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数字から迫る「危ない」精神障害者の実像

2019年04月07日 | 平和憲法
  =東京新聞【編集局南端日誌】=
 ◆ 精神障害者への「監視」
   「危ない人」数字は否定


 読者の方からご意見をいただいた。一月末に当欄で書いた精神障害者に対する行政の「監視」についてである。
 記者にとり、反響ほどありがたいものはない。遅ればせながら、お返事したいと思った。
 記事では、統合失調症で措置入院した女性当事者の窮状を紹介した。
 退院後も毎月、保健師が自宅を訪れ、質問してくる。訪問は昨年三月の厚生労働省通知に基づく措置だが、彼女は監視されているようで苦しいと訴えていた。
 この記事について一人の読者からこう指摘された。
 「精神障害者を野放しにし、事件が起きてからでは遅い。何でも『差別』の言葉で片付けるのは疑問だ」。
 言いにくくとも、同様に感じられた方は少なくないのではと案じた。
 統計不正の世だが、ここでは数字から「危ない精神障害者」の実像に迫ってみたい。
 まず、精神障害者はどれだけいるのだろうか。
 昨年四月に発表された厚労省の推計では全国で約三百九十二万人。全人口の約3%を占める。
 一方、昨年版の犯罪白書によると、刑法犯の全検挙人数に占める精神障害者とその疑いのある者の割合は1・5%になっている。
 つまり精神障害者の割合は少ないくらいなのだが、実はこの数字すら盛られている。
 というのも「その疑いのある者」は警察官の判断で、厚労省の昨年度の衛生行政報告例では「疑いのある者」のうち、54%が「診察の必要すらなし」とされている。
 この事実を加味すると、全検挙入数の1%台スレスレが精神障害者だと推測できる。

 ただ、犯罪を殺人放火に絞ると、精神障害者とその疑いのある者の割合は高い。
 犯罪白書によれば、殺人は13・4%、放火は18・7%だ。

 だが、殺人については特徴がある。
 ある指定入院医療機関(匿名を条件にデータをいただいた)によると、過去十三年間で殺人を犯した患者のうち、被害者が家族というケースが82%だった。
 先の「疑いのある者」の割合を差し引けば、「通り魔」的な事件を起こす人の割合は健常者とほぼ変わらない。
 放火についても、ある専門医は「自殺目的で自宅に放火するケースが多い」と印象を語っている。
 少なくとも、こうした数字からは「野放し論」が空虚に映る。
 むしろ、監視による人権侵害の方が問題と思うが、いかがだろうか。
 差別間題はタブー視されがちだが、今後も事実に基づいた議論を深めたい。
 (特報部長・田原牧)

『東京新聞』(2019年3月28日【編集局南端日誌】)

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