京都 洛北の時計師 修理日記

時計修理工房「ヌーベル・パスティーシュ」京都の洛北に展開する時計修理物語。
夜久野高原で営業再開しました。

時計師の京都時間。

2013-11-08 09:16:17 | 日記

「限界の時間」
写真はオメガ・シーマスター。1970年代以前のモデル。
若いユーザーなので現行品シーマスターのような防水機能を期待していました。
ケースは一体型でもリューズ,風防から水が入るので非防水として使う事です。

1970年以降に生まれてきた人たちは要注意です!
「限界年齢」なのです。生まれてきた時からクオーツ時計になじんできた人たちです。
時計はぴったりと正確なものという概念。ゼンマイだけの動力で動いているものにお世話にならないで生活出来る世代だ。
写真のような機械式時計のオーナーになると驚くような悲惨な結果になることが多い。
使い方を知らずに高級品のユーザーになってしまうのは不幸な事です。

「5分くらいお時間をください!」
ロレックスなど機械式の時計を買う人に必ず説明する事があります。
お買い上げいただくすべての人が機械式を熟知している人ではないのでクレームになるのです。
①故障が多い。部品点数がクオーツ時計の2倍以上使われているため故障率も高い。決して丈夫な時計ではない。

②「精度が悪い事は構造上理解できるし解るがいきなり止まるのが気に喰わない!」
冬場になると人の動きは少くなるので同時に腕の振り回数も減る。
時計の巻き上げ回数も減る。
朝、時計を見るとなんと止まっているのだ。目が覚めた時ほとんどの人は機嫌が悪い。
特に雨や雪の月曜日の朝に時計が止まっているので不満が爆発するのだ。

③修理料金(メンテナンス料金)が高い。修理期間が2ヶ月と長い。
基本修理料金は定価の10~15%だ。50万定価の時計なら5万円は覚悟する。
経済的に苦しい時ほど時計は壊れる。
部品はほとんどのメーカーがスイス対応なのでヨーロッパまで「時計」が旅行する。
メーカーサイドから見ると全世界へ主要部品の在庫を持たせたのでは経済的に成り立たないのです。

結果としてこの季節、時計販売店には毎日のようにクレームが入ることになる。
対策としては素人には「売らない!」ことだ。
老舗の時計店ほどアイソが悪い傾向があります。
 ヨーロッパの時計・宝飾店のなかには紹介者がいないと入店できないお店もあるほどです。
原理は京都祇園の「お茶屋さん」と同じ一見客はお断りだ。

特に若い女性に機械式時計をお勧めしないのはこの業界の常識。
女性は時計をTPOにあわせて使い分けるために機械式時計は面倒なのだ。
着けていこうとして取り出すといつも止まっている。
そのたびに時刻合わせを失敗、カレンダー機構を破壊してしまう結果になるのです。ロレックス修理の常連客にそんな人がいました。

カルチェ、エルメスなどクオーツ時計に名品が多いのはそんな理由もあるのでしょうね。

いつのまにか「限界の時間」がやってくる。
時計にストレスを感じたら出来るだけ使用を避けましょう。

工房に来てくれる人たちの中で特に20歳代の皆さんにはくどいほど説明しています。
「雨・雪」の日は人の動作が乱暴になるので「アンティ-ク時計」には危険な季節です。
若い人ほどストレスがたまる。国からもいいようにあしらわれて税金をぼられる世代だ。
その「しわ寄せ」が時計に向かわないように祈るだけ!
これから冬に向かいます。
写真ような高級時計候補は春までお休みさせたい気分なのだ。
今日から寒くなるらしいので時計も冬支度をしましょう。








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