるでしょう。
◆ 日本維新の会
次に、日本維新の会です。
日本維新の会の公約には、
高齢者が生きがいと誇りを持って働き続けることができるよう、インターバル規制をはじめとするシニア向け労働法制整備を進める。とあります。
高齢者用の勤務間インターバル規制のようですが、普通の労働者に対する長時間労働規制は書かれていません。
過労死や過労自死に対して、特に問題意識を持っていないものと思われます。
◆ 社会民主党
最後に、社会民主党です。
社民党の公約では、
長時間労働を規制します。労働基準法を改正し、実効性ある労働時間延長の上限規制、「24時間につき、最低でも連続した11時間の休息時間」を義務化する勤務間インターバル(連続休息時間)規制の導入、裁量労働制の要件の厳格化などに取り組みます。ブラック企業への規制を強化します。としています。
長時間労働規制の具体的な数字は示していませんが、勤務間インターバル規制は11時間としています。
また、裁量労働制の要件の厳格化をかかげています。
分量は多くないですが、具体性はありますね。
◆ 日本のこころ
最後に日本のこころです。
公約では、
労働時間の短縮と、一言触れています。
それだけでした。
◆ 勝手にランキング
長時間労働規制を良しとする私から評価すると、公約でダントツ1位は共産党ですね。
次にインターバル規制を明確にかかげる社民党が2位。
3位以下はなかなかランク付けが難しく、ビリは維新の会でしょう。
いや、本当のビリは幸福実現党でした。同党は「時間外労働規制の強化に反対します」なので・・・。
さて、選挙はいろいろな争点があります。
上記は長時間労働規制を一例として紹介しました。
みなさんの参考になれば幸いです。
『佐々木亮 - 個人 - Yahoo!ニュース』(2017/10/14)
https://news.yahoo.co.jp/byline/sasakiryo/20171014-00076921/
※佐々木亮 弁護士・ブラック企業被害対策弁護団代表
弁護士(東京弁護士会)。旬報法律事務所所属。日本労働弁護団常任幹事。ブラック企業被害対策弁護団代表。ブラック企業大賞実行委員。首都圏青年ユニオン顧問弁護団。民事事件を中心に仕事をしています。労働事件は労働者側のみ。労働組合の顧問もやってますので、気軽にご相談ください! ここでは、労働問題に絡んだニュースや、一番身近な法律問題である「労働」について、できるだけ分かりやすく解説していきます!
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