清掃労働者の感染症対策をはじめとする安全労働について

　　＝東京清掃労組大田総支部＝
　◆ コロナ禍の職場改善
　　　～話し合いが要求の土台 （週刊新社会）

　人が生活するうえでごみは必ず発生する。そのごみの中には、新型コロナウイルスに感染して自宅療養している人などのごみも含まれている。
　こうした実態のなかで働く清掃労働者の感染症対策をはじめとする安全労働について、東京清掃労働組合大田総支部（東京都大田区）は、次のように取り組んできた。
　◆ 安心して働き続けられる職場に

　新年度が始まると、収集現場の変更や人事異動などにより清掃業務は気の抜けない状況が続く。これに加え今年は、外出自粛に伴いごみの量は年末年始なみに増加し、休暇取得も難しい繁忙状態が続いた。
　このため、１年で最も過酷な夏季作業を迎える前に、休暇取得等によって職員の体力を回復させる体制について交渉を行った。
　その結果、夏季対策臨時職員雇用計画（職員の夏休み取得に伴う臨時職員の雇用数）を、通常の雇用数よりも大幅に上乗せすることができた。また、臨時職員の雇用開始を通常より１ヶ月早めて６月から実施させた（別記「①区の回答」参照）。
　こうした回答を引き出せたことは、体力低下により感染しやすい新型コロナをはじめとする各種の疾病の予防や、疲労蓄積に伴い起こりやすくなるケガや事故の防止の観点からも評価出来る。
　また、熱中症対策としては体力の回復を重視し、
　　　①作業途中での休憩を含む十分な休憩時間の確保、
　　　②汗だくの作業着等の着替えと昼休み中のシャワーの使用、
　　　③エアコン、洗濯機や乾燥機の設置などの労働条件の改善に取り組んできた。
　要求書の「週休日の他に１日在宅勤務日を設ける」ことについては（別記「①組合要求」参照）、職場内における職員同士の接触時間の短縮などを通じてコロナ感染予防につなげるという目的から、現場の収集職員（会計年度任用職員を含む）は収集作業の完了後、庁舎へ戻ってから行う事務作業の時間帯を在宅勤務に切り替えることになった。
　また、事務所内での業務を専門に行う職員の在宅勤務は、ローテーションで行うことになった。
　要求書の「アルコールやマスクは必需品である。各所の在庫を切らさないこと」（別記「③組合要求」参照）については、冬季のインフルエンザや作業時の粉塵対策としてマスクは衛生面から１人当たり午前１枚、午後１枚、総数では数千枚が常に確保されており、コロナ禍でも職場ではマスクや消毒アルコールなどの在庫は十分に確保されていた。
　これは平常時には、大量のマスクなどは真っ先に削減の対象になりがちだが、安全労働を最優先に「平常時に必要な量ではなく、非常時を基準に確保する」ことを労組として要求してきた結果である。
　今回の要求書ではこの重要性を再確認するためにも明記した。

　職場の声を集約して作成した当初の要求書は、「自分たちの事だけの要求」となっていた。そこで、官・民・区民を問わず、すべての人の安全を求める視点を要求の根拠にしようと、再度議論を行い要求書を提出した。
　交渉では、清掃業務の委託先の収集環境などの労働条件について大田区側に確認させるとともに、不備がある場合は委託元の区側の責任として改善させるよう要求した。

　★ 組合要求と区の回答要旨

　①組合要求
　緊急事態宣言の期限延長を踏まえ週休日の他に１日在宅勤務日を設けるなどもう一段階踏み込んだ対策を検討すること。また、検討にあたっては、組合との労使協議により進めること。
　一回答
　感染症の予防に係わる新たな取り組みについては、引き続き検討する。
　なお、ごみ排出量の増加等の影響を踏まえ通常の夏期対策臨時職員雇用計画に加え、雇用期間を１カ月早めて実施する。
　②組合要求
　清掃事務所、事業所において新型コロナ感染者が出た場合の対応策を示すこと。
　一回答
　施設の消毒などによる一時閉鎖等の対応は現在検討中。整理ができ次第、対応策を示す。
　③組合要求
　収集作業におけるアルコールやマスクについて各所の在庫を切らさないことはもちろんのこと、それに代わるものの確保にも努めること。また、携帯用のアルコールスプレーを配備すること。
　一回答
　マスク等については、計画的に補充していく。携帯用のアルコールスプレーは確保に努める。
　④組合要求
　洗濯による再使用も限界があることから、晴用・雨用の作業用手袋を追加支給すること。
　一回答
　消耗や破損等の状況に応じて適宜対応する。