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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

アベノミクスを検証する(ニューヨークタイムズ)

2014年11月27日 | 格差社会
 ◆ 不況転落、日本経済予想外の悪化 (星の金貨プロジェクト)
   ジョナサン・ソブル / ニューヨークタイムズ 11月17日


 <生活必需品の価格は上昇、賃金は実質的に目減り、結果的に国民生活はより貧しいものになってしまった>
 <株価上昇や企業資産増加によって生み出された富が、一般国民の手に渡ることはなかった>
 <安倍首相は状況が自分に有利なうちにもう一度選挙を行い、さらに4年間思い通りの政策実行が出来る環境を作ろうとしている>
 2014年第3四半期のGDPの数値が予想を起きく下回るマイナスの結果となり、日本経済が相変わらず苦しい停滞状態にあることが明らかとなったことで、20年近く続いている経済不況から日本を甦らせるとの公約を繰り返してきた安倍首相の政策に、疑問を突きつける結果となりました。
 国内総生産が2期連続でマイナスとなったことで、日本の政治状況も一変する可能性が出てきました。
 安倍首相に近い立場の人々は、首相が衆議院の解散総選挙を行うつもりであると語っています。
 今回発表された国内総生産の速報値はその決定に大きく影響するものと見られ、その結果については今週中に明らかになるものと見られています。
 「残念なことに、数値は良くありませんでした。」
 安倍首相は連立を組む与党公明党が主催するイベントでの講演で、こう語りました。
 「しかし長いデフレーションから日本を抜け出させる機会をついに手にした現在、見す見す逃すわけにはいかないのです。」
 4月に実施された消費税引き上げは、明らかに消費支出を阻害する原因を作りました。
 その結果日本経済は下降局面に転換、自律的景気後退局面に入り込みました。
 これを受け、安倍首相が来年に予定されている2度目の消費税引き上げを見送り、国民に信を問うための衆議院の解散総選挙を行う可能性が極めて高いものとなりました。
 内閣府が発表した国内総生産の速報値は、7-9月の国内総生産の速報値が年率でマイナス1.6%に落ち込んだことを伝えました。
 前期の4-6月の第2四半期についても、政府は前回発表のマイナス7.1%をさらに下回るマイナス7.3%に訂正しました。
 安倍首相は2年前労働者の平均賃金と消費者物価が低下を続ける日本の経済の停滞状況に終止符を打つという公約を掲げて政権の座に就きましたが、今回の予想外の数値はその安倍政権が直面する問題の難しさを強調することになりました。
 アベノミクスと称する同政権の経済運営は、日本銀行による国債の購入を始め景気刺激策が中心を成していました。
 しかし経済学者は前政権によって承認された消費税の引き上げを安倍政権が実施したことにより、景気刺激策の効果は非常に鈍いものになったと指摘しました。
 消費税の引き上げは、国内総生産の2年6か月分という、先進国の中で最大の、そしてきわめて莫大な金額に昇る日本政府の負債がこれ以上膨らまないようにすることが目的でした。
 しかし労働者賃金が伸び悩み、消費マインドが低迷する中、日本経済はこれ以上の税負担の増加には耐えられないとする懸念があります。
 消費税率の引き上げは国の負債の問題に解決の糸口をつける代わり、日本経済全体をさらなる停滞へと向かわせるだけになる可能性があります。
 「消費税を引き上げれば日本政府の歳入が増える可能性がありますが、その結果再びデフレーションに落ちこむようなことになれば何の意味もありません。」
 安倍首相は16日、オーストラリアのブリスベーンで開催されたG20首脳会議の席上、こう述べました。
 安倍内閣の甘利経済産業大臣は月曜日の経済報告の後、消費税の引き上げが「日本経済からはデフレマインドが払しょくされてはおらず、予想した以上の影響が及ぶことになった。」と語りました。
 道半ばとも言える日本の消費税引き上げですが、日本では最大の政治問題となると同時、アメリカ政府の懸念の的ともなりました
 米国財務省のジェイコブJ.ルー長官は、日本とEUの政策立案者に対し、より一層の景気刺激策を実施するよう求めました。
 「ヨーロッパ経済と日本経済の本格的な悪化、中国経済の減速、どれをとっても米国経済にとっては望まぬ逆風になる可能性があります。」
 ジェイコブ・ルー財務長官がこう語りました。

 日本の消費税引き上げは2回に分けて行われることになっていましたが、今年4月に第1回目が実施された段階ですでにその影響は容易ならないものとなっていました。
 4‐6月の第2四半期の実績は急激に減速し、国際通貨基金などの国際機関と日本銀行などの国内機関はともに、今年度と翌年度の日本の成長率の予測を下方修正しました。
 年率2%の持続的インフレの目標達成が困難なことが誰の目にも明らかになり、日本銀行は10月末、債券購入プログラムの一層の拡大に踏み切りました。
 それでもなお、17日月曜日に明らかになった数値は、もっと楽観的な見通しを立てていたアナリストを狼狽させるのに充分なものでした。
 報道機関も研究機関も、その経済専門家が予測した数字は平均すると年率2%をわずかに上回るものでした。
 これに対し公表された報告書は、日本経済の重要な多くの分野で弱い動きを明らかにしました。
 消費者支出は4月の一回目の消費税引き上げ後の落ち込みからかろうじて上向きましたが、住宅建設と設備投資の指標は後退しました。
 企業の製品の在庫削減も予想された以上の規模になりました。
 経済が成長局面にあれば各企業は増大する需要に応えるためより多くの生産を行う必要がありますが、実際には在庫調整により成長は鈍化し、徐々に停滞へと向かう原因のひとつを作りました。
 日経主要銘柄の平均株価は約3%下落し、円の対ドル相場も下落しました。
 ヨーロッパ市場では17日午後、株価はわずかに値を上げました。

 2度目の消費税引き上げは来年10月とまだ間がありますが、やめるにせよ延期するにせよ法改正が必要であり、議会における審議時間を考えると安倍首相はすぐにでも決断する必要があります。
 消費税引き上げが計画通り実施されれば、今年4月に8%に引き上げられた18か月後、すべての商品とサービスに対し10%の消費税が課されることになります。
 安倍首相は2度目の消費税引き上げのためには何%の経済成長が必要か、その数値を口にしたことはあません。
 しかし経済顧問のひとりである本田悦郎氏は、4%近い成長が必要であると語ったことがあります。
 だとすれば民間の予測より高く、実際の数値よりもはるかに高いものでなければなりません。
 アベノミクスは現在、とりわけ微妙な段階にさしかかっています。

 消費者物価は望んだほどではないものの、そして株価の上昇や企業資産の増加程の勢いはないものの、上がることは上がっています。
 しかし株価の上昇や企業資産の増加によって生み出された富が、平均的労働者の手に渡ることはありませんでした
 生活必需品の価格の上昇に対し、賃金は実質的に目減りしており、結果的に人々の生活はより貧しいものになってしまいました。
 自由民主党のベテラン議員で安倍首相のもう一人の顧問である山本厚三氏は、物価の上昇に「賃金が追いつくまで」増税が延期される必要があると語っています。
 安倍首相とその側近グループは、さらに大胆な、そして既得権者に左右されない経済政策実施の必要性を感じ始めているように見受けられます。
 日本銀行が多額の資金を市場に流し込むことには、経済を活性化させる一方で消費税引き上げだけは実現させる基盤づくりの狙いもありました
 しかし今や安倍首相は変則的な対応ではあっても、とにかく景気刺激を最優先する政策を実施しなければならない状況に追い込まれているように見えます。
 しかし安倍首相に批判的な人々は経済分野における各種の規制緩和などは、日本経済の持続的発展により多くの貢献をすると考え、もっと他の分野で大胆な政策を実施するよう求めています。
 「予想されたものよりより、はるかに悪い結果になってしまいました。」
 野党民主党の枝野幹事長がこう語りました。
 「消費税引き上げ直前の駆け込み需要と実施後の大幅な消費の落ち込みは、アベノミクスの限界を示すものです。」
 安倍首相が率いる自民党は衆参両院において過半数を制しているため、法改正手続きにも問題が起きることは無く、消費税引き上げの延期を決めるために議会の解散総選挙を命じる必要はありません
 仮に安倍首相が日本経済の低迷により消費税引き上げを先送るすることが妥当だと判断した場合、若干の法改正が必要になりますが、与党自民党と連立与党公明党で衆参両院の過半数以上を制しているため手続きに問題が発生することはありません。
 この点について専門家は、安倍首相が消費税率引き上げの延期について国民全体からの幅広い支持を取り付けたいと考えている可能性があると語りました。
 「安倍内閣は消費税率引き上げの延期に対する一般国民の支持を確認するために、計算づくで衆議院の解散総選挙を実施しようとしています。」
 クレディ・スイスのアナリストは顧客に対する書信にこうしたためました。

 読売新聞は安倍首相が解散総選挙を宣言するのは18日夜になると伝えました。
 現在の衆議院議員の任期は2016年半ばまであり、今解散総選挙を行うとすれば1年半以上任期が短縮されることになります。
 一部の政治解説者は、安倍首相は状況が自分に有利なうちにもう一度選挙を行い、さらに4年間思い通りの政策実行が出来る環境を作ろうとしているのだと指摘しました。
 これに対し日本の野党は弱くて無秩序な状態にあります。
 最近の世論調査評価の結果は、安倍政権に対する高い支持率に若干の陰りが見え始めたことを伝えましたが、未だに50パーセント前後を維持しています。
http://www.nytimes.com/2014/11/17/business/international/defying-expectations-japans-economy-shrinks-further.html?_r=0
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 今回の記事はものすごく長くなってしまいましたが、2回に分けると主旨が曖昧になるためまとめて掲載します。
 かつてドイツのデア・シュピーゲル誌が、
 『安倍首相は成長、成長というけれども、人口減少が続いている上に急速な高齢化が進む日本において、どうやって経済を成長させることができるのか?もっと科学的に分析し、まずは成長の担い手を作っていくべきではないか。』
 と指摘しました。

 日本経済の停滞の根本原因は構造的なものであるのに、従来の景気刺激策で問題の解決はできないはずだと2年前に指摘していました。
 そしてアベノミクスの先に待っているのは、格差の拡大だとも警告していました。( http://kobajun.chips.jp/?p=12105
 また英国のエコノミスト誌は安倍首相は国民に約束した経済の復活の方はなおざりで、国家主義的政策の方にばかり熱心であり、このままではアベノミクスはつまづかざるを得ないと繰り返し警告していました。
 私たち日本人にとって不幸なことに、その通りになってしまったのではないでしょうか?
『星の金貨プロジェクト』(2014年11月20日)
http://kobajun.chips.jp/?p=20856
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