日本語の「は」と「が」について。

象は鼻が長い=∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
とりあえず「三上文法」を「批判」します。

(193)「今両虎共闘、其勢不倶生。」の「述語論理」(Ⅲ)。

2019-04-23 18:52:55 | 訓読・論理学

―「先ほどの記事(192)」の「続き」を書きます。―
従って、
(01)~(22)により、
(23)
① 今両虎共闘、其勢不倶生。
① 今両虎共に闘はば、其の勢ひ俱には生きず。
① いま、二頭の虎(e.g.藺相如と廉頗)が戦ひ合へば、両方とも死なないで済む。といふわけにいかない。
といふ「漢文訓読」は、
(ⅰ)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→~(生x& 生y)}
(ⅱ)∀x∀y{闘xy&生x&生y→(~虎x∨~虎y)}
(ⅲ)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→ (生x→~生y)&(生y→~生x)}
といふ「三通リの述語論理」に、対応する。
然るに、
(24)
① 今両虎共闘、其勢不倶生。
① 今両虎共に闘はば、其の勢ひ俱には生きず。
ではなく、
② 今両虎共闘、其勢倶不生。
② 今両虎共に闘はば、其の勢ひ俱に生きず。
といふ「漢文訓読」は、
(ⅳ)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→(~生x&~生y)}
といふ「述語論理」に、対応する。
然るに、
(25)
① 不倶生=~(生a& 生b)
② 倶不生=(~生a&~生b)
に於いて、
① を、「部分否定」と言ひ、
② を、「全部否定」と言ふ。
然るに、
(26)
「ド・モルガンの法則」により、
① 不倶生=~(生a& 生b)
とは、すなはち、
① 不倶生=(~生a∨~生b)
である。
然るに、
(21)により、
(27)
① 不倶生=(~生a∨~生b)=(aは生きないか、またはbは生きない。)
② 倶不生=(~生a&~生b)=(aは生きず、bも生きない。)
に於いて、
① と ② は、「矛盾」しない。
従って、
(25)(27)により、
(28)
①「部分否定」と、
②「全部否定」は、「矛盾」しない
然るに、
(29)
①  不倶生= ~(生a&生b)
の「否定」を、
③ ~不倶生=~~(生a&生b)
と書くならば、「二重否定(DN)」により、
③     倶生=  (生a&生b)
である。
従って、
(27)(29)により、
(30)
① 不倶生=(~生a∨~生b)=(aは生きないか、またはbは生きない。)
③   倶生=( 生a& 生b)=(aは生き、bも生きる。)
に於いて、
① と ③ は、「矛盾」する。
然るに、
31
(ⅳ)
1   (1)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→~(生x&生y)} A
1   (2)  ∀y{虎a&虎y&闘ay→~(生a&生y)} 1UE
1   (3)     虎a&虎b&闘ab→~(生a&生b)  2UE
 4  (4)                 生a&生b   A
 4  (5)              ~~(生a&生b)  4DN
14  (6)   ~(虎a&虎b&闘ab)          45MTT
14  (7)    ~虎a∨~虎b∨~闘ab         6ド・モルガンの法則
14  (8)   (~虎a∨~虎b)∨~闘ab        7結合法則
  9 (9)   (~虎a∨~虎b)             A
  9 (ア) ~~(~虎a∨~虎b)             9DN
  9 (イ) ~(~~虎a&~~虎b)            ア、ド・モルガンの法則
  9 (ウ)   ~(虎a&虎b)              イDN
  9 (エ)   ~(虎a&虎b)∨~闘ab         ウ∨I
   オ(オ)            ~闘ab         オ
   オ(カ)   ~(虎a&虎b)∨~闘ab         オ∨I  
14  (キ)   ~(虎a&虎b)∨~闘ab         89エオカ∨E 
14  (ク)     虎a&虎b →~闘ab         ク含意の定義
1   (ケ)     生a&生b→(虎a&虎b→~闘ab)  4クCP
1   (コ)  ∀y{生a&生y→(虎a&虎y→~闘ay)} ケUI
1   (サ)∀x∀y{生x&生y→(虎x&虎y→~闘xy)} コUI
従って、
(31)により、
(32)
(1)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→~(生x&生y)} といふ「仮定」により、
(サ)∀x∀y{生x&生y→(虎x&虎y→~闘xy)} といふ『結論』を得る。
従って、
(32)により、
(33)
(1)すべてのxとすべてのyについて、xが虎であり、yも虎であり、xとyが闘へば、xが生き、yも生きる。といふことはない。 といふ「仮定」により、
(サ)すべてのxとすべてのyについて、xが生きて、 yも生きて、 xが虎であり、yも虎であらならば、xとyは、闘はない。  といふ『結論』を得る。
(〃)すべてのxとすべてのyについて、xが死なず、 yも死なず、 xが虎であり、yも虎であるならば、xとyは、闘はない。  といふ『結論』を得る。
然るに、
(34)
(a)
今両虎共闘、其勢不俱生。
吾所以為此者、先国家之急而後私讎也。
廉頗聞之、肉袒負荊、至門謝罪、遂為刎頸之交。
(b)
今両虎共闘、其勢不(俱生)。
吾所⁻以〔為(此)〕者、先(国家之急)而後(私讎)也。
廉頗聞(之)、肉袒負(荊)、至(門)謝(罪)、遂為(刎頸之交)。
(c)
今両虎共闘、其の勢ひ(俱には生き)不。
吾の〔(此を)為す〕所⁻以の者は、(国家の急を)先にして(私讎を)後にすればなり。
廉頗(之を)聞き、肉袒して(荊を)負ひ、(門に)至(罪り)謝し、遂に(刎頸の交はりを)為す。
(d)
今、我々(二頭の虎に譬へる)が争ったならば、成り行きとして、二人の内の、少なくとも一人が、死ななければならない。
私がこれ(廉将軍からの逃げ隠れ)をするの理由は、国家を、危難から救ふことを先にして、個人的な恨みを後回しにするからである。
廉将軍はこの話を聞いて、裸の上半身にムチを背負ひ、門に来て謝り、ついに、刎頸の友となった〔十八史略、刎頸之交〕。
従って、
(31)~(34)により、
(35)
(1)∀x∀y{虎x&虎y&闘xy→~(生x&生y)} といふ「仮定」、すなはち、
(〃)すべてのxとすべてのyについて、xが虎であり、yも虎であり、xとyが闘へば、xが生き、yも生きる。といふことはない。 といふ「仮定」により、
(サ)∀x∀y{生x&生y→(虎x&虎y→~闘xy)} といふ『結論』を、すなはち、
(〃)すべてのxとすべてのyについて、xが死なず、 yも死なず、 xが虎であり、yも虎であるならば、xとyは、闘はない。  といふ『結論』を得る。
従って、
(27)(30)(31)(35)により、
(37)
① 不倶生=(~生a∨~生b)=(aは生きないか、またはbは生きない。)
② 倶不生=(~生a&~生b)=(aは生きず、bも生きない。)
③   倶生=( 生a& 生b)=(aは生き、bも生きる。)
に於いて、たしかに、
① の「否定」は、② ではなく、
① の「否定」は、③ である。


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