(01)
例へば、
① 非無不欲爲聖明除弊事者=
① 非〈無{不[欲〔爲(聖明)除(弊事)〕]者}〉。
に於いて、
① 非〈 〉⇒〈 〉非
① 無{ }⇒{ }無
① 不[ ]⇒[ ]不
① 欲〔 〕⇒〔 〕欲
① 爲( )⇒( )爲
① 除( )⇒( )除
といふ「移動」を行ふと、
① 非〈無{不[欲〔爲(聖明)除(弊事)〕]者}〉⇒
① 〈{[〔(聖明)爲(弊事)除〕欲]不者}無〉非=
① 〈{[〔(聖明の)爲に(弊事を)除かんと〕欲せ]不る者}無きに〉非ず=
① 聡明な天子の爲に、弊害を除くことを望む者がゐない、といふわけではない。
然るに、
(02)
「管到」とは、ある語句がそのあとのどの漢字までかかっているか、という範囲のことである。白文の訓除では、それぞれの漢字の意味や品詞を自分で考え、その漢字が後ろのどこまでかかっているか、考えねばならない(加藤徹、白文攻略 弊事ひとり学び、2013年、143頁)。
(03)
漢語における語順は、国語と大きく違っているところがある。すなわち、その補足構造における語順は、国語とは全く反対である。しかし、訓除は、国語の語順に置きかえて除むことが、その大きな原則となっている。それでその補足構造によっている文も、返り点によって、国語としての語順が示されている(鈴木直治、中国語と弊事、1975年、296頁)。
従って、
(01)(02)(03)により、
(04)
① 非〈無{不[欲〔爲(聖明)除(弊事)〕]者}〉。
に於ける、
① 〈 { [ 〔 ( ) ( )〕] }〉
といふ『括弧』は、
① 非無不欲爲聖明除弊事者。
といふ『漢文』に於ける、『管到』を表してゐて、『管到』とは、すなはち、『補足構造』である。
然るに、
(05)
然るに、
(06)
① 九 八 六 五 二 一 四 三 七=
① 九〈八{六[五〔二(一)四(三)〕]七}〉。
に於いて、
① 九〈 〉⇒〈 〉九
① 八{ }⇒{ }八
① 六[ ]⇒[ ]六
① 五〔 〕⇒〔 〕五
① 二( )⇒( )一
① 四( )⇒( )四
といふ「移動」を行ふと、
① 九〈八{六[五〔二(一)四(三)〕]七}〉⇒
① 〈{[〔(一)二(三)四〕五]六七}八〉九=
① 一 二 三 四 五 六 七 八 九。
従って、
(04)(05)により、
(06)
① 非レ 無乙 不レ 欲下 爲二 聖人一 除中 弊事上 者甲
② 非人 無地 不丁 欲丙 爲二 聖明一 除乙 弊事甲 者天。
③ 非九 無八 不六 欲五 爲二 聖明一 除四 弊事三 者七。
に於ける、
① レ 乙 レ 下 二 一 中 上 甲
② 人 地 丁 丙 二 一 乙 甲 天
③ 九 八 六 五 二 一 四 三 七
①〈 { [ 〔 ( )( ) 〕 ] } 〉
といふ『返り点』と『括弧』は、
① 非無不欲爲聖明除弊事者。
といふ『漢文』に於ける、『管到』を表してゐて、『管到』とは、すなはち、『補足構造』である。
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