京都 洛北の時計師 修理日記

時計修理工房「ヌーベル・パスティーシュ」京都の洛北に展開する時計修理物語。
夜久野高原で営業再開しました。

時計師の京都時間。

2013-11-09 09:09:17 | 日記

「残された時間」
写真の時計の共通点。つけたときにベルトのフィット感がいい。
腕にぴったりと程よく密着します。
ところが弱点がある。手入れを怠るといきなりバラバラになってしまうのです。

ダンヒルの場合、幅5ミリ位のコマをつないでいる小さなばねが錆びる。
コマとコマの間のゴミを掃除しています。
次の2年後の間にバンドの修理にならないように予防するのです。
大きなブラシとアルコールで大まかなゴミを取って仕上げに油絵用の筆を使うと18金の輝きが戻ってきます。
あくまで錆を除くための処置なのでベルト部分だけの作業です。
「残された時間」をちょっと延長できるのです。


「十一月に死んだ悪魔」愛川晶 文藝春秋。
怖いお話!今年一番の怖さです。

「怖いお話」私は日々体験しているので心に免疫が出来ているようだ。
本を読んでそれほど怖くなったことは少ないがこの本はそういうことではお勧め!

「残された時間」
今年の人形にまつわるお話です。
学生時代、合コン後に良くある数日後のダブルデート。

1対1でのデートまでは発展していない。このパターンでよくある数合わせの「あて馬」デートに呼び出された。
昼ご飯に釣られて出かける。

友人のSは京都でも憧れの名門K女子大学生とのデートなので期待が盛り上がっていました。
普段女性と縁のない学部なので余計に力が入る。足が震えていたので結果が見えるようだ。

消極的参加の私。
なんとか場を盛り上げようとへとへとになる。高い昼ごはんについたと後悔する。

やっと京都駅でお別れ時間になりほっとしたところ何か手渡された。
「このペアの夫婦人形をお互い持っているとまたどこかで出会えるそうだよ!」
嬉しそうに帰り際にプレゼントを渡される。

「お前の為にただの数合わせで参加したのに~困ったね。どうしよう?」
その後1~2回会って自然消滅。
ところが人形を返しそびれて片割れになった人形がそのまま残った。
ここまで依然どこかで話した記憶がある。

友人のSも同じ経過を辿ったようで私の部屋に来るたびに見つけては「どうする?この夫婦人形?」
「ほっとこうよ!」の会話になる。

その後、彼女とはたびたび出会うことになるとは思わなかった。
36年間ニアミスを続ける人生が始まったのだ。

新幹線新大阪駅のコンコース、東京駅枚札口、京都コンサートホールのホワイエ、満員の近鉄電車で何気なく向こうに止まっている車窓からの視線に驚いたり、広島駅・お好み焼き店のトイレから出てきた。さまざまな事故のように出会う。

ただし出張など上司といっしょだったり、トイレに急いでいたりと声をかける機会がなく過ぎていきました。
それでもお互いに歳をとってもわかる?のが不思議でした。

そんなときにSから突然連絡が入る。
「あのK女子大の人。亡くなったそうだ。」
「お前の方か?」彼女がどんな女性だったのか記憶になかった。
二人同時に行動していたのに全く記憶にない。

彼も私と同じようにニアミスを繰り返していたそうだ。
「たびたび京都市内で見かけたけど住まいは東京だったそうだよ。」
人形に添えられた彼の住所を辿ってSの実家へ連絡が入ったそうです。
「どうする?大事にしまってあったそうだよ。」
「ほっとこうよ!よけいな騒動になりそうや。」

数ヵ月後、Sは後を追うように海外の出張先で急逝した。
心筋梗塞だ。
やはり二人はまたどこかで出会ったのだ。引っ張られたとも言う。

京都では10月14日「宝鏡寺」で「人形供養」の行事がありました。
今年は「体育の日」でした
女性が多い中でポツンとオヤジの私がなんとなく場違いだ。
「没いち」になったお人形と私の分と二つ供養していだだきました。

「残された時間」は後どれくらいなのでしょう?

























コメント
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