観察 Observation

研究室メンバーによる自然についてのエッセー

小さな発見

2013-11-22 22:26:10 | 13.11
4年 朝倉源希
 
 先日、研究室で作業をしていた時のことである。一匹の”アリ”が机の上を歩いていた。一体こんなところまでどうやってきたのだろうかとそのアリを眺めていると、ある異変に気付いた。歩き方がおかしいのだ。少し歩いてはすぐに止まり、また素早く動いたと思えば今後はピョンピョンと跳ねたのである。まるでハエトリグモのようなその動きを見て、私は今までアリだと思っていた生き物が「アリグモ(メス)」であったことに気が付いた。
 改めてそのアリグモを観察してみると腹部がアリに比べて少し萎んでいるように見えるものの、体の色や大きさはほとんど変わらない。しかも前脚を頭の上にあげてアリの触覚のように見立てているため、クモの仲間でありながらまるで昆虫のように足が6本あるように見える。顔はよく見てみるとやはりクモの顔をしていたが、目の色と体の色が同じなためほとんどわからず、全体的に非常によく似た形をしている。このように形態をここまでの完成度に変化させていることにとても興味を抱いた。
 なぜここまで自分の体をアリの姿に似せているのか。仲間だと思って近づいたアリを捕食するため、天敵から身を守るため、ハエなどの飛んで逃げる虫を捕食者であるクモに比べて動きの遅いアリだと思わせることで油断させ、捕食率を上げるためなどいろいろと考えてみたが、結局は後の二つの意味合いが強いのではないかと考えた。理由として、アリは視覚よりも嗅覚が発達しているのに、アリをだますためにここまで形態を似せているところに疑問を感じたからである。おそらく花の一部に擬態し、花にやって来たチョウなどを捕食するカマキリと同じような理由で形態を変化させたのだろう。
 小さな発見ではあったが、初めにただ机に虫が歩いている程度にしか思っていなかったらこのような出会いはなかっただろう。今回のような何気ない普段の生活の中で出会う小さな発見をこれからも大事にしていきたい。


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