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『教育勅語』『わが闘争』教材化閣議決定は教育への政治介入

2017年05月30日 | こども危機
  安倍内閣の意識統合の手法
 ◆ 『教育勅語』を教材化 戦争と改憲への一里塚 (週刊新社会)
立正大学非常勤講師 永井栄俊

 ◆ 世界の右傾化と安倍政権
 今、世界を極右勢力が席巻している。日本のマスコミは、フランスのルペン氏やトランプ大統領を極右勢力として報道している。しかし、日本のマスコミが絶対に伝えていないのは、世界で最大の極右政権が日本の安倍政権であるということである。
 本年4月14日、安倍政権は持ち回りで閣議決定を行いヒトラーの『わが闘争』の教材使用の容認を決定した。そして、続く18日には戦前日本軍国主義のイデオロギー的なバイブルであった『教育勅語』の教材化の容認を閣議決定したのである。
 「憲法や教育基本法に反しない限り」の条件付きなのだというが、これに反しない教育勅語はありえないことだ。また、ドイツなどのヨーロッパではナチズムを連想させる全てが禁止されているが、『わが闘争』の教材化などは犯罪的行為といえる。
 これらの閣議決定の波紋は余りにも大きいのである。「閣議決定」というのは内閣の方針を示す意思決定のことである。この意思決定によって内閣発議の法案が国会に提出されることにもなる。
 ところが、今回のような『わが闘争』や『教育勅語』の教材化の閣議決定は、法制化をめざすものではなく、むしろ教育への政治的圧力を意図したものであるといえる。つまり、政治の教育への介入なのである。
 ◆ 国家総動員体制を作り出す
 教育勅語は、1890年に教育に関する教えとして臣民(国民)に対して出されたものである。「勅語」というのは天皇の言葉の意であるが、その対象が「臣民」であることがら、これは単に天皇の言葉の意味を超えて、天皇が臣民に対して教え諭す意味なのである。
 「朕(ちん)おもうに」から始まる文面は、単に朕(天皇)が思ったことが書かれているわけではない。続けて「我が皇祖(こうそ)皇宗(こうそう)が国を肇(はじ)むること」と書かれており、皇祖(天照大神)と皇宗(神武天皇から始まる歴代天皇の意)から受け継がれた国家の「徳」を示すものであるとする。
 この皇祖皇宗に基づく天皇制国家を「国体(こくたい)」という特別の言葉で示し、幾世代も臣民は「忠」「孝」により心を一つにしてきており、ここに我が国体の美徳があり、教育の本質であるという。
 したがって、ひとたび国家に危急の時があれば身をもって国家に尽くすべきであるということが教育の本質として諭されている。
 この教育勅語は、天皇と国家に忠誠を尽くす臣民(国民)を育成し、心を一つにした国家総動員体制を作り出すものであった。
 このために、敗戦後の1948年、国会において排除・失効が決議されたのである。国民主権の新憲法とは背反するからだ。
 ◆ 『道徳』の基本ルールもない
 今回の『教育勅語』教材化容認の閣議決定は、それ以前からの閣僚等による様々な発言の流れの中で意図的に出されたものだ。
 例えば稲田朋美防衛相は、本年3月8日の参議院予算委員会で福島瑞穂議員(社民党)の質問に答えて次のように述べている。
 「私は教育勅語の精神であるところの、日本が道義国家を目指すべきであり、親孝行とか友達を大切にするとか、そういう核の部分ですね、そこは今も大切なものとして」いる、と。
 すでにみたように教育勅語は天皇制国家の具現化を意味しており、「道義国家を目指す」ものであるとする稲田見解は日本国憲法にも教育基本法にも反するものといえる。そして「親孝行」や「家族(友達)の和」などは「大切にすべき」ものであるというが、今日の社会問題は「親孝行」よりも親の子どもに対する虐待であることを知るべきだ。また家族の「和」の解体は経済的な貧困・格差によってもたらされていることが多い。
 さらに、教育勅語が「道徳」の「核」であるというが、例えば十戒コーランでは「人を殺すな」「泥棒するな」「嘘をつくな」などの基本的な社会のルールを教えている。
 しかし、教育勅語にはこれらの基本的な教えさえ書かれていない。これが「道徳」の「核」であるはずがないのである。
 森友・塚本幼稚園のように教育勅語は「洗脳教育」としての役割を果たす以外にはない。今回の閣議決定は、憲法改悪に向けた国民への刷り込みと意識統合の政治手法であるといえる。
『週刊新社会』(2017年5月23日)

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