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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

日銀は異次元緩和で、物価目標の実現に失敗し、信用を失墜させることに成功した

2016年12月24日 | 格差社会
  《佐々木 実の経済私考 (週刊金曜日)》
 ◆ 失敗した異次元緩和の教訓
   「確信犯的な無責任」の起源


 今年はっきりしたのは、「異次元緩和」の失敗だ。
 日本銀行は2013年4月、2%という物価目標を2年で実現させてデフレを解消すると大見得を切った。昨年結果がでたわけだが、「インフレターゲット理論」を唱えたリフレ派の人たちは往生際が悪く、なかなか負けを認めなかった
 ピリオドを打ったのは、リフレ派の大御所でアベノミクスの理論的支柱といわれる浜田宏一氏である。
 「私がかつて『デフレは(通貨供給量の少なさに起因する)マネタリーな現象だ』と主張していたのは事実で、学者として以前言っていたことと考えが変わったことは認めなければならない」『日本経済新聞』(11月15日付)のインタビューで、浜田氏はようやく白旗をあげた
 異次元緩和は、安倍晋三氏が自民党総裁選、政権奪取した総選挙を勝ち抜く際に掲げた持論で、日銀総裁以下日銀幹部がリフレ派に強引にすげかえられた経緯からいっても、「安倍首相なくして、異次元緩和なし」である。
 異次元緩和の手法は、日銀が大量に国債を買い続けることだ(目標は年間60兆円から70兆円、のちに80兆円に拡大)。
 リフレ派マネタリー・ベースを激増させれば「インフレ期待」を醸成できると主張したが、「期待に働きかける」政策を早くから推奨したのは米国の経済学者ポール・クルーグマン氏だった。
 クルーグマン氏は1998年の論文で、高齢化が進む日本では将来への不安から、超低金利でも需要が喚起されず、超過供給に陥っていると診断した。
 インフレが進めば貨幣価値は目減りするので、将来のインフレを人々が確信すれば、需要がでてくるはずだ
 クルーグマンは「中央銀行が無責任な行動をとればいい」という奇抜な理論を唱えた。
 「物価の番人」である日銀がインフレを抑えこむと人々が信じるかぎり、インフレ期待は盛り上がらない。デフレ解消の鍵は「無責任な日銀」をみんなに確信させることだ、というのである。
 この珍説を真面目に実行したのが黒田東彦総裁率いる日銀だ。「無責任な日銀」に豹変することで「インフレ期待」に火をつけようとした。
 ちなみに、黒田日銀の理論的な支えとなっていた。クルーグマン氏は15年の秋、期待に働きかける政策は無効だったことを認めて、珍説をあっさり引っ込めた
 浜田氏より1年も早く白旗をあげていたわけである。

 日銀は、結果を出せず、理論的支柱にも逃げられたが、あまりに大掛かりな試みなので急ブレーキを踏むわけにもいかず、なし崩し的に異次元緩和を続けている
 物価目標の実現に失敗した黒田総裁らは、日銀の信用を失墜させることには成功した。
 国債買い占めはさまざまな方面にリスクを発生させ、日銀は経済不安の火種とさえみなされるようになっている。
 狐につままれたような話だが、異次元緩和の本質は「確信犯的な無責任」にあった。とにかく力強く断言して果敢に実行すれば、人々の心理は操作できる一鳴り物入りで始まった看板政策は安倍政権の政治思想を正確に映し出していたのである。
 ※ささきみのる・ジヤーナリスト。『市場と権力』(講談初が第12回新潮ドキュメント賞と第45回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した。
『週刊金曜日 1118号』2016.12.23

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