しあわせの石のスープ/ジョン・J・ミュース:作・絵 三木卓・訳/フレーベル館/2005年初版
石のスープといえば、マーシャ・ブラウンの「せかいいちおいしいスープ」(こみや ゆう・訳/岩波書店/2010年)を思い出します。
「せかいいちおいしいスープ」では、三人の兵士がでてきますが、この絵本では、三人のお坊さんです。
お坊さんたちが村の門に着くと、村人は家に隠れてしまい、でむかえてくれるひとはだれもいません。
この村では洪水にあったり、戦争でひどい目にあったりして、よそからきたひとなんか信用できなくなっていました。畑仕事をする人、商人、学者、お医者、大工など、いろんな人がいたのですが、たがいに知らんぷりでした。
お坊さんたちが、一軒一軒まわっても返事がありません。
お坊さんたちは、石のスープをつくることを、おしえてやらなければと、木の枝をあつめ、火をおこし、小さな鍋をおきます。
すると、勇気ある女の子がお坊さんに声をかけます。
お坊さんから、まるいすべすべした石が三つ いるといわれ、女の子が石をもってくると、石は小さな お鍋に入れられます。
それから大きなお鍋が用意され、煙があがると、あちこちの窓があき、石のスープが、どんなものかしりたくなって、村人がひとり、またひとりと外にでてきました。
それからは、塩と胡椒、人参、たまねぎ、きのこ、うどん、さやえんどう、キャベツが、次々に鍋に入れられていきます。
スープが出来上がると、ちょうちんのあかりのもとで、大きなテーブルを村人全員で囲みます。みんなで一緒にテーブルを囲んだのは、いったいいつのことっだか、だれもおもいだせませんでした。
これまでたがいに交流がなかった村人たちですが、スープを協力してつくることで、これまでの垣根が取り払われました。わかちあうことが、心を豊かにすることだったのです。
ちょっと、残念なのは、最初に「人を幸せにするものはなんでしょうか」と若いお坊さんが、一番賢いぼうさんに たずねるところがでてくること、そしてお坊さんがでてくるので、やや説教くさいところ。どううけとめるかは、読者に投げかけた方が余韻が残るのではないでしょうか。
万里の長城が描かれていますが、作者はアメリカの方です。