京都 洛北の時計師 修理日記

時計修理工房「ヌーベル・パスティーシュ」京都の洛北に展開する時計修理物語。
夜久野高原で営業再開しました。

時計師の京都時間。

2013-11-28 09:25:07 | 日記

11月27日「いい鮒」の日と勝手に記念日にしてしまいました。
大津名物「鮒寿司」酒の肴に絶品です。
最近ブラックバスに追われて、いい鮒の入手が難しいらしい。
名古屋の「鮒煮」も大好き!ここは記念日にしてあげて頑張ってほしいところだ!

「絶滅の時間」
日本製目覚し時計が絶滅危惧種。
日本メーカーの90%以上が中国生産。セイコークロック、リズムクロック、カシオほとんどのメーカーが中国生産に切り替えて久しい。

写真の目覚し時計がやってきた。電波時計だ。「つい落した所、目覚しの針がぶらぶらとずれてしまった。」
時計の中からごろごろごろと音がする。

1970年代のアメリカ車を思い出す。「月曜日の車は買ってはいけない!」
週末遊びまわって全くやる気がない工員が多い。
「ごろごろと音がするのでドアの鉄板を開けるとコカ・コーラのびんやらタバコの吸殻が出てくる」
そんな懐かしい都市伝説です。今は中国製が引き継いだようです。

昨日は工房のお休みを利用して「クロックの日」
休日を利用して趣味の?機械式ボンボン時計の修復作業をやっていました。

時計の裏ブタを開けてみるとビックリ!これほど汚く粗雑な基板は始めてみた。
大量の樹脂が雫のようにたれていた。そのうちはがれて落ちることは誰でもわかる。
コイルの巻き方もずさんだ。
中からプラスティックのゴミが出てきた。これでは工業製品ではない。おもちゃだ!


モデルが違うので比較にならないのですが30年前の基板と比べると仕事に向かう誠実さが解る。
日本メーカーのプライドも「絶滅時間」だ。「誠実」の言葉も機械といっしょに中国へ売り渡したようです。
「目覚し時計は保障期間が終わる頃に壊れる。耐久年数は2年と想定して購入しましょう!」

先日修理依頼でやってきた。クリスマスプレゼントのオルゴールもダイキャストの支柱が割れていました。
日本のメーカーや百貨店を信頼してはいけません。販売側では一つ一つテストはしない。
不良品が10%程度発生する事を見越しているので交換はしてくれる。
ただし年末の忙しい時期、往復の交通費用と時間、プレゼントのシーンの楽しい時間は保障されません。

そこで中国人の店頭の買い方を見習いましょう。
彼らは必ず商品のチェックをして購入する。
安い目覚し時計でも付属の電池を入れ異音がないことを確認します。
ボールペンやライターでも必ず試します。
また在庫の商品を渡すと怒り出す。現品を渡すことだ。

見本には良品を使い、客には不良品を渡す事など日常よくあるのです。
「中国人のバイヤーには気をつけろ!」20年前、香港に店があった頃からの常識です。

まさか日本の国内でこのような事態になるとは予測できませんでした。
グローバル社会の中で「日本メーカー」への信頼は「絶滅」しました。

今年から目覚し時計を購入する場合は良く振って「ごろごろ音」を確認してください。
また「電波時計」は裏ブタや風防など故障に対する想定はない。後日、開けるように設計されていないのです。
今回のように落としたショックで「剣ズレ」(針がグラグラになること)修理の場合なら通常200円程度の簡単な修理です。
ところが接着されていたりと大掛かりな修理になる。
使い捨てを覚悟して購入しましょう。


写真は宮内悠介著「ヨハネスブルグの天使たち」「盤上の夜」
「ヨハネスブルグの天使たち」は特にお勧め!
ハードSFの分類に入りそうな小説ですが近未来社会の「日本製品」が怖い!
この本を読んで、日本に帰ってきたときことを思い出した。
「これで安心して死ねる!」
海外で死んだら家族に迷惑をかけるので24時間緊張して生活していた事を思い出す。
作者は生後すぐに海外で成長してきた。その緊張感が文章から伝わって来る。
時々たまらず眼を閉じるシーンが出てきます。

「盤上の夜」は直木賞の候補にもなりました。ゲーム理論を通して登場人物が魅力的だ。直木賞をあげたかった一冊。
こんな本が出てくる日本の出版業界はまだ希望がある!
「直木賞」に選ばなかった選考委員に絶望がある。
そろそろ工房を開ける時間になりました。今日も一日ぶつぶつ時計と会話しながら始めましょう。














コメント
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