人生とは美しく刺激的なリッチ。

へんてこでも自分らしい生活。
美に感動、優に感謝、心に感性。

蒼穹の昴。

2011-02-01 18:08:18 | 書籍。
・蒼穹の昴①~④  浅田 次郎(講談社文庫)



浅田次郎の代表作品だけあって、読み応え充分。
約400ページの文庫4巻からなる超大作。
舞台は中国清朝末期時代の紫禁城。貧しき糞拾いの少年・春児(チュンル)が-、兄貴分の文秀(ウェンシウ)が-、成長と出世を重ね、西太后や皇帝の下で歩む覇道を描く。
ここ1週間、本作品に夢中になり、時間があればコレを読んでいたと思う。何とも素晴らしく、なんて面白い。流石は万人に評されるベストセラー作品。最初は、中国独特の名前や用語に慣れず、内容を理解するのに時を要し鬱陶しさがあったが、読み進めれば次第に慣れ、唯その面白さに魅了されるばかりになる。
明日からは姉妹版の『中原の虹』を読んでいく予定。しばらくは中国史にどっぷり。

赤い指。

2011-01-05 19:59:02 | 書籍。


・赤い指   東野 圭吾(講談社文庫)


平凡な家族が起こしてしまった少女殺人事件。事件の隠蔽と、事件を起こした張本人である息子を護る為に嘘を重ね続ける家族、その果てに待っていたものは-。軽い感じで読み進められる推理小説である一方で、深刻な社会問題を幾つも描き出している。しかし、その“問題”には共通点を持つ。核家族化が招いた弊害、高齢化社会、老人介護、親子関係-、つまり“家族問題”だ。現代社会において、“家族”のカタチは急速に変化しているように思う。年輩者、高齢者を敬う“意識”の衰弱化-、何かが老人を邪魔者扱いとし、社会のお荷物化としてしまっているように思われてならない。世界に先駆けて高齢化社会を迎えている日本-、老人の人口に占める割合は増加する一方であるが、果たして、その実状を受け入れる環境の整備が追いついていると言えるだろうか。社会整備の遅れが招いた悲劇か-、それとも日本人の意識の変化が原因となった悲劇か-、この作品のクライマックスは胸を痛めずして読めないはず。高齢化社会や家族の在り方を考えさせられる一冊。東野圭吾は軽いタッチで深い物語を創り出すと改めて驚愕。

聖母 ホスト・マザー。

2011-01-04 20:49:09 | 書籍。


・聖母 ホスト・マザー  仙川 環(徳間文庫)


赤ちゃんが欲しい。ただ、それだけ。

癌により子宮を失った沢井美沙子が、夫と共に実家を訪れる場面から物語はスタートする。実家には弟夫妻も訪れており、親戚一同での和やかな団欒があるはずだったが-。美沙子は突如取り乱す、原因は甥の何気ない一言“何で美沙子おばちゃんの家には子供がいないのか?”。愛する夫の子供が欲しいが、それを許さない自己の身体に虚しさと、諦めの日々を過ごす美沙子。精神は病み、ヒステリックとなっていた彼女に唯一希望を与えた一筋の光…、“代理出産”。

誰か、私に子宮を貸して-。

金銭で解決するか-。それとも、危険を伴うことにより身内で行うか-。海外か、途上国か-。誰が子宮を提供するのか。“代理出産”をするにあたり、それに関して発生する問題が次々。それでも、美沙子の赤ちゃんが欲しい想いは膨らむ一方であった。美沙子の心情の変化を描写すると共に、代理出産をする者の心情および置かれた現状をも描き出している。“代理”する側の者にも、その行為に取り組む理由が存在する-。とにかく何が正しく、どうすればハッピーエンドなのか全くわかわない物語。遠いようで身近な問題“代理出産”を考えるには非常に良い一冊。エンターテイメント性も高く、最後の結末は驚かされる!えっ!!と思わされる結末なので、読み終えるまで面白さが続く。

チーム。

2010-12-27 12:33:22 | 書籍。


・チーム  堂場 瞬一(実業之日本社)

箱根駅伝出場を逃した大学のなかから、予選で好タイムを出した選手が選ばれる混成チーム「学連選抜」。究極のチームスポーツといわれる駅伝で、いわば“敗者の寄せ集め”の選抜メンバーは、何のために襷をつなぐのか。東京~箱根間往復217.9kmの勝負の行方は―。選手たちの葛藤と激走を描ききったスポーツ小説の金字塔。

関東地方のローカル駅伝大会-、箱根駅伝。
されど大学駅伝最高峰と謳われるこの大会が舞台。
一度は箱根路を走ることを諦めたランナー達が、“学連選抜”というシステムの下で走るチャンスを得る。しかし、彼らを待ち受けていたのは“苦悩”と“葛藤”。何の為に走るのか-、誰の為に走るのか-。

走っているランナーの息遣いが聞こえてくるかのような-、読み進めれば情景が容易に思い浮かぶ。思わずランナーの描写に“頑張れ!”と声を出してしまう。箱根駅伝には毎年、ドラマが生まれる。涙を誘う素晴らしい感動が-。この一冊には、その“感動”が上手く描かれており、ドキドキ、ハラハラ、感動場面が凝縮されている。

来年の箱根駅伝は何処が優勝するかな-?
この作品で1番になっているチームが優勝してくれたら嬉しいな。

ハブテトル ハブテトラン。

2010-12-15 22:52:05 | 書籍。


・ハブテトル ハブテトラン 中島 京子(ポプラ文庫)


物語の舞台は広島県福山市松永。
「ハブテトル」とは備後弁で「すねている」という意味。「ハブテトラン」はその否定形。東京の小学校で登校拒否状態にあった星野大輔は、母の故郷・広島県松永の小学校に2学期だけ通うことになった。破天荒な大人や友達と暮らす内に大輔は“自分自身が抱えているある問題”に決着をつけようと、四国へ向けて自転車で橋を渡る。物語の世界にスーッと入り込める滑らかな文章であるものの、全く淡泊感は無い。松永ゲタリンピックや、喫茶店ルナのプリントップ等、地元をかなり意識した舞台世界に思わず笑ってしまう点が沢山。東京出身の作者による膨大な広島県東部地区の情報収集が予想される。東京都から視た地方の“田舎町”描写。“荒い”ながら“温かさ”が溢れる世界で、大輔は自己を見つめ直し、大きく成長を成し遂げる。ココロ温まる児童小説。決して大人が読んでも飽きさせることは無いと思う。

テンペスト。

2010-12-14 18:19:04 | 書籍。

・テンペスト1~4巻  池上 永一(角川文庫)


美と教養と見栄と意地が溢れる珊瑚礁の五百年王国、琉球王朝。
舞台は19世紀の首里城、王宮内で繰り広げられる人間ドラマがスピード感溢れる文章によって描き出されている。池上永一氏の傑作になるのか等の難しいことはわからないが、単純な感想として、“非常に面白かった!”。1巻、2巻、3巻、4巻と、読み進めるのが楽しみであったし、以後の展開にワクワクした。また自分は、沖縄の歴史には滅法疎く、この作品を通じて、沖縄が辿ってきた歴史の一部を垣間見ることが出来、その点においても非常に興味を持って読み進めることが出来た。クライマックス後も爽快な気分になれたし、ココロから楽しめた作品。琉球ロマンが描かれたこのスピードコースターに乗ってみる価値は多いにあります!

宗教が往く。

2010-12-13 19:16:37 | 書籍。

・宗教が往く 松尾スズキ (文春文庫)


文章に特徴が有り、筆者の意思が登場する表現等の点に評価が高いのだろうけど、ボクのとっては逆に面倒で、読み応えがなく、途中で読むのを止めた。あまりのつまらなさに我慢が出来なくなってね…。面白いと思う人には素晴らしい作品なのであろうけど、ボクにとっては読み進める時間が惜しくなる作品だった。

無言の旅人。

2010-11-30 20:52:44 | 書籍。

・無言の旅人 仙川 環(幻冬舎文庫)

仙川 環が送り出した“尊厳死”を巡る慟哭の医療ミステリ!!

交通事故で意識不明になった三島耕一の自宅から尊厳死の要望書が見つかった。延命処置を一切拒否するという内容に、耕一との結婚を控える大木公子や家族は激しく動揺する。触れれば温かい身体を失ってまで、望む死を叶えるべきなのか?苦渋の選択を迫られた公子たちが決断を下した時、耕一の身に異変が―。胸をつく慟哭の医療ミステリ。

愛する人が尊厳死を望んでいたら-、

 あなたは、それを叶えられますか?


読み物として非常に面白かった。
構成も、ストーリーも良く出来ていると思う。
凡人が尊厳死について考える機会としては、とても有効な一冊。

人体工場。

2010-11-29 22:49:07 | 書籍。


・人体工場  仙川 環(PHP文芸文庫)

テーマは“治験”。
治験(ちけん)とは、医薬品もしくは医療機器の製造販売に関して、薬事法上の承認を得るために行われる臨床試験のことである。元々は「治療の臨床試験」の略であるという。【ウィキペディアより】

生きた人間の身体を利用して“製薬”を創り出す治験。
真柴徹は高額な報酬を得られる治験のアルバイトを経験する。その後、彼の身体にとある異常が発生-、そこからこの物語はスタートする。
“身体”を道具として利用し、末期患者の命を救う薬を創り出す、まさに“人体工場”。
『僕は人体工場の話を聞いたとき、素晴らしいアイディアだと思ったよ。誰かの為に、ほんのちょっと身体を貸してあげる。そうしたら、その誰かの命が救われる。まさにお互い様の精神じゃないか。…』
『仮に、人体工場が素晴らしい技術だったとしても、人を一人殺してしまうというのは、絶対におかしい。…』
『仮に一人の人が死んだとしても、何人もの人が助かるなら、いたしかたないということ。一人の命は地球より重いなんて綺麗事、世の中じゃ通用しない。…』
『…この人体工場っていう技術を葬り去りたくないと思う。それが、私の医者としての判断ね』…

医療系分野出身の筆者が世に送り出した考えさせられる一冊。
久しぶりに面白かったと感じたミステリー作品。

マボロシの鳥。

2010-11-16 20:09:17 | 書籍。
・マボロシの鳥  太田 光(新潮社)


かなり話題の本だったので、買ってみた。
うーん、良いか悪いか評価するのに難しい本。評価するのに奥が深い一冊だ。“伝える”の表現方法を広げ、おぉー!と感嘆するけども、面白かったか否かで言うと“あまり面白くなかった”という感想。難しい一冊だ。