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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

奨学金制度がとんでもないことに

2008年10月12日 | 格差社会
 ◆ 日本学生支援機構(旧育英会)の奨学金返還制度がとんでもないことに
 ・・・民間の債務回収業者に報奨金を出し、裁判所に強制執行させる


 「5年の返還猶予が過ぎて、さらに返還できないでいるとどうなるのですか」と、組合に問い合わせがあり、早速、組合員にメールで体験談を募り、日本学生支援機構の労働組合に連絡を取りました。
 「たちまち保証人に連絡が行き、親が払い出し、関係がまずくなった」「1年ごとに猶予願いを出せば5年間猶予されるが、猶予願いを出さないで6ヶ月たつと5%の延滞金が課される」などの体験談は、機構の規定にもあり共通していますが、年代に幅があるためか、「返還が始まった後でも、給与明細を提出して1年間返済猶予された」から、「うわさでは、裁判所の強制執行が行われた人がいる」までありました。特に、最近は窓口の対応が「とにかく返せ」一点張りになっているようです。
 これまでは専任教員になれば免除されていた奨学金の返済が、薄給の専業非常勤講師にとってどれだけ重荷なものかは、ここで論じるまでもありません。そして、旧育英会が独立行政法人日本学生支援機構に移行して以来、「教育の機会均等」が投げ捨てられ、奨学金制度の約7割が有利子貸与の“教育ローン”となり、奨学金の名に値しなくなっている
こともすでにご承知かと思います。

 こうした動きのなか、無利子貸与の奨学金延滞者に対する「返還促進」のための強引なやり方が検討されていることがわかりました。昨年末、行革推進本部によって設置された「奨学金返還促進に関する有識者会議」で議論されている内容です。

 そもそも奨学金返済をどう考えるかという組合執行委員会の話し合いでは、世界が教育の無償化をすすめるなかで、日本の学費が異常に高額なことが問題であり、奨学金は本来給付であるべきで返済しなくてよい」という意見から、「次の世代に対する責任として、返還するのは当然」「債務は認めたうえで、返還猶予を求めるべき」という意見までいろいろ出ました。まだ議論の一致を見ていません。
 とりあえずここでは、今後進められようとしている「返還促進」についての情報を皆さんに提供することにします。以下の情報は、日本学生支援機構の労働組合ら寄せられた「国民のための奨学金制度の拡充をめざし、無償教育をすすめる会」発行の『奨学金の会News』No.9 によるものです。(HPリンク)

 有識者会議では返還者の負担軽減という立場から、「返還免除制度の学部学生への拡大」やイギリスやオーストラリアで採用されている「所得連動型返還制度の導入(=年収が一定以上になったら返還する)」などの意見も出されましたが、それらは紹介されただけで、会議の中心的課題は、融資審査の厳格化や延滞率の高い大学名の公開、米国における債権回収方式の採用などでした。
 その内容は、回収のためにはなりふり構わない消費者金融並みのやりかたです。「個人信用機関の活用」は、つまり“滞納したらブラックリストに載せるぞ”と脅すことであり、「延滞する学生の多い学校名の公開」は、アメリカで行われているように、大学へのペナルティーとして延滞者の多い大学の学生には、奨学金を貸さない、あるいは採用枠を減らす措置につながるものです。
 もう一つ重要なのが、「初期延滞債権の民間委託」です。すでに3年前から民間債権会社が中・長期延滞債権の回収業務を行っています。よりうまみのある初期延滞債権の回収を商売にまわし、うまくやったら回収会社に報奨金を出す制度まで考えられています。
 また、支援機構の労組の書記次長の話では、今後、民間債務回収業者による容赦のない督促と「法的措置の徹底」がビシビシ行われる危険がありそうです。支援機構のホームページによれば、「法的措置」は民事訴訟法に基づく、裁判所による「支払督促」から、「仮執行宣言付支払督促」、「強制執行」をさします。つまりは奨学金を単なる金融事業と位置づけ、一般債務として取り立てようということです。薄給の専業非常勤講師に限らず、格差と貧困が広がるなかで、2005年度の滞納理由の1位、2位は「低所得」「無職・失業」が42%を占め、返したくても返せない人々がたくさんいることがわかります。
 「教育の機会均等」のために学費はどうあるべきか、奨学金制度はどうあるべきかは、今後じっくり議論する必要がありますが、今、行われようとしているこうした強引な「返還促進」に対して、はっきりと反対の意思表示をすべきではないでしょうか。(IS)


『控室』第68 号(2008年9月14日発行)
首都圏大学非常勤講師組合ニュース
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