みっつのねがい/ピレット・ラウド:再話・絵 まえざわ あきえ・訳/福音館書店/2012年
エストニアの再話。
とにかく楽しい絵で、ナイフやホーク、机、ポットからケーキ、にんじんなどが、あちこちに散らばっていて、それを見ているだけでも楽しくなります。ただ遠くからだと見えにくいところもありそうです。
なまけものの夫婦、働かないのでとても貧乏。毎日ケンカばかり。
料理しろというだんなに、材料がないのにどうして料理するのさと、おくさんが言い返します。
するとそこへあらわれたのは、一人のおじいさん。
「いつもケンカばかりしないで、もっと楽しく暮らせるよう、わしが力をかしてやろう。いまから三日後に、みっつのねがいをかなえてあげよう」というとどこかえいってしまいます。
三日後というのがミソです。
二人は願い事を考え始めますが、空想(妄想?)が広がるばかリ。
「おちちを しぼると、あまーい クリームが でてくるウシ」
「さかながどんどんつれる つりざお。さおにかかった さかなは、かってに フライパンに とびこんで、おいしい ごちそうに」
などなど。(このあたりの絵も秀逸)
三日目の朝。願いごとはきまりません。何か食べれば、元気が出て、すばらしい 願いごとをおもいつくかもしれないとキャベツでスープを作り始めますが、なかにいれるものがないので、「あーあ、みじめなスープ。おいしい ソーセージが あればいいのに」とおくさんがいうと、どすんと大きなソーセージがあらわれます。
だんなさんが「願いごとの一つを、こんなものにつかったのか! そんなに ソーセージが すきなら おまえの 鼻にでも くっつけておけ」と叫ぶと、大きな大きなソーセージが、おくさんの鼻にくっついてしまいます。
おくさんは、途方にくれますが、願い事は三つ。もう一つありますから・・・・。
結末は予想できますが、ふたりが仲良くなるラストには安心感があります。西洋版 捕らぬ狸の皮算用ですが、この手の昔話にも、いろんなパターンがあります。
エストニアは、EUそしてNATOの加盟国、通貨はユーロ、人口は134万人。面積は九州の1.23倍。
3世紀以降、デンマーク、ドイツ騎士団、スウェーデン、ロシア帝国などの支配を経て、第一次大戦後1918年ロシア帝国より独立。第二次大戦中1940年ソビエト連邦が占領。
翌1941年独ソ戦でナチス・ドイツが占領、1944年ソビエト連邦が再占領し併合。1991年同連邦より独立を回復とありました。
みっつのねがいごと/マーゴット・ツェマック・文絵 小風さち・訳/岩波の子どもの本/2003年
「みっつのねがい」を語ったとき、類似の話があると教えられ読んでみました。同じパターンですが、鼻にソーセージがつくのがきこりです。
木の下に閉じこめられた小鬼を助けたことで、三つの願い事がかなうことになります。あれこれ話し合うのも同じ。「ばんめしに 鍋いっぱいのソーセージがほしい」といったことから騒動がはじまります。二人合意で、「鼻からソーセージを とってください」という三つ目の願いが ほほえましい。上の絵本では 大きな一本のソーセージですが、岩波版は、ソーセージがつながっています。
小鬼が、「みっつだけだからな。いざ さらば!」と あるのは、文の流れからいうと ちょっと 唐突です。不思議な力を持つ小鬼が、倒れた木の下から逃げられないのは、子どもたちの突っ込みがあってもおかしくありません。
文とあるので創作の位置づけになりそうですが、文と再話の区別があいまいです。