みかん日記

省農薬ミカン園の様子や農薬ゼミの活動内容を伝えます。

夏調査

2016-08-09 17:14:24 | 告知

先日、7/29-31にかけて和歌山の省農薬ミカン園へ夏調査へ行ってきました。今回は総勢13人で、ゼミ員12人に加え日頃からお付き合いのある社会人のエイミーさんをお迎えしました。初参加は4月に来れなかった一回生1人だけでした。

いつも通り、20:00に市民研を出発。途中岸和田で夕食をとって23:00頃、和歌山は海南市下津町、悟の家に到着。今回は仲田さんが換気をしてくださっていたのでカビは去年ほどひどくはなく、人数も多かったので協力してあっさり掃除は終了。お酒とジュースを飲みながら翌日の予定を語らいつつ初日はおやすみなさい。

農薬ゼミの朝は石田先生の淹れた珈琲から始まります。本日の朝ごはんは青椒肉絲。早起きな一回生も率先的に野菜と格闘。朝から豪華なお食事ができました。



皿洗い、布団干しを終えたらミカン園へいざ出立。見ると、まず気づくのは下草の枯れ。仲田さんに話を訊くと、腰を痛めてしまったので除草剤を撒いたとのこと。斜面のきついミカン園での草刈機での除草は大変な肉体労働です。農薬ゼミの省農薬ミカンの理念「つくる人も食べる人も安心、安全」は、ただ単に農薬を減らせばいいのではく、生産者に無理のない持続的な農法をする、という意味もあります。なので、いかに農薬を活用していくかは臨機応変に対応していかなければなりませんね。今回は改めてそう感じました。

今年から病害虫調査ノートが2016-2020版と新しいものに変わるため、まずは調査園全体のミカンの木の確認を行いました。仲田さんは樹の状態に応じて伐採や幼木への切り替えを行っていらっしゃるので、どの樹が残っていてどの樹が無く、どの樹が若い樹なのか確かめる必要があったのです。3人一組となって四班に分かれ、調査園を手分けして見て回りました。樹の状態を見るだけなので簡単です。ただ、「幼木」の基準をどのように定めるのか、先達の例も参考にして吟味しなければという意見が出ました。また、調査中にゴマダラカミキリをちょくちょく見かけました。ゴマダラカミキリはミカンの樹をかじって害を及ぼすので、見つけたら可哀想ですが殺します。



調査園の木の確認を終え、休憩を取っていると仲田さんが他の畑から原付で駆けつけてくれました。確認した調査園の木の状況をもとに、今年からの調査木を選定する作業を菅野さんが行っている間に、仲田さんからひとつレクチャーを受けることになりました。
それは、この時期ミカン農家さんが行う【摘果】という作業です。摘果とは、多すぎたり局在している果実を間引くこと。摘果をすることで養分がミカンひとつあたりによく行き渡り、大きく美味しいミカンとなりますし、来年の樹全体の健康にもプラスの影響をします。
今年は去年と同じくらいミカンの数が多く、まだ摘果しきれていないということだったので、少し手伝わせてもらいました。



仲田さんにポイントを教わります。光の当たらない樹の内側についているミカンは全摘果。密集しすぎていたり、あまりに小さい実も摘果します。仲田さんはみるみるうちに実を摘みとっていきますが、初心者の僕らはどれをとっていいのか分からず四苦八苦しました。



そのあと、高台のキウイ園へ。キウイは市場に出回るくらいに大きくなっていましたが、出荷は3月。収穫してからそれまで寝かせておくことで食べられるようになるのです。現時点でどんな味がするのか気になった皆は遠慮もせずキウイをもぎ取って食べていましたが、本当に良かったのかなぁ・・・。熟成していないキウイは渋く美味しくないようです。摘果した青いミカンは美味しかったですが。







そうこうしているうちに菅野さんが調査木を選定し終えました。ここからは、今回のメイン活動「病害虫夏調査」です。
今度は3、3、4人三班に分かれて調査開始。50本の調査木を一本ずつ見て回り、カイガラムシなどの害虫、そうか病などの病気の発生状況をグレードで評価していきます。今年は春マシン油を散布しませんでしたが、それほどヤノネカイガラムシの発生は見られませんでした。ただ、ヤノネカイガラムシが見られた木には比較的多く発生している印象がありました。結果については精査して秋の News Letter にて発表します。
ちなみに僕と和泉さんは、新たに決まった調査木の写真を一本一本撮影していました。これもホームページなど、何かしらの形で報告できればと思っています。



さて、お昼はというと、素麺をいただきました。本当は流しそうめんを楽しみたかったのですが、ミカン園付近に植わっているのは真竹で、流しそうめんをするには太さが足りないということで断念しました。付け合せは唐揚げ。この唐揚げ、本当に本当に美味しかったんですよ。



また、デザートに沖縄出身のエイミーさんが持ってきてくださったマンゴーをいただきました!生マンゴーなんて滅多に食べれないよね。



腹ごしらえと昼寝をした後は畑へ。腰丈ほどもある雑草によってサツマイモが埋もれてしまっていたので、鎌などを駆使して除草作業をしました。サツマイモは元気はありませんでしたが、なんとか生き残っており、秋の収穫を期待したいです。





さて、今回は特別に晩御飯に下津のミカン農家の方をお呼びし、お話を伺うことになっていました。なので、畑から帰ってくるとすぐに食事の準備に取り掛かりました。メインは夏野菜のカレー。畑で採れたジャガイモでジャガバタもつくりました。



仲田さんが呼んでくださったお二人は気さくな方で、ミカン栽培の話から農薬の話、下津の昔と現在と未来の話までたくさんのお話を聴くことができました。詳細は News Letter にて報告しますのでお楽しみに。

夜は花火。子供の頃から散々やってきて、そろそろ飽きてもおかしくないはずなのに、なんだかんだ盛り上がってしまうのは不思議です。



仲田さんと農家の方にお礼とお別れをして、二日目も幕を閉じました。

三日目の朝も皆さんお早く、石田先生の珈琲を飲んでさっそく朝食の支度。今朝は目玉焼きにウィンナー、人参のしりしり、カレースープと至ってシンプル。
朝食の支度をしている間に、何人かは残ったジャガイモを畑に植えにいきました。また秋の収穫のときに食べられたら嬉しいな。でも連作障害が心配です。



ご飯を食べ終わったら掃除をして帰洛です。今回は大きなトラブルもなく、有意義な調査でした。



皆、お疲れです。



帰ってから、後期のゼミと News Letter の打ち合わせをして解散。お疲れ様でした。
後期のゼミは9/30から市民研にて開始です。

ふじい

7月のゼミ

2016-08-03 23:42:21 | 告知

お久しぶりです。ブログの更新がひと月ばかり遅れてしまいました。試験が一段落したので、書けていなかった7月のゼミについて触れましょう。



7/8 映画『遺伝子組換えルーレット』を見て沸いた疑問について調べたことを共有しようの会

前回の7/1は菅野さんが書いてくださったように、映画『遺伝子組換えルーレット』を観ました。今回はその上で疑問に思ったこと、気になったことを調べてミニプレゼンをしました。今年から参加している一回生2人と中学生諸君にも発表してもらいました。

・遺伝子組換え作物の取り扱いについて定めたカルタヘナ議定書の解説
・実際に遺伝子組換えにより開発され実用化された青いバラの紹介
・生産者の視点から見た、遺伝子組換え作物の有用性についての見解
NPO 国際生命科学研究機構『遺伝子組換え食品を理解する II 』による『遺伝子組換えルーレット』の主張、データ利用に対する反駁の紹介
・『遺伝子組換えルーレット』著者 Jeffrey M. Smith 氏の経歴と研究データを利用するにあたってのリテラシーがあるかどうかの考察
・遺伝子組換え技術をどう捉えているか、京大医学部教授へのインタビュー
・モンサント社の経歴、モンサント社の株主たちの実態
厚労省『遺伝子組換え食品Q&A』の紹介
滋賀県『遺伝子組換え作物栽培指針検討委員会 論点整理』の紹介

と内容は多岐にわたり、それぞれの興味がわかり面白いです。なかでも、京大教授へインタビューを行った一回生の行動力には感服。見習わなくてはと思いました。
ひとつひとつの内容については、ここでは触れられませんが、自分の考えでは得られなかった視点を取り込むことができ、有意義な時間ではあったと思います。今後、農薬ゼミとしてどう上映会と関わっていくか、話し合っていこうと思います。

また、今回、議論中の声が小さいと指摘を受けました。改善、対策を次回以降実行していくことにしました。



7/15 農薬の科学&夏調査打ち合わせ

最初に議論中の発言は大きな声でしよう、ということを確認しました。

今回のゼミ担当は私ふじいでした。前回の担当回で JA の防除暦を解説した際、どのように農薬が作用するのか皆興味があるということだったので、『農薬の科学 ―生物制御と植物保護―』(桑野栄一、首藤義博、田村廣人ほか)を参考に、農薬の具体的な作用機構の解説を試みました。大きく分けて殺虫剤、殺菌剤、除草剤について解説したいと思っていましたが、話したい内容はてんこ盛りなうえ、受験生物を勉強したことのない人には基本的な内容から説明する必要があると感じたため、今回は内容を殺虫剤に絞りました。

まず初めはネオニコチノイドなどの神経系作用性薬剤について。高校の生物の教科書を用いて神経の仕組みの勉強してから、それぞれの薬剤が神経のどのシステムに作用するのか、違いを学びました。さらに、なぜ哺乳類には害が少ないのに昆虫には強く作用するのかという「選択性」の理由にも触れました。
エネルギー代謝阻害については難しすぎるうえ時間もなかったので概要だけ説明し、最後に脱皮ホルモン活性物質などの昆虫生育制御剤について説明して終わりました。

受験生物を履修していない一回生にはうまく伝えられたか自信がありませんでしたが、面白いと言ってもらえたのでひとまず成功だったかと思います。殺菌剤、除草剤についても夏季休暇でも利用してまとめておこうかな。また、「大きな声で」をクリアできたことも良かったことのひとつです。

後半は夏調査の打ち合わせについて、菅野さん主導で説明がありました。今年から病害虫調査ノートが新しいものに代わり、2016-2020版となります。それに伴い、新たに調査木の抽出を行う必要もありますし、ほかに何か変えるべきことはないかと議論をしました。

終わってみれば9時で、時間がかかりすぎたと反省しました。一回生には自宅生もいるのでこれは考えものです。時間をうまく操ってプレゼン進行ができるように、無駄時間が発生しないように、気をつけなければと思います。


7/22は試験期間中なので休みでした。次のブログで7/29-31の夏調査について書きます。

ふじい