《『いまこそ』から》
◆ 東京「君が代」裁判・五次訴訟は7月に山場を迎えます!
五次訴訟原告 鈴木 毅
【7月4・18日に学者、原告証人尋問実施が決定】
五次訴訟は次回、次々回弁論がヤマ場の証人尋問となります。両日とも午前・午後に弁論が行われ、学者1名と原告9名への尋問が行われます。本訴訟で初めての大法廷(103号法廷・傍聴席数98)での弁論となります。
尋問時程の詳細はまだ確定していませんが、尋問スケジュールは概ね以下のようになる見込みです。全体としては長時間の法廷となりますので、傍聴抽選なし(出入り自由…空席があれば入れる)で弁論を行います。以下に、尋問予定者を紹介しますので、ご都合を合わせて傍聴にお越しいただけると大変ありがたいです。
○7月4日(木)第14回口頭弁論
午前…岡田正則早稲田大学大学院教授(行政法)/原告・井上佳子さん
午後…原告・鈴木毅/原告・田中聡史さん
○7月18日(木)第15回口頭弁論
午前…原告・今田和歌子さん/原告・大能清子さん/原告・山口美紀さん
午後…原告・川村佐和さん/原告・秋田清さん/原告・山藤たまきさん
※弁論時刻は10~12時および13~15時の時間帯を基本に設定する予定ですが、各証人の尋問時間帯も含めた詳細は5月中に決まります。改めて被処分者の会HPなどでご確認ください。
【第13回口頭弁論の報告】
直近の口頭弁論は3月4日に東京地裁で行われ、意見書、陳述書の追加提出を完了して、今後の証拠調べについての意見交換を行いました。
原告側は学者3人、再処分発令時の人事部職員課長、原告9人の尋問実施を求め、被告側は学者および職員課長の尋問は不要、原告については「しかるべく」との意見を述べましたが、裁判長は、進行協議を行って決定していく方針を示し、4月17日に裁判所内で進行協議を行うことが決まりました(進行協議の内容は後述)
【提出された学者意見書の概要】
五次訴訟においては、重要な争点である、①違憲性、②国際法に対する違背、③裁量権逸脱濫用の三点については、弁護団の主張に加え、3人の専門家にそれぞれについて意見書の作成を依頼して提出しました。前述のように、証人尋問にはこの3人のうち岡田先生のみが採用されましたが、意見書自体は証拠として提出、受理されています。以下にそれぞれの概略を紹介します。
①島薗進上智大学特任教授(宗教学者)意見書
「集団規律による学校儀式の強制が思想・良心・信教の自由を侵害する」
・・儀式的行事において「日の丸・君が代」が集団的な規律の強化を伴って強制されるときは憲法19条に反し、20条2項とも密接に関わり合うため、ある種の行為を強制されないことが求められる。このことを理解するためには、戦前の国家神道や天皇崇拝、神権的国体論の強制について想起する必要がある。「日の丸・君が代」に対する考えはさまざまだが、それが集団規律とともに強制的な形で用いられる場合は、良心の痛みを感じる人が増える。「10・23通達」と職務命令によって行われるようになった儀式的行事は、強制と受け止められるものとなり、憲法19条に反する。
これに対し最高裁は、「日の丸・君が代」の画一的な運用は「儀礼的な所作」であるから思想及び良心の自由を直接には侵害しないと判じてきた。だがこれは、憲法19条、20条が国家神道や宗教的天皇崇敬をめぐる近代日本の重い歴史的経験を踏まえて成立してきた経過を踏まえておらず、見直すべきである。
②戸田五郎京都産業大学教授(国際法学者)意見書
「本件職務命令と懲戒処分の自由権規約18条違反」
…国連の「市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)等の人権規約によって設置されている条約機関による解釈は、当該条約の有権解釈(公権解釈)であり、日本の裁判所における当該条約の解釈適用においても尊重する責務がある。
本件に関するCEART勧告は、教員に対し人権規約上認められる市民的不服従または良心的拒否の権利が保障されるべきことを指摘しており、原告の起立・斉唱拒否等は、それが原告らの信念との「深刻且つ克服不可能な抵触に動機づけられている」限りにおいて、自由権規約18条の保障する良心的拒否権の行使として正当化される。
また「10・23通達」とそれに基づく職務命令と懲戒処分による強制は、少なくとも「特定の所作に従うことに抵抗を感じる教員に対応できる解決策」が用意されていない限りにおいて許容されない。
③岡田正則早稲田大学大学院法務研究科教授(行政法学者)
「鑑定意見書」
…行政法の観点から本件懲戒処分の違法性について検討すると、第一に、懲戒処分の適否について審査する時に必要な留意、考慮がなされておらず、比例原則に違反し、手続き的な相当性も欠き、国連機関の勧告も考慮しない職務命令や懲戒処分は裁量権逸脱濫用により違法。
第二に、各処分には理由の提示、弁明の機会の付与にっいて手続き上の違法があり、地公法32条、33条を適用できる事実が存在せず、減給処分に関しては「相当性を基礎づける具体的な事情」が存在しない。よって地公法および教育関連系法令に照らして手続き上も実体上も違法。
第三に、再処分については、理由の提示等に関して手続き上の違法があり、かつ前訴取消判決の趣旨に反し、要考慮事項の不考慮、動機の不正、比例原則違反などの点で違法、すなわち手続法上も実体法上も違法であり、取消しを免れない。
【進行協議のようす】
4月17日に東京地裁の一室で行われた進行協議は、裁判官3名と、原告4名、原告代理人6名にリモート参加の被告代理人3名で行われました。
冒頭に澤藤弁護士が、「被告から出た意見書(岡田尋問不要との主張)は意見書を誤読したもので、裁判所がこの意見に同調することを懸念する。この問題も含めて尋問で改めて明らかにしたいことがあるので、十分な尋問の機会がほしい」と述べたが、裁判長はこの求めに応じることも含めた以下のような考えを示しました。
・証拠調べの日程は7月4日(木)終日、7月18日(木)終日の2日を設定。必要な場合は、追加の設定もあり得る。
・証人の採用は、学者1名(岡田先生)、原告9名とし、上記2期日で時間を割り振る。
・反対尋問も含めた尋問時間は、岡田証人60分、原告各45分(総計480分)として、これを2期日(午前・午後)の日程に落とし込む。
・使用法廷は103号法廷(大法廷)を確保した。
この提案に対し、原告側は再処分発令の判断を行った責任部署の担当課長らの尋問を採用するよう求めましたが、裁判所は同意しなかったため、行政法学者や原告への尋問を行っていく中で必要性が生じてきた場合には再検討してほしい。また、尋問で確認したかった内容にっいて求釈明を行うので、被告側の釈明内容も見てほしいと述べました。
これに対し被告側は、反対尋問は行う意思を示したほか、代理人の都合で、両日午後3時頃までに尋問を終えてほしいとの要望を示しました。
以上のようなやりとりがあったのち、時程は午前10~12時、午後13~15時の時間帯(前後する場合もあり)を基本として、尋問スケジュール案を原告側が作成し提案することが決まり、原告側が4月中に案を提出し、これに基づいて裁判所が決定する流れを確認して終了しました。
【傍聴支援をよろしく!】
原告団・弁護団では、以上の経過を踏まえて、冒頭のような尋問スケジュール案を整え、裁判所に提出したというところですが、一次・二次訴訟の頃に比べると原告団もかなり小規模化しており、大法廷を二日とも満席にできるかどうか、とっても不安です。
私たちも各方面に傍聴支援を呼び掛けていきますが、予防訴訟をひきつぐ会の会員のみなさんにも、ぜひ裁判所に足を運んでいただくよう重ねてお願いいたします
「予防訴訟をひきつぐ会」通信『いまこそ』(2024年5月11日)
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