《澤藤統一郎の憲法日記から》
◆ 被疑者下村博文に対する検察審査申立記者会見にて
昨年(2017年)7月31日、阪口徳雄君、児玉勇二君ら同期の弁護士とともに東京地検特捜部に赴き、下村博文らに対する政治資金規正法違反の告発状を提出した。
その告発の内容については、同日の下記当ブログにおいて報告済みである。
<安倍政権と加計学園の癒着に切り込むー下村博文政治資金規正法違反告発>
被告発人は、政治団体「博友会」の主宰者下村博文と、同会の代表者として政治資金収支報告の届出名義人となっている井上智治、そして同会の会計責任者兼事務担当者兼松正紀の3名。
被告発事実は、下村が文科大臣だった当時における、政治資金パーティのパーティ券購入代金の収支報告書への「不記載」と「虚偽記入」。パーティ券購入先つまりは金主は、話題の加計学園である。加計から、下村に金が渡っていたことが隠蔽されたのだ。
よく知られているとおり、安倍晋三と加計孝太郎は腹心の友という間柄。
これもよく知られているとおり、安倍晋三と下村博文も右翼と右翼、思想相似たる緊密な間柄。
それに加えて、実は加計孝太郎と下村博文も心許す緊密な間柄と明らかになったのがこの事件の本質。仲良し「悪だくみ・3人組み」である。
下村が文科大臣だった2013年10月と14年10月、いずれも東京のプリンスホテルで行われた下村の各政治資金パーティに、加計学園の担当者がわざわざ出向いて、パー券購入名目で100万円を渡している。合計200万円。
原帳簿には記載のあったこの金が、政治資金報告書の記載からは省かれていることが発覚した。
おかしいじゃないか。徹底して捜査をしてくれ。強制捜査をかければ、モヤモヤしているところがすべて白日の下に曝されるはず、という告発だった。
告発時の記者会見で、私は、
「この告発は、政権中枢の腐敗を撃つものだ」
「本件告発は捜査の端緒に過ぎず、政治資金規正法違反はその入り口である。出口は実質犯、贈収賄成立の可能性となりうる。そこまでを見据えた厳格な捜査を期待したい」と発言している。
しかし、東京地検特捜部はこれを不起訴にした。本年8月15日のこと。
なんと形容することが適切なのか、言葉を探しあぐねている。政権に対する忖度・おもねり・遠慮・へつらい・腰砕け・媚び・ゴマすり…。
本日、これを東京検察審査会に審査申立をし、記者会見を行った。阪口徳雄、上脇博之、私、梓澤和幸の4人。
被疑者の犯罪事実が明らかでも、起訴を猶予する処分が妥当なことはもちろんあり得る。被疑者が真摯に反省して改悛の情を示し、しかも、しかるべき社会的制裁を受けている場合。下村は、どうだ。
「丁寧に説明する」と言っておいて何の説明もしない。到底、反省している態度とはいえない。
今次の内閣改造に伴う自民党人事では、安倍改憲シフトの最高責任者として、憲法改正推進本部長の要職に就いている。社会的制裁も、政治家としての制裁も受けたとは言えない。刑罰が科されてしかるべきではないか。
本日の記者会見で強調されたことは、検察審査員への要望。普通の市民の感覚(常識)での判断をお願いしたいということ。
審査員には、有罪の判断が求められているのでない。国民の普通の感覚(常識)で、何の制裁もなく見逃してはおかしいと思えば、「起訴相当」として公開の法廷に結論を任せればよいと言うこと、なのだ。
政治が金で動かされてはならない。これが国民の常識。
政治の世界で動くカネの流れは、徹底して透明性が保証されなければならない。これも、国民の常識。
加計学園からの金の流れであればさらに下村の政治資金の流れは徹底して洗わなければならない。
この審査申立を担当する検察審査員の一人ひとりにおおきな期待を寄せて、結果を待ちたい。
政治資金規正法違反審査申立事件
1 被申立人 下村 博文
2 被申立人 兼松 正紀
被申立人下村博文および同兼松正紀の下記「被疑事実の要旨」記載の各行為についての政治資金規正法違反告発事件について「起訴相当」の議決を求める。(なお嫌疑なしの被告発人井上智冶については審査を求めない)
第1 審査申立人及び申立代理人
審査申立人及び申立代理人:別紙記載のとおり
第2 罪名
政治資金規正法違反
第3 被申立人
下村博文および兼松正紀
第4 処分年月日
2018(平成30)8月15日(平成29年検第28494~28496号)
第5 不起訴処分をした検察官
東京地方検察庁 梅田 健史 検事
第6 被疑事実の要旨
別紙告発状記載の通り
第7 検察官の処分(告発事実と検察官の処分の整理)
1 加計学園からの収入についての不記載
(1)2013年10月3日東京プリンスホテルにおける博友会主催の「セミナー」に学校法人加計学園から100万円のパーテイ券の対価を受けながら収支報告書に不記載の罪(被告発人は下村博文、井上智冶、兼松正紀)
(2)2014年10月14日東京プリンスホテルにおける博友会主催の「セミナー」に学校法人加計学園から100万円のパーテイ券の対価を受けながら収支報告書に不記載の罪(被告発人は下村博文、井上智冶、兼松正紀)
(3) 以上(1)(2)の罪を次の予備的告発事件で検察官は審査したので全員「罪とならず」と判断した。
2 上記1(1)(2)のあっせんの事実の不記載罪予備的告発事実
2013年分および2014年分の「政治資金パーティーの対価の支払のあっせん」の各政治資金収支報告書の不記載罪について、下村博文、井上智治は嫌疑なし。兼松正紀は嫌疑不十分。
3 2019万円の収入を980万2円との虚偽記載罪
(1)2013年10月3日東京プリンスホテルにおける博友会主催の「セミナー」に合計額がありながらわずか金980万2円と虚偽記載し、その差額を金1039万円分を「裏金」として支出したのに、それを記載しない政治資金収支報告書不記載罪について、下村博文は嫌疑不十分、兼松正紀は起訴猶予、井上智冶は罪とならず。
(2)2014年10月14日東京プリンスホテルにおける博友会主催の「セミナー」に「株式会社東京インターナショナル」から40万円、日本医師連盟から50万円合計90万円の政治資金収支報告不記載について、下村博文、井上智冶は罪とならず、兼松正紀は嫌疑不十分。
第8 不起訴処分の不当性
1 今回、検察官は、第7、3(1)の「博友会」のパーティー収入合計額2019万円を980万2円とうその報告をしてその差額金1039万円分を「裏金」に支出している事実について秘書の兼松正紀は起訴猶予にしていることが不当であり、起訴すべき事案です。
(1) 東京特捜部には政治家のカネの問題は1億円(最近では5000万円とか言われていますが)を超えないと起訴しないという「内部ルール」があると元特捜部の検事達から聞いています。どちらにしても2000万円程度ではこの特捜の内部の基準(ルール)を超えていないことになるから、適当に秘書に「反省」した供述調書を取り起訴猶予にしている可能性があります。しかし収入が2019万円ありながらわずか980万2円とうその報告をし、その差額の1039万円を裏カネとして支出しながら「反省」を理由に不起訴にしていることは極めて不当です。もし国民が2000万円の収入を980万円とごまかすことは許されません。本件はたまたま週刊誌に内部情報が提供された結果発覚した事案を検察が罪に問わず、うやむやにすることは許されません。何故このようなうその報告がなされたのか、公開の法廷で真相解明されるべき事案です。起訴猶予にするとうやむやで終わります。国会議員や秘書だけがこのように特別配慮することは政治不信をより一層招くことになります。
(2)秘書(兼松正紀)が有罪になる証拠があると問えるのに博友会のオーナーである下村博文を嫌疑不十分の処分にしていることも実態を判断していない点が極めて不当です。「博友会」の代表は、井上智治であると届け出されているものの、この者は罪とならずになっていて、関与していないことを示しています。『週刊文春』の報道によると、下村事務所で秘書やアルバイトが作成している「日報」は、毎日夜に、メールで下村博文に送ることになっており、もし送信を怠ったら下村博文が「届いていない、すぐにくれ」と怒り、下村博文が気になった点は電話や対面で「もう少し詳しく教えて」と聞きただし、新たな指示をするという。さらに、当該『週刊文春』の報道によると、「博友会パーティー入金状況」を記録している一覧表である「リスト」は、「博友会の専用の銀行口座に入金された金額を確認して記載されるものであり、下村博文は、それに基づき、パーティー券の売れ行きを細かくチェックしており、前年より購入枚数が減っている支援者がいれば、秘書に厳しく指摘することもあるという。以上の事実から見ると、下村博文は「博友会」の実質的なオーナーですから10万円や20万円の収入漏れや支出漏れがある場合は秘書が単独で行うことはあり得ますが、2000万の収入をわずか980万円余にごまかすことは秘書の単独行為であることはあり得ません。オーナーの下村博文の承認がない以上、普通はあり得ない話しです。下村博文は大物政治家と言われ、文部大臣までなった政治家です。このような大物の政治家に限って前記のような大甘の処分(嫌疑不十分)は普通の感覚ではあり得ないことです。
(3) 両名の不起訴処分について起訴議決されたく特に要請します
2 第7・1及び2記載の、2013年分および2014年分の「加計学園からの政治資金パーティーの対価の受領」の罪についての検察官の処分の不当性
(1)この事件は週刊文春が入手した「博友会パーテイ入金状況」の内部文書によると2013年は「学校 加計学園 100万円」2014年は「学校 山中一郎 加計学園 100万円」とパーテイ券を買って貰ったことを記載した文書です。検察官は加計学園の秘書室長の山中氏が関係者から集めたパーテイ券の代金をまとめて博友会に持参したものと認定して、斡旋事案として処理し、加計学園の代金ではなく、関係者の購入代金を山中一郎がまとめて斡旋したと認定した事案です。その結果、各政治資金収支報告書不記載罪については下村博文は嫌疑なし、兼松正紀は嫌疑不十分という処分をした。、
(2)この事件は斡旋事案ではなく、加計学園がまとめて各100万円でパーテイ券を購入したのではないかと疑います。しかし博友会のパーテイ券の収入を1000万円もごまかすほどですから、真実加計学園の購入代金であっても下村は文部大臣の時代で加計学園の特区関係で職務権限があるときに100万円の大きな金額で購入することがばれると贈収賄問題になる可能性があるので、これを隠蔽する為に「斡旋」と関係者が口裏を合わせた可能性があります。当時、新学部設置を目指していた学校法人「加計学園」が下村博文の「博友会」にパーティー券のあっせん収入による資金提供をしたことは、文科大臣就任前の2012年は20万円だった金額が文科大臣就任後の2013年9月27日、2014年10月10日は、それぞれ5倍の100万円へと増額していることに鑑みると、贈収賄罪(刑法第197条)の可能性があります。というのは、加計学園が経営する岡山理科大学は、今国会で話題に上っている獣医学部の新設だけではなく、教育学部の新設(2015年4月開学)も目指しており、2014年5月末の教育学部設置を申請する1か月余り前の同年3月頃、下村博文の元公設第一秘書の証言を紹介している『文藝春秋』の記事によると、加計孝太郎理事長と下村博文は、赤坂の料亭で直接会って密談しており、また、下村事務所の「日報」を紹介した前記『週刊文春』の報道によると、その約1か月後の4月21日、加計学園の山中一郎秘書室長は、下村事務所に対し「岡山理科大学の設置申請の件で、文科省に何度も連絡をしたのですが込み合っているとの理由で取り合って頂けません。5月末が申請でそれまでに2,3回は質問し書類を整えたいと思っていますので、大変身勝手なお願いですが、何卒面会させていただけないでしょうか」と文科省への口利きを陳情し、下村事務所の大臣秘書官は、「事務方を通して、お願いをいたしました」と下村文科大臣に口利きしたことを報告しており、2015年4月の新設はかなわなかったものの同年8月末に文科省の認可を得て2016年4月の開設にこぎつけ、その認可時の文科大臣は下村博文だったからです。
政治資金規正法違反事件がこのように贈収賄罪にまで発展することを回避するためにも、東京地検特捜部は、あえて不起訴にしたとのではないかという疑惑が生じます。
3 審査に当たってのお願い
(1)検察審査会の役割は、検察官の不起訴処分の評価について、「起訴相当」「不起訴不当」「不起訴相当」のどれかを決めることです。
その際に大切なのは、市民の代表であるみなさんの”普通の感覚”です。
素朴に考えて「なぜ犯罪にならないのだろう?」と思う場合、「起訴相当」か「不起訴不当」のどちらかを議決できます。
「起訴相当」の議決となった場合には、公正で中立な裁判官によって、これまで検察が捜査したさまざまな証拠を公開の法廷で明らかされ、それらが本当に犯罪行為にあたるかどうか、慎重に判断されます。
「不起訴不当」という議決の場合、検察が再捜査することになりますが、それによって導き出される結論は、再び「不起訴」となることが確実で、これまで同様、捜査でどのような証拠が得られたのか、明らかにされることはありません。
「不起訴相当」という議決の場合、検察の捜査でどのような証拠が得られたのか明らかにされないままの状態で、検察審査会として “検察の判断が正しい”と認めることになります。
真相解明のため、みなさんには「起訴相当」の議決が求められています。
(2)求められているのは法律判断ではなく、普通の皆さんの感覚です
ア 検察審査会を設置する目的について、検察審査会法第1条では「公訴権の実行に関し民意を反映させてその適正を図る」と定めています。
検察官の不起訴判断は、専門家の判断です。しかし、検察審査会法の委員の資格に、弁護士、検察官、裁判官などの専門家が除外されているのは、普通の市民の感覚(常識)での判断が求められているからです。
検察官はともすれば、”官”の立場に立って、民意=国民の普通の感覚(常識)に反する処分を行います。こうしたものを、皆さんの感覚(常識)で「適正を図る」ことが必要なのです。
皆さんの役割は、検察官の不起訴処分の当否を審査し、民意を反映する議決を行うことです。判断の基準はあくまでも皆さんの感覚(常識)です。
有罪・無罪を決めるのは、裁判官の役割ですから、有罪だから「起訴相当」、無罪だから「不起訴相当」と考えるものではありません。
イ 検察官は”不起訴”という結論を出した以上,自分たちがした”不起訴”を補強するための都合の良い証拠を並べた説明しかしません。もし事件を疑わせるような不利な「証拠」があったとしても、皆さんに明らかにする義務はないのです。
ウ 求められているのは、普通の市民の感覚(常識)で判断することです。
法律は難しいという理由で、検察官の判断を鵜呑みにすれば、検察審査会のみなさんが議論する意味がありません。思い切り、皆さんの感覚で考え、判断して下さい。
処分通知書 1通
不起訴処分理由通知書 1通
委任状 4通
(2018年10月31日)
『澤藤統一郎の憲法日記』
http://article9.jp/wordpress/?p=11362
◆ 被疑者下村博文に対する検察審査申立記者会見にて
昨年(2017年)7月31日、阪口徳雄君、児玉勇二君ら同期の弁護士とともに東京地検特捜部に赴き、下村博文らに対する政治資金規正法違反の告発状を提出した。
その告発の内容については、同日の下記当ブログにおいて報告済みである。
<安倍政権と加計学園の癒着に切り込むー下村博文政治資金規正法違反告発>
被告発人は、政治団体「博友会」の主宰者下村博文と、同会の代表者として政治資金収支報告の届出名義人となっている井上智治、そして同会の会計責任者兼事務担当者兼松正紀の3名。
被告発事実は、下村が文科大臣だった当時における、政治資金パーティのパーティ券購入代金の収支報告書への「不記載」と「虚偽記入」。パーティ券購入先つまりは金主は、話題の加計学園である。加計から、下村に金が渡っていたことが隠蔽されたのだ。
よく知られているとおり、安倍晋三と加計孝太郎は腹心の友という間柄。
これもよく知られているとおり、安倍晋三と下村博文も右翼と右翼、思想相似たる緊密な間柄。
それに加えて、実は加計孝太郎と下村博文も心許す緊密な間柄と明らかになったのがこの事件の本質。仲良し「悪だくみ・3人組み」である。
下村が文科大臣だった2013年10月と14年10月、いずれも東京のプリンスホテルで行われた下村の各政治資金パーティに、加計学園の担当者がわざわざ出向いて、パー券購入名目で100万円を渡している。合計200万円。
原帳簿には記載のあったこの金が、政治資金報告書の記載からは省かれていることが発覚した。
おかしいじゃないか。徹底して捜査をしてくれ。強制捜査をかければ、モヤモヤしているところがすべて白日の下に曝されるはず、という告発だった。
告発時の記者会見で、私は、
「この告発は、政権中枢の腐敗を撃つものだ」
「本件告発は捜査の端緒に過ぎず、政治資金規正法違反はその入り口である。出口は実質犯、贈収賄成立の可能性となりうる。そこまでを見据えた厳格な捜査を期待したい」と発言している。
しかし、東京地検特捜部はこれを不起訴にした。本年8月15日のこと。
なんと形容することが適切なのか、言葉を探しあぐねている。政権に対する忖度・おもねり・遠慮・へつらい・腰砕け・媚び・ゴマすり…。
本日、これを東京検察審査会に審査申立をし、記者会見を行った。阪口徳雄、上脇博之、私、梓澤和幸の4人。
被疑者の犯罪事実が明らかでも、起訴を猶予する処分が妥当なことはもちろんあり得る。被疑者が真摯に反省して改悛の情を示し、しかも、しかるべき社会的制裁を受けている場合。下村は、どうだ。
「丁寧に説明する」と言っておいて何の説明もしない。到底、反省している態度とはいえない。
今次の内閣改造に伴う自民党人事では、安倍改憲シフトの最高責任者として、憲法改正推進本部長の要職に就いている。社会的制裁も、政治家としての制裁も受けたとは言えない。刑罰が科されてしかるべきではないか。
本日の記者会見で強調されたことは、検察審査員への要望。普通の市民の感覚(常識)での判断をお願いしたいということ。
審査員には、有罪の判断が求められているのでない。国民の普通の感覚(常識)で、何の制裁もなく見逃してはおかしいと思えば、「起訴相当」として公開の法廷に結論を任せればよいと言うこと、なのだ。
政治が金で動かされてはならない。これが国民の常識。
政治の世界で動くカネの流れは、徹底して透明性が保証されなければならない。これも、国民の常識。
加計学園からの金の流れであればさらに下村の政治資金の流れは徹底して洗わなければならない。
この審査申立を担当する検察審査員の一人ひとりにおおきな期待を寄せて、結果を待ちたい。
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審 査 申 立 書
審 査 申 立 書
2018年10月31日
東京検察審査会 御 中審査申立人 上脇博之 (別紙目録記載審査申立人代表)
代理人弁護士 阪口徳雄(別紙目録記載弁護士20名代表)
代理人弁護士 阪口徳雄(別紙目録記載弁護士20名代表)
政治資金規正法違反審査申立事件
1 被申立人 下村 博文
2 被申立人 兼松 正紀
申 立 の 趣 旨
被申立人下村博文および同兼松正紀の下記「被疑事実の要旨」記載の各行為についての政治資金規正法違反告発事件について「起訴相当」の議決を求める。(なお嫌疑なしの被告発人井上智冶については審査を求めない)
申 立 の 理 由
第1 審査申立人及び申立代理人
審査申立人及び申立代理人:別紙記載のとおり
第2 罪名
政治資金規正法違反
第3 被申立人
下村博文および兼松正紀
第4 処分年月日
2018(平成30)8月15日(平成29年検第28494~28496号)
第5 不起訴処分をした検察官
東京地方検察庁 梅田 健史 検事
第6 被疑事実の要旨
別紙告発状記載の通り
第7 検察官の処分(告発事実と検察官の処分の整理)
1 加計学園からの収入についての不記載
(1)2013年10月3日東京プリンスホテルにおける博友会主催の「セミナー」に学校法人加計学園から100万円のパーテイ券の対価を受けながら収支報告書に不記載の罪(被告発人は下村博文、井上智冶、兼松正紀)
(2)2014年10月14日東京プリンスホテルにおける博友会主催の「セミナー」に学校法人加計学園から100万円のパーテイ券の対価を受けながら収支報告書に不記載の罪(被告発人は下村博文、井上智冶、兼松正紀)
(3) 以上(1)(2)の罪を次の予備的告発事件で検察官は審査したので全員「罪とならず」と判断した。
2 上記1(1)(2)のあっせんの事実の不記載罪予備的告発事実
2013年分および2014年分の「政治資金パーティーの対価の支払のあっせん」の各政治資金収支報告書の不記載罪について、下村博文、井上智治は嫌疑なし。兼松正紀は嫌疑不十分。
3 2019万円の収入を980万2円との虚偽記載罪
(1)2013年10月3日東京プリンスホテルにおける博友会主催の「セミナー」に合計額がありながらわずか金980万2円と虚偽記載し、その差額を金1039万円分を「裏金」として支出したのに、それを記載しない政治資金収支報告書不記載罪について、下村博文は嫌疑不十分、兼松正紀は起訴猶予、井上智冶は罪とならず。
(2)2014年10月14日東京プリンスホテルにおける博友会主催の「セミナー」に「株式会社東京インターナショナル」から40万円、日本医師連盟から50万円合計90万円の政治資金収支報告不記載について、下村博文、井上智冶は罪とならず、兼松正紀は嫌疑不十分。
第8 不起訴処分の不当性
1 今回、検察官は、第7、3(1)の「博友会」のパーティー収入合計額2019万円を980万2円とうその報告をしてその差額金1039万円分を「裏金」に支出している事実について秘書の兼松正紀は起訴猶予にしていることが不当であり、起訴すべき事案です。
(1) 東京特捜部には政治家のカネの問題は1億円(最近では5000万円とか言われていますが)を超えないと起訴しないという「内部ルール」があると元特捜部の検事達から聞いています。どちらにしても2000万円程度ではこの特捜の内部の基準(ルール)を超えていないことになるから、適当に秘書に「反省」した供述調書を取り起訴猶予にしている可能性があります。しかし収入が2019万円ありながらわずか980万2円とうその報告をし、その差額の1039万円を裏カネとして支出しながら「反省」を理由に不起訴にしていることは極めて不当です。もし国民が2000万円の収入を980万円とごまかすことは許されません。本件はたまたま週刊誌に内部情報が提供された結果発覚した事案を検察が罪に問わず、うやむやにすることは許されません。何故このようなうその報告がなされたのか、公開の法廷で真相解明されるべき事案です。起訴猶予にするとうやむやで終わります。国会議員や秘書だけがこのように特別配慮することは政治不信をより一層招くことになります。
(2)秘書(兼松正紀)が有罪になる証拠があると問えるのに博友会のオーナーである下村博文を嫌疑不十分の処分にしていることも実態を判断していない点が極めて不当です。「博友会」の代表は、井上智治であると届け出されているものの、この者は罪とならずになっていて、関与していないことを示しています。『週刊文春』の報道によると、下村事務所で秘書やアルバイトが作成している「日報」は、毎日夜に、メールで下村博文に送ることになっており、もし送信を怠ったら下村博文が「届いていない、すぐにくれ」と怒り、下村博文が気になった点は電話や対面で「もう少し詳しく教えて」と聞きただし、新たな指示をするという。さらに、当該『週刊文春』の報道によると、「博友会パーティー入金状況」を記録している一覧表である「リスト」は、「博友会の専用の銀行口座に入金された金額を確認して記載されるものであり、下村博文は、それに基づき、パーティー券の売れ行きを細かくチェックしており、前年より購入枚数が減っている支援者がいれば、秘書に厳しく指摘することもあるという。以上の事実から見ると、下村博文は「博友会」の実質的なオーナーですから10万円や20万円の収入漏れや支出漏れがある場合は秘書が単独で行うことはあり得ますが、2000万の収入をわずか980万円余にごまかすことは秘書の単独行為であることはあり得ません。オーナーの下村博文の承認がない以上、普通はあり得ない話しです。下村博文は大物政治家と言われ、文部大臣までなった政治家です。このような大物の政治家に限って前記のような大甘の処分(嫌疑不十分)は普通の感覚ではあり得ないことです。
(3) 両名の不起訴処分について起訴議決されたく特に要請します
2 第7・1及び2記載の、2013年分および2014年分の「加計学園からの政治資金パーティーの対価の受領」の罪についての検察官の処分の不当性
(1)この事件は週刊文春が入手した「博友会パーテイ入金状況」の内部文書によると2013年は「学校 加計学園 100万円」2014年は「学校 山中一郎 加計学園 100万円」とパーテイ券を買って貰ったことを記載した文書です。検察官は加計学園の秘書室長の山中氏が関係者から集めたパーテイ券の代金をまとめて博友会に持参したものと認定して、斡旋事案として処理し、加計学園の代金ではなく、関係者の購入代金を山中一郎がまとめて斡旋したと認定した事案です。その結果、各政治資金収支報告書不記載罪については下村博文は嫌疑なし、兼松正紀は嫌疑不十分という処分をした。、
(2)この事件は斡旋事案ではなく、加計学園がまとめて各100万円でパーテイ券を購入したのではないかと疑います。しかし博友会のパーテイ券の収入を1000万円もごまかすほどですから、真実加計学園の購入代金であっても下村は文部大臣の時代で加計学園の特区関係で職務権限があるときに100万円の大きな金額で購入することがばれると贈収賄問題になる可能性があるので、これを隠蔽する為に「斡旋」と関係者が口裏を合わせた可能性があります。当時、新学部設置を目指していた学校法人「加計学園」が下村博文の「博友会」にパーティー券のあっせん収入による資金提供をしたことは、文科大臣就任前の2012年は20万円だった金額が文科大臣就任後の2013年9月27日、2014年10月10日は、それぞれ5倍の100万円へと増額していることに鑑みると、贈収賄罪(刑法第197条)の可能性があります。というのは、加計学園が経営する岡山理科大学は、今国会で話題に上っている獣医学部の新設だけではなく、教育学部の新設(2015年4月開学)も目指しており、2014年5月末の教育学部設置を申請する1か月余り前の同年3月頃、下村博文の元公設第一秘書の証言を紹介している『文藝春秋』の記事によると、加計孝太郎理事長と下村博文は、赤坂の料亭で直接会って密談しており、また、下村事務所の「日報」を紹介した前記『週刊文春』の報道によると、その約1か月後の4月21日、加計学園の山中一郎秘書室長は、下村事務所に対し「岡山理科大学の設置申請の件で、文科省に何度も連絡をしたのですが込み合っているとの理由で取り合って頂けません。5月末が申請でそれまでに2,3回は質問し書類を整えたいと思っていますので、大変身勝手なお願いですが、何卒面会させていただけないでしょうか」と文科省への口利きを陳情し、下村事務所の大臣秘書官は、「事務方を通して、お願いをいたしました」と下村文科大臣に口利きしたことを報告しており、2015年4月の新設はかなわなかったものの同年8月末に文科省の認可を得て2016年4月の開設にこぎつけ、その認可時の文科大臣は下村博文だったからです。
政治資金規正法違反事件がこのように贈収賄罪にまで発展することを回避するためにも、東京地検特捜部は、あえて不起訴にしたとのではないかという疑惑が生じます。
3 審査に当たってのお願い
(1)検察審査会の役割は、検察官の不起訴処分の評価について、「起訴相当」「不起訴不当」「不起訴相当」のどれかを決めることです。
その際に大切なのは、市民の代表であるみなさんの”普通の感覚”です。
素朴に考えて「なぜ犯罪にならないのだろう?」と思う場合、「起訴相当」か「不起訴不当」のどちらかを議決できます。
「起訴相当」の議決となった場合には、公正で中立な裁判官によって、これまで検察が捜査したさまざまな証拠を公開の法廷で明らかされ、それらが本当に犯罪行為にあたるかどうか、慎重に判断されます。
「不起訴不当」という議決の場合、検察が再捜査することになりますが、それによって導き出される結論は、再び「不起訴」となることが確実で、これまで同様、捜査でどのような証拠が得られたのか、明らかにされることはありません。
「不起訴相当」という議決の場合、検察の捜査でどのような証拠が得られたのか明らかにされないままの状態で、検察審査会として “検察の判断が正しい”と認めることになります。
真相解明のため、みなさんには「起訴相当」の議決が求められています。
(2)求められているのは法律判断ではなく、普通の皆さんの感覚です
ア 検察審査会を設置する目的について、検察審査会法第1条では「公訴権の実行に関し民意を反映させてその適正を図る」と定めています。
検察官の不起訴判断は、専門家の判断です。しかし、検察審査会法の委員の資格に、弁護士、検察官、裁判官などの専門家が除外されているのは、普通の市民の感覚(常識)での判断が求められているからです。
検察官はともすれば、”官”の立場に立って、民意=国民の普通の感覚(常識)に反する処分を行います。こうしたものを、皆さんの感覚(常識)で「適正を図る」ことが必要なのです。
皆さんの役割は、検察官の不起訴処分の当否を審査し、民意を反映する議決を行うことです。判断の基準はあくまでも皆さんの感覚(常識)です。
有罪・無罪を決めるのは、裁判官の役割ですから、有罪だから「起訴相当」、無罪だから「不起訴相当」と考えるものではありません。
イ 検察官は”不起訴”という結論を出した以上,自分たちがした”不起訴”を補強するための都合の良い証拠を並べた説明しかしません。もし事件を疑わせるような不利な「証拠」があったとしても、皆さんに明らかにする義務はないのです。
ウ 求められているのは、普通の市民の感覚(常識)で判断することです。
法律は難しいという理由で、検察官の判断を鵜呑みにすれば、検察審査会のみなさんが議論する意味がありません。思い切り、皆さんの感覚で考え、判断して下さい。
添 付 書 類
処分通知書 1通
不起訴処分理由通知書 1通
委任状 4通
(2018年10月31日)
『澤藤統一郎の憲法日記』
http://article9.jp/wordpress/?p=11362
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