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河原井さん根津さんらの「君が代」解雇をさせない会:証人尋問報告

2010年11月21日 | 日の丸・君が代関連ニュース
 『河原井さん根津さんらの「君が代」解雇をさせない会:会報』
 ▼ 06年事件控訴審第5回 証人尋問報告
根津 公子

 9月13日の控訴審では、先に提出した「教育公務員の懲戒処分に関する裁量権の逸脱・濫用の違法について」の鑑定意見書をもとに、岡田正則・早大大学院法務研究科教授が証言をしてくださいました。その後、根津、河原井の本人尋問も行いました。
 岡田さんは判例をもとに、懲戒権者(私たちの場合は都教委)の基本姿勢を述べられました。
 まず、①(裁量の余地のない)一般の公務員の事件と(行政裁量のある)教育公務員の事件の場合には審理すべき構造が異なる、したがって懲戒権者の裁量を審査するにあたっても、考慮すべき要素が異なる。…個々の教員が責任を持っている教育現場について、どのような影響があるのかと言うことも考慮すべき事項になる
 その上で、②「日の丸・君が代について…特に学習指導要領でこういう教え方をしなさいと命令はしていない…必ず儀式で起立しなきゃいけないと、…定められてはいないわけですから、…それが直接、懲戒処分の基準になるということはないわけです」と。
 以下、裁判所の速記録を元に抜粋して報告していきます。
 ③職務命令違反に当たるかについて。
 「本件の場合…、専ら儀式の成功のためではなくて職務命令違反者を摘発するためと、こういう意図が読み取れる
 …卒業式や入学式を子どもたちのために思い出になるように、あるいは学習の出発点で意義があるようにするための通達や職務命令ならわかるんですが、そうでなくて、その場を使って摘発しようということですと、これはやっぱり本来考慮すべきでないことを考慮して出されたものであって、形式的には仮にこれらが適法であったとしても、こういった通達とか職務命令に基づいて懲戒処分を下すということになると、これは、その懲戒処分自体は違法性を帯びるのではないか」「通達や職務命令を懲戒の基準として用いるという視点から、その必要性・合理性は審査され直さなければいけない」。
 ④信用失墜行為に当たるかについて。
 「国民、住民の間には様々な考えがあるわけですから、単に起立しなかったからと言って公務員全体に対する不信がそれで呼び起されるかというと、そういう効果もないであろうと。仮にあるとすれば、これは被告の立証事項になると思いますけれども、そういう証明もない、にもかかわらず、一方的に職の信用を傷つけたんだという認定をするのは、やはり必要な事実を確定しないままで懲戒処分を行ったということになるかと思います。それに起立しないということそのものが義務違反になるかというと、それは全くないわけです。」
 ⑤裁量権濫用に当たるかについて。
 「1つは、教育上の支障が生じなかったということは皆が認めているのに、それ以外の特に職務命令違反という形式的なことをとらえて重大な違反行為なんだと…言っている点は、本来どういう支障が生じたのかということを考慮した上で懲戒処分をやらなければいけないのに、…要考慮事項の不考慮だろうと。第2に、懲戒処分をするに当たって、本件では停職処分なわけですけれども、戒告、減給と停職、免職は質的に異なるわけです。つまり、停職処分にするということは、その教員を教育現場から排除してしまうということですから、保護者や子どもに対する影響が大きい、特に信用を失わせるという点でも大きいのに、そういう戒告、減給処分と停職処分の質的な違いを全く考慮しないままで、停職処分を行っているという点は、大変重大な要考慮事項の不考慮という問題もあると思いますし、地裁判決も…これもまた必要なことを考慮しないで下した判決と…言わざるを得ないと思います。」
 「違反者をあぶりだして摘発するということが専ら目的になっているので、やはり他事考慮、動機の不正と言わざるを得ないと思います」
 「教育活動上の支障が見られないのに、停職処分にするということは比例を失していると思いますし、それから、そのための裁量基準として『処分量定』があるのに、そこから外れるだけの合理的な理由が示されているかというとそれもないのに、この事件だけ、本来の減給処分までというのを外れて停職処分に行ってしまっている点で比例原則に反するのではないかと思われます」
 ⑥「以上述べてきたとおり、要考慮事項の不考慮という点でも、他事考慮あるいは比例原則違反という点でも、裁量権者の裁量にゆだねられた範囲を逸脱又は濫用しているので、この裁判所で本件懲戒処分は取り消されるべきだと思います」と証言されました。
 岡田さんは「教員を従わせる」、違反者をあぶりだすための職務命令は違法であると断じたうえで、考慮すべきことを考慮せず、考慮してはいけないことを考慮し、都教委自らが定めた「処分量定」(2006年改定 職務命令違反は戒告、減給とする)を外れて停職処分にした都教委の裁量権の逸脱、濫用と地裁判決の誤りを明快に指摘されました。
 裁判所から学者証人は一人に絞られてしまったのですが、教育法学者であられる世取山洋介・新潟大准教授「国歌斉唱儀式における不起立・不斉唱を理由とする教員懲戒処分における裁量権濫用の有無について」意見書を書いてくださり、裁判所に提出しました。
 世取山さんは、「日の丸・君が代」のように意見の分かれる問題を教育現場で教えるに当たっては、唯一絶対の回答を強制しようとするのではなく、様々な考えを提示するとともに、子どもたちが、自らの考えや判断を形成することができるように援助することが必要となる。都教委はそうする教員を援助すべきであるし、少なくとも、教員がそのような教育をするに当たり、これを懲戒処分、その他をもって阻害することは言語道断とし、河原井・根津の不起立の教育的意味を論じられました。
 そして、停職処分が教育現場にどのような悪影響を与えるかを指摘され、その上で、本件停職処分は、処分事由となっている職務命令違反の重さを判断するに当たって、処分内容の選択において、考慮すべき事項を考慮しておらず、社会通念に照らして著しく妥当性を欠いていると書かれています。
 岡田さん、世取山さんに感謝申し上げます。

 この控訴審は、この後、最終準備書面を提出し、12月13日に結審、そして今年度中に判決が出されます。不当判決が続く現実の中で、まともな憲法判断はおよそ期待できませんが、停職処分はやりすぎ(処分権濫用)という判決は出してほしいと強く思います。少しずつでも流れを変えたいと思います。
 この判決の直後に、根津には最後の卒業式が待っています。
 『河原井さん・根津さんらの 「君が代」解雇をさせない会ニュース』(NO33 発行:2010年11月13日)
 連絡先:〒186-0001 東京都国立市北1-1-6 コーポ翠1階
 多摩島嶼教職員組合(略称:多摩教組)Tel 042-571-2921 Fax 574-3093
 郵便振込口座:00110-4-279595 河原井さん根津さんらの「君が代」解雇をさせない会

http://www.din.or.jp/~okidentt/nezusan.htm
http://homepage2.nifty.com/kaikosasenaikai/

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