どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

おにの神さん

2020年07月04日 | 絵本(日本)

     おにの神さん/岩城範枝・文 三瀬夏之介・ 絵/福音館書店/こどものとも2019年11月号

 サブは妹のクニとばあちゃんの三人暮らし。

 村では、天神様のおまつりに おそなえする野菜作りにいそがしい。でも、おばあちゃんの小さな畑の野菜は 実がようそだっていませんでした。

 祭りで吹く笛のけいこの帰り道、小川のほとりで サブがみつけたのは小さな丸太。どろだらけの丸太をあらうと、顔と目が。

 ばあちゃんは「こわがらんでもええ。これは おにの神さんや」というて、手をあわせ、じっとおがんでいました。

 「すがたは おにやが、ひとをたすける 神さんや。火事やら、はやり病やらひとをまもってくれはる。そやから おにでも、神さんなんや。昔は 村の道にも おにの神さんがいて、村をみまもってはった」

 翌朝、ばあちゃんにいわれて、サブとクニは 丸太を担いで 畑にむかいました。丸太はどんどん重くなり、いつのまにか手足が はえていました。二人は畑に丸太のおにをたて、ねがいごとを となえました。

 サブはそれから毎日 丸太のおにを おがんでいましたが、七日目の夕方、丸太のおにが「おい、こぞう みずをくれ」としゃべったので、あわてて、水をそなえました。

 次の日、水をそなえ おがんでいると「たのみごとをするときは、なにか うまいものでも もってこい。はらがへって なにもできん」といわれ、ばあちゃんの たいたイモをそなえ「野菜が よう そだつように、どうか 畑を おまもりください」と、お願いしました。

 次の日は「まもるためには 杖がいる」といわれ、サブは、一日がかりで木の枝から杖を作り、おにに もたせました。

 その晩、ねつかれないサブが畑に行ってみると、月のしたに おにの 姿がみえました。

 おには、畑をにらみ、畑におしよせているばけもののようなものに たちむかっていました。おにが ぶんぶんと つえをふりまわすと ぐおぉ ぐおぉ ぐわぁ ぐわぁ とばけものの ぶきみな 声が ひびきました。

 おにが 「うおーっ」と さけび 杖を うちおろすと どどど どーん 地鳴りのような ひびきと ともに、ぱっと ばけものたちが きえました。おにが 畑をまもってくれたのです。

 おには ひさしぶりに 都を かけめぐりたくなったと、サブをおぶり、都をかけめぐりました。

 いつのまにかねむってしまったサブが 目を覚まし、畑に行ってみると、つやつやと やさいがみのっていました。

 おにの神さんは、杖を握って サブたちを じっと みまもっていました。

 

 重厚な絵で、派手さはありませんが、味わい深いものがあります。ただ子どもたちは、どううけとめるでしょうか。

 「むかしから きょうの みやこには おれたち(おに)がいて、わざわいを ふせいできた。おれたちは おまえたちに おがまれて、ちからを もつ」というのは、昔の人々の素朴な信仰です。