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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

反骨のルポライターが次の世代に語り継いでいくこと

2020年02月29日 | 平和憲法
  《本の紹介【週刊新社会】》
 ◆ 鎌田慧 著『叛逆老人は死なず』(岩波書店1900円十税)
   ~自らの生き方で人に接する

 私が知っているルポライターの鎌田慧さんは、反骨の精神が宿った人、という印象が強くある。
 以前、文学の学会に身を置いていたときに出会った早稲田大学の大学院生は鎌田さんの本をすべて集め読んでいた。若者を魅了する、人を引きつける力がある。それはきっと小手先でない、自らの生き方で人に接する姿勢にあるのだと思う。
 柔らかい物腰、年齢差に関係なく、対等の立場でいつも話しかけてくる姿が大好きだ。それはいつまでも変わらないだろう。その反骨の精神が宿っているのが、この本『叛逆老人は死なず』だ。あますところなく一文一文に精神がきらりと光輝いている。
 人間にはどう生きたかで、年齢に関係なく精神の老いというものがある。
 20代、30代でも「若年寄り」という言葉があるように、諦めて周りに迎合して生きている若者もいる。一方で、60代、70代になっても精神が若々しく、いろんなことに興味を抱いて生きている高齢者がいる。
 ときどき年齢とは何かを考えることがある。生物学的には、ある程度の区分ができるのだろうが、精神世界と脳力では簡単に区別がつけられないと思う。そこには社会に対して自分はどう生きるかでまったく違ってくる。
 今でも頭の中に強く残っているが、私の師ともいえる、マルクス経済学の世界的な理論家であり実践者であった向坂逸郎先生は、いつも「青年同盟に入りたい」と言われていた。80歳過ぎても青年の心を堅持してあった
 不正と不誠実なものには怒りを現していた。社会主義の理論を歪める者への容赦のない厳しい論争と、『資本論』を読むことを一生の課題とされていた。
 私はプロレタリア文学でも同じだが、一つの道を歩み続ける先人たちと出逢えたことがうれしい。表面的な言葉でなく、生きる姿を学べたことが幸せだと感じている。
 本の中では「叛逆老人は今日も行く」で、こう述べている。
 「反公害闘争、労働運動、開発反対、反原発などの大衆運動の場で、ひとり最後まで闘い抜いて亡くなったひとたちがいる。欲得なし、名誉欲なし。ただ妥協なく闘い、全うした。仕事柄、そのようなひととお会いすることが多かった。おなじ場に自分がいたら、そこまでできたか、とわたしはいつも自分に問いかける」という。
 この本の構成は次のようになつている。
  Ⅰ、叛逆老入は今日も行く
  Ⅱ、沖縄は基地をつくらせない
  Ⅲ、亡国の原発政策
  Ⅳ、死刑大国の好戦内閣
  Ⅴ、叛逆老人列伝

 40年、50年と人間らしく働き生き続けるために活動してきた60代、70代が存在していること自体が宝だと思う。
 なぜなら私らが20代の頃、年上で社会運動している先輩はごく少なかった
 それでも少数の50代から70代の先輩に教えられ育った。戦争で多くが息絶えていたからだ。
 いまは私たちの世代が社会の現状が悪化するのを食い止め、次の世代に継いでいくのが何より大切なことだと思う。
 鎌田慧さんは言う。
 「平和な時代を生きてきた者の、せめてもの恩返しと若者の未来への期待でもある。」
 (大崎)

『週刊新社会』(2020年2月4日)


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