今日も地球は周ってる

管理人の趣味や日々のことを徒然に。宇宙戦艦ヤマト好きーが現在進行形。時々、六神合体ゴッドマーズ。ALの右オタも兼務

promessa-約束-

2012-09-06 15:15:41 | GM_SS
訓練が終わったケンジは、外の空気を吸おうと、いつものように抜け道と化しているメディカルエリアを通り抜けようとしていた。
メディカルエリアの特別診察室の前に差し掛かったら、長椅子に一人ポツンと座っている少年がいた。

「(此処は普通、VIPか重症患者しか来ないし、ましてや民間人が…)」

ケンジは何故か少年が気になって仕方がなくなった。
年頃は7~8歳だろうか。
半袖半ズボンからスラリとした白い肌が覗いている。
髪は明るい茶色で、体格と相まって日本人離れしている感じだ。
ケンジは吸い寄せられるように少年に近づき

「隣、座ってもいいかい?」

と口にしていた。

「(おれは岬に行くつもりだったのに、どうしちまったんだ)」

ケンジの声に顔を上げた少年は「どうぞ」と、にっこり微笑んだ。
薄い茶色の琥珀のような瞳。明るい茶色の髪は癖毛らしくあちらこちらに跳ねている。

「君、1人なのかい?ここは防衛軍の人間と特別許可証を持った人しか入れない場所だよ。迷子だったら…」

ケンジの言葉は少年の言葉で塞がれた。

「心配してくださって有難うございます。さっき僕の検診が終わって今は両親が先生と
お話ししているんです」

「検診?君がか?」

普通、ここでは民間人の検診などすることは無い。
何か特別な少年なのか?ケンジは好奇心を抑えられなくなって、思わず質問してしまった。

「君は日本人かい?何歳なんだい?どこか具合がわるいのかい?」

タケルは少し真面目な顔して、服の中に入れていたIDカードを出した。
それは基地の長官室にまで入れるほどの上級カードだ。
そのカードにケンジはかなり驚いた。

「(何故こんな少年が…)」

戸惑っているケンジをよそに、少年は自己紹介を始めた。

「僕は明神タケルと言います。9歳です。毎月、ここで検診を受けてます。検診の後はいつも先生と両親が長い話しをするので、僕はいつもここで待っているんです」

つられてケンジも自己紹介をしてしまった。

「俺は飛鳥ケンジ。この4月に入隊したばかりだ」

何故自分まで自己紹介しなきゃならないんだと思いつつも、つい話してしまう。

「じゃあ、僕の方が基地歴が長いですね(笑)だって、赤ちゃんの時から毎月来てますから」

タケルがニッコリと微笑む。
それにしても。とケンジは思った。9歳の少年が、こんなに折り目正しい言葉を話すものなのか?

「タケル君、学校は?」

タケルは驚きもせず普通に答える。

「僕は学校には行っていません。オンラインシステムの教育プログラムで、今は大学準備過程を受けていて、来月にはMIT入学です」

ケンジは目が点になった。
自分達とて15歳までに大学過程をクリアしていたが、この少年は9歳でMITに入学すると言う。

「タケル君、君は将来何になりたいんだい?」

呆気に取られてケンジは自分でも間抜けな質問をしたと思った。
しかしタケルは気にすること無くケンジの質問に答えた。

「僕、小さい頃から宇宙が大好きなんです。不思議だけど懐かしい感じがするんです。だから、宇宙飛行士になりたいんです」

タケルの言葉を聞いたケンジは思わず

「タケル君、俺と一緒に宇宙に行こう。きっと普通の宇宙飛行士よりももっと遠い宇宙にいけるぞ」

その言葉にタケルの瞳が輝いた。

「じゃあ、約束ですよ飛鳥さん!僕のこと、覚えていて下さいね!」

ガチャリとドアが開いた。
学者風の壮年の男性と、もの静かそうな女性が出てきた。

「待たせたなタケル、早く帰ってゆっくりしよう。検査は疲れただろう?」
「大丈夫だよお父さん。飛鳥さんが僕と色々お話ししてくれたから待っている時間が短く感じたぐらいだよ」

母親と思われる女性がケンジに声を掛ける。

「息子がお邪魔をしてしまったようで申し訳ありません。今後は飛鳥さんにも他の方にも、お邪魔にならないよう、言い聞かせておきます」

謝られたケンジの方が焦った。最初に声を掛けたのは自分だったのだから。

「じゃあ、失礼します」と、親子3人はケンジの前から立ち去って行った。

途中でタケルが振り向き

「飛鳥さん、約束だよ!」

と言うのに、ケンジも

「待ってるぞ!」

と返した。

ふと気づくと、次のカリキュラムが始まる時間が迫っていて、ケンジは慌てて研修室へと駆け出した。

タケルのような少年が、将来、自分とチームを組めるといいな。
ケンジはまるで未来を見るようにそう願った。





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あとがき

最近、某さまのところでケンジとタケルという2人に注目した二次創作を拝見して、ちょっと触発されて書いたものです。

タケルは発見された状況が状況なだけに、恐らく身体検査をこまめに受けていたと思うんです。
どのように成長するかも判らないだけに、学校に安易に通わせられず、オンラインで特殊な教育プログラムを受けると同時に、その知能や精神状態を調べられてもいたのではないかと。

MITっていうのは、特に意味はありませんが、世界で一番頭が良さそうな大学だと思っているので書いただけです(笑)
MITもアメリカに行くわけではなく、やはりオンライン上での受講ということになります。
監視という名目の為に。

子供の頃から大人に囲まれ、同じ年頃の少年たちと遊ぶ機会の無かったタケルですから、言葉づかいが折り目正しくなるのも自然だろうな…って。
そうじゃないと、静子や明神博士と会話するのにあの丁寧な言葉使いって…てなりますもん。
地球防衛軍に入って、初めて同年代の人間と生活を共にするようになって、やっと少し砕けた感じが出てきたんだろうなあって思います。