こじきとまほうのさいふ/世界の悲しい話/山主敏子・編/偕成社/1972年初版
お金に目がくらんだお百姓の話
貧乏なお百姓が働いても働いても暮らしが楽にならないので、神さまにお金をめぐんでくださいとお願いすると、神さまは財布をくださる。
この財布には1枚の銀貨が。ところがこの財布は銀貨を外に出すと、財布の中には、また一枚の銀貨が。
いくらでも銀貨が手に入るが、実はこの銀貨を使うためには、財布をすててからでないと、財布も銀貨も魚になってしまうというもの。
お百姓は次々と銀貨をとりだし、皮袋いっぱいにする。
ところが、一切れのパンもなくなっても、財布をすてようとせず、隣の家からパンを一切れかしてもらう。
銀貨の入った皮袋がどんどんたまっていても、何度も隣の家にパンをかりに行くので、そのうち、ことわられ、ついには町に行って家々から食べ物をもらい、飢えをしのぐことに。
そうなっても財布をすてるのが惜しく、ついには息をひきとることに。
食べるものがなくなっても、財布をすてるのが惜しいというあたりに、人間の心理がうまく反映している。
いくらお金があっても、もっと大事なことがあるよというのはやさしいが・・・。