◎ 意 見 陳 述
菅 平 和
私は、原判決が、事実を根拠とせず、推測により、原告の認識や行動を審理していることや事実誤認に基づく判断により、再任用の審査が行われていることについて陳述します。
1.原判決は、原告菅に職務命令が出された事実を明らかにしていない。
ア)原判決では、大澤校長(以下校長と記す)が2012年2月14日の職員会議で発した「これは私からの職務命令です。」という発言をもって「本件菅職務命令」(原判決P12)と判断している。
しかし、この職員会議に提出された「平成23年度第5回大阪府立堺工科高等学校卒業証書授与式役割分担表」には、「※当日が休日及び休暇申請の出ている教職員は未記載」との補足説明があり、役割分担表に記載されている教職員に校長からの職務命令が発せられたものである。
この「分担表」には、卒業式当日が週休日(勤務を要しない日)であった菅の名前は記載されておらず、この時点で菅に職務命令が発せられていないことは明白な事実である。
にもかかわらず、原判決は、職員会議での校長の職務命令を「本件菅職務命令」として菅に職務命令が発せられたかの想定をしているが、事実誤認である。
イ)原判決は、卒業式の前に菅が校長から「卒業式に参列するのであれば、保護者席で参列するか、勤務日に振り替えた上で教職員席で参列すること、教職員席にいて国歌斉唱時に着席すれば、懲戒や指導の対象になる」(原判決P77)という指導を受けていたことを根拠に、菅は「校長の指揮監督下に入ることを十分に認識していたと認められる。」(原判決P77)として、「本件菅職務命令は有効な職務命令であると認められる」(原判決P77)と結論している。
しかし、菅への事前指導の中で、校長は、教職員席での行為は「職務行為になる」とか、「職員会議での職務命令を発する」といった指導をしていません。
つまり、菅は「校長からの職務命令を受けた」という認識ができた筈だとする根拠は、ありません。
にもかかわらず、原判決は、強引にも「十分に認識していた」との独断をしているが、客観的な根拠を示していません。
ウ)以上により、菅に職務命令が発せられたという事実がなかったことは明らかであり、職務命令違反を根拠とする戒告処分には根拠がありません。事実確認の上、公正な審理を求めます。
2.原判決は、菅が一度変更したものの逡巡したのち元の原文通りの文面で提出した意向確認書(甲B6)は、本心を「秘した」菅の虚偽であるとしているが、憶測による独断である。
ア)証人尋問で被告側大崎証人は、意向確認書の内容を信じる根拠として「それはもう、署名押印されて出されているので、それを信用しないとなると、全てのものが無になるので。」(大崎調書P30)として、意向確認書に署名押印していることをもって「信用」すると発言している。
イ)原判決は、菅が、署名押印して提出した意向確認書について、「原告菅の主張あるいは原告本人尋問における供述の具体的内容に照らせば、原告菅は、今後の入学式や卒業式において、適式な職務命令を受けた教職員として卒業式に参列し、国歌斉唱時に起立斉唱する意思を有していなかったと認められる。」(原審P91)と断定している。
しかし、菅は主張や供述の中で、今後も「不起立する」などと発言していない。
にもかかわらず、原判決は、「起立斉唱する意思を有していない」という結論を客観的な根拠や合理的な説明なしに導き出している。
さらに、「原告菅は、今後の入学式や卒業式における国歌斉唱時に起立斉唱する意思がなかった」(P92)と、信じられないような憶測をしている。
さらに「平成23年度卒業式と同様に、有給休暇を取得した上で教職員席に参列し、国歌斉唱時に不起立をすることを意図していた」(P92)と4月の菅の不起立を予測し、意向確認書は、原告の本心を「秘して」記載したものと断定している。
このように原判決は、憶測や予断による審査している。
ウ)菅が提出した意向確認書について、憶測や予断によるのではなく、公正な審査・審理を求めます。
また、原判決は、菅は、「意図していたにもかかわらず、そのことを秘して」と述べている。これは、菅は嘘つきだと言うに等しく、菅の心を著しく傷つけるものである。
3.再任用教職員採用審査会(以下、審査会と記す)は、事実誤認を前提に「再任用の更新をしない」と結論している。これは、裁量権の逸脱という以前に、審査会の信用を失墜させる審査である。
ア)菅は、教員生活27年間おいて職務命令を発せられたことがない。ゆえに、職務命令違反という処分を受けたことはなかった。
にもかかわらず、再任用の審査結果には「職務命令違反を繰り返していることから、再任用教職員の採用選考等に関する要綱第12条3項及び4項により、再任用の更新をしないこととする。」(証拠甲B9)と記されている。
このことは証人尋問において被告側大崎証人に質すと、証人は「事実としては、だから、校長先生の再三の指導に従わなかったということになりますね。」と答え、さらに「ここは職務命令違反が繰り返されているという認定をしているわけですね。」という質問に「まあ、そうなりますね。」(大崎調書P23)と答えている。
証人自身が事実に基づかない審査であったことを証言している。
イ)審査会における菅の再任用更新についての審査が、誤認した事実に基づいて行われたことは、審査会の判断過程に重大な過ちがあったということである。
しかし、原判決は、被告側も認める事実誤認を前提とした審査会の審査結果に対して、全く審理していない。
ウ)事実誤認に基づく審査は、審査会の信用にかかわる問題であり、あってはならないことである。よって、審査会の判断過程に対する厳正なる審理を求めます。
また、菅の提出した意向確認書が、審査会での審査結果に記載されておらず、「今後の職務命令遵守の意向を確認。」できたとして、再任用に合格した他の7人との間で不平等な取り扱いをされており、公正な審理を求めます。
最後に、公正な審理をお願いしまして、陳述を終わります。
『グループZAZA』(2017-10-25)
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