◆ いじめの原因が分からない都教委にいじめ対策はできない (レイバーネット日本)
公開議題は、
1)「今年度東京都公立学校における『いじめの認知件数及び対応状況把握のための調査』結果について」
2)「都民の声(教育・文化)について 今年度上半期」。
どちらもすでに、都教委ホームページに掲載されている。
1)「今年度東京都公立学校における『いじめの認知件数及び対応状況把握のための調査』結果について」
2017年4月1日から6月30日に都内全公立学校で調査したという。都教委は都立学校、区市町村教委に対し、年3回以上の調査を課しているとも言った。結果は、
【いじめの認知件数について】
ア.いじめの認知件数は小学校9597件(昨年度の5.5倍)、中学校2220件(昨年度の2倍)、高校55件(昨年度の1.1倍)、特別支援学校12件(昨年度の2倍)
イ.認知したきっかけは、例えば小学校の場合は「アンケート調査により発見」が6560件、「子どもからの訴え」が1086件、「保護者からの訴え」が915件、「学級担任が発見」が850件。
ウ.いじめの態様は、「冷やかしやからかい」が最も多く、小学校校では5210件(昨年度の5倍)、中高で次に多いのが「パソコンや携帯で誹謗中傷」で、中学校で228件にのぼる。
エ.小中学校での調査結果を区市町村別に見ると、例えば、足立区小学校のいじめ認知件数は3204件、昨年度の50倍にのぼる。それについて都教委の認識は、「毎月いじめ調査をしたことにより」「多くの学校で軽微ないじめも見逃さないという認識が広がった。」
【対応状況】
ア.「認知されたいじめについて誰が(どこが)対応したか」では、小中学校では「学級担任」が94%、92%、高校では56%。学校いじめ対策委員会(=いじめ防止推進法に沿って校内に設置)の対応は、高校では69,1%(昨年度62,5%)になったものの、小学校では39,7%(昨年度35,6%)止まり。
イ.「認知したいじめに対して学校がスクールカウンセラーと連携して対応した状況」は、小学校1646件(昨年度413件)、中学校640件(昨年度258件)、高校28件(昨年度23件)。「このうち、効果が見られた件数」は、小中高いずれも3割程度。「効果が見られた割合は減少している」。
ウ.「学校いじめ対策委員会の取組状況」では、「スクールカウンセラーが得た情報を教職員間で共有」している割合、「いじめの未然防止や早期発見のための取り組みについて年間計画を策定」している割合は、全校種で一昨年度・昨年度より減少。
***** ***** *****
この報告に対し、教育委員も「多くの学校で軽微ないじめも見逃さないという認識が広がった」と評価した。しかし、そうではないだろう。
年に3回も、熱心な区市町村では毎月、いじめ調査をしているのに「認知されたいじめ」が減らないという現実を直視していない。
子どもたちも教員も「軽微ないじめも見逃さな」くなったのなら、いじめは減少するはずだ。なのに、いじめが減らないのは、なぜなのか、どこに原因があるのかを、都教委はなぜ分析しないのか。そここそを都教委は考えるべきなのだ。
「男が痴漢になる理由」(精神保健福祉士・斉藤章佳著)で著者の斉藤さんは「痴漢=性欲の強い異常な犯罪者、ではありません。」
痴漢の動機は、過剰な性欲ではなく、「ストレスへの対処」であって、「相手を自分の思い通りにできる快感が、ストレスを消す。弱い他者を支配することで優越感が持てるからだ」と言う。
いじめもストレスのはけ口としてやってしまうこと。だから、調査を繰り返しても成果が上がりはしない。
いじめは、いじめる側の子どものSOSでもある。自己を主張してもいい、受け止めてもらえると子どもたちが思える環境を、いろいろな働きかけを通して子どもたちに提供することが都教委や学校のすべきこと。
競争・選別・排除ではなく、誰もが人格を持ったひとりの人間であることを、学校生活を通して示すことが大事なのだ。
身の回りや社会で起きている不正や差別問題に向き合い考え合うことからも、子どもたちの心は育つ。その題材は都教委が嫌うだろうことだが、教員たちにはぜひ考えてほしいことである。
また、子どもたちは良くも悪くも大人を見て育つのだから、大人社会でのいじめを止めること。学校では、「君が代」起立を拒否する教員を処分し、差別することを止めることだ。
文科省・都教委が進める学校いじめ対策委員会の取り組みが減少したこと、スクールカウンセラーと連携した対応の効果が減少したことについても都教委の認識は的を得ない。
どちらの策も教員を忙しくするだけ。カウンセラーが常勤ならば子どもたちも相談するだろうが、たまにしか来ない、信頼関係を築く時間の保障がないスクールカウンセラーが担当したところで、問題解決に至らないだろうことがどうして都教委にはわからないのか。
人の心が理解できない都教委幹部が次々にアドバルーンを打ち上げても、子どもたちも教員たちも余計にストレスを貯めるだけ。また、頻繁に行う調査は密告を誘い、子どもたちが解決に向かう力を潰してしまうのではないか。
2)「都民の声(教育・文化)について 今年度上半期」
「都民の声」1826件のうち「苦情」が70%、その苦情の最多は「教職員に関するもの」で25%。例年と同じである。
その事例として上がったのは、「都立学校の教員がSNSに同僚の言動を批判する内容を投稿した。こうした投稿を止めるよう指導してほしい」というもの。この事例に都教委が対応したこととして、「校長が当該教員にSNSの内容を確認したところ、事実だった。校長は同教員に教育公務員としての立場を自覚するように厳しく指導し、その場でSNSを閉鎖させた。」
こうした恥ずべき行為については、都教委は「厳しく指導」で済ませる。「君が代」不起立には懲戒処分を乱発するのに、だ。
「請願」は1件、「都立高校定時制の募集継続を求める請願」である。「継続しない」という「請願者への通知」文を掲載したのみ。
「陳情」は58件、そのうち、「君が代」不起立処分についてが8件。「陳情にはどう対応しているのか」との教育委員の質問に、都教委は「陳情者と会って話を聞いたりもする」(趣旨)と言った。都教委の考えに合わない個人・団体にはまったく会わないできたにもかかわらず。
『レイバーネット日本』(2017-11-27)
http://www.labornetjp.org/news/2017/1124nedu
公開議題は、
1)「今年度東京都公立学校における『いじめの認知件数及び対応状況把握のための調査』結果について」
2)「都民の声(教育・文化)について 今年度上半期」。
どちらもすでに、都教委ホームページに掲載されている。
1)「今年度東京都公立学校における『いじめの認知件数及び対応状況把握のための調査』結果について」
2017年4月1日から6月30日に都内全公立学校で調査したという。都教委は都立学校、区市町村教委に対し、年3回以上の調査を課しているとも言った。結果は、
【いじめの認知件数について】
ア.いじめの認知件数は小学校9597件(昨年度の5.5倍)、中学校2220件(昨年度の2倍)、高校55件(昨年度の1.1倍)、特別支援学校12件(昨年度の2倍)
イ.認知したきっかけは、例えば小学校の場合は「アンケート調査により発見」が6560件、「子どもからの訴え」が1086件、「保護者からの訴え」が915件、「学級担任が発見」が850件。
ウ.いじめの態様は、「冷やかしやからかい」が最も多く、小学校校では5210件(昨年度の5倍)、中高で次に多いのが「パソコンや携帯で誹謗中傷」で、中学校で228件にのぼる。
エ.小中学校での調査結果を区市町村別に見ると、例えば、足立区小学校のいじめ認知件数は3204件、昨年度の50倍にのぼる。それについて都教委の認識は、「毎月いじめ調査をしたことにより」「多くの学校で軽微ないじめも見逃さないという認識が広がった。」
【対応状況】
ア.「認知されたいじめについて誰が(どこが)対応したか」では、小中学校では「学級担任」が94%、92%、高校では56%。学校いじめ対策委員会(=いじめ防止推進法に沿って校内に設置)の対応は、高校では69,1%(昨年度62,5%)になったものの、小学校では39,7%(昨年度35,6%)止まり。
イ.「認知したいじめに対して学校がスクールカウンセラーと連携して対応した状況」は、小学校1646件(昨年度413件)、中学校640件(昨年度258件)、高校28件(昨年度23件)。「このうち、効果が見られた件数」は、小中高いずれも3割程度。「効果が見られた割合は減少している」。
ウ.「学校いじめ対策委員会の取組状況」では、「スクールカウンセラーが得た情報を教職員間で共有」している割合、「いじめの未然防止や早期発見のための取り組みについて年間計画を策定」している割合は、全校種で一昨年度・昨年度より減少。
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この報告に対し、教育委員も「多くの学校で軽微ないじめも見逃さないという認識が広がった」と評価した。しかし、そうではないだろう。
年に3回も、熱心な区市町村では毎月、いじめ調査をしているのに「認知されたいじめ」が減らないという現実を直視していない。
子どもたちも教員も「軽微ないじめも見逃さな」くなったのなら、いじめは減少するはずだ。なのに、いじめが減らないのは、なぜなのか、どこに原因があるのかを、都教委はなぜ分析しないのか。そここそを都教委は考えるべきなのだ。
「男が痴漢になる理由」(精神保健福祉士・斉藤章佳著)で著者の斉藤さんは「痴漢=性欲の強い異常な犯罪者、ではありません。」
痴漢の動機は、過剰な性欲ではなく、「ストレスへの対処」であって、「相手を自分の思い通りにできる快感が、ストレスを消す。弱い他者を支配することで優越感が持てるからだ」と言う。
いじめもストレスのはけ口としてやってしまうこと。だから、調査を繰り返しても成果が上がりはしない。
いじめは、いじめる側の子どものSOSでもある。自己を主張してもいい、受け止めてもらえると子どもたちが思える環境を、いろいろな働きかけを通して子どもたちに提供することが都教委や学校のすべきこと。
競争・選別・排除ではなく、誰もが人格を持ったひとりの人間であることを、学校生活を通して示すことが大事なのだ。
身の回りや社会で起きている不正や差別問題に向き合い考え合うことからも、子どもたちの心は育つ。その題材は都教委が嫌うだろうことだが、教員たちにはぜひ考えてほしいことである。
また、子どもたちは良くも悪くも大人を見て育つのだから、大人社会でのいじめを止めること。学校では、「君が代」起立を拒否する教員を処分し、差別することを止めることだ。
文科省・都教委が進める学校いじめ対策委員会の取り組みが減少したこと、スクールカウンセラーと連携した対応の効果が減少したことについても都教委の認識は的を得ない。
どちらの策も教員を忙しくするだけ。カウンセラーが常勤ならば子どもたちも相談するだろうが、たまにしか来ない、信頼関係を築く時間の保障がないスクールカウンセラーが担当したところで、問題解決に至らないだろうことがどうして都教委にはわからないのか。
人の心が理解できない都教委幹部が次々にアドバルーンを打ち上げても、子どもたちも教員たちも余計にストレスを貯めるだけ。また、頻繁に行う調査は密告を誘い、子どもたちが解決に向かう力を潰してしまうのではないか。
2)「都民の声(教育・文化)について 今年度上半期」
「都民の声」1826件のうち「苦情」が70%、その苦情の最多は「教職員に関するもの」で25%。例年と同じである。
その事例として上がったのは、「都立学校の教員がSNSに同僚の言動を批判する内容を投稿した。こうした投稿を止めるよう指導してほしい」というもの。この事例に都教委が対応したこととして、「校長が当該教員にSNSの内容を確認したところ、事実だった。校長は同教員に教育公務員としての立場を自覚するように厳しく指導し、その場でSNSを閉鎖させた。」
こうした恥ずべき行為については、都教委は「厳しく指導」で済ませる。「君が代」不起立には懲戒処分を乱発するのに、だ。
「請願」は1件、「都立高校定時制の募集継続を求める請願」である。「継続しない」という「請願者への通知」文を掲載したのみ。
「陳情」は58件、そのうち、「君が代」不起立処分についてが8件。「陳情にはどう対応しているのか」との教育委員の質問に、都教委は「陳情者と会って話を聞いたりもする」(趣旨)と言った。都教委の考えに合わない個人・団体にはまったく会わないできたにもかかわらず。
『レイバーネット日本』(2017-11-27)
http://www.labornetjp.org/news/2017/1124nedu
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