リレーコラム的な流れで定期的に活動内容がアップされている本ブログ。ついに私のところにもお鉢が回ってきました。新入生メンバーも増え、がぜん活気づいている流れに私が水を差すわけにはいけません。とまぁ、一歩退いた立ち位置の私は、学生ではなく一生産者、一農業者です。以前からちょくちょくゼミに参加させてもらっています。自己研鑚という名目で(良く言えば)。
今回は、農薬ゼミ出身で現在、京大で生態学の分野の教鞭をとる傍ら、東南アジアの熱帯雨林の昆虫生態学を研究するプロジェクトに参加されている市岡孝朗先生に「ミカン園から熱帯雨林へ:アリとカイガラムシの生態学」というテーマで講演していただきました。私自身、極力農薬を使わない方法で野菜を栽培していますので、作物に害を及ぼす虫との付き合いは宿命と言っても過言ではありません。実際の農業現場に応用できる知識なりが得られれば、という気持ちで話を聞かせてもらいました。
感想を先に述べると、「甘かった」です。何が?私の昆虫に対する、といいますか、生態系のミクロマクロ含めた営みに対する認識が、です。私なんかは、立場上どうしても虫を見る時も、その個体が有益か害悪か、といった二元論的な狭い視野に終始してしまいがちです。しかし、その道のプロフェッショナルともいうべき市岡先生の見ている昆虫の世界は、私が想像できる二つ三つ先にありました。
講演タイトルの通り、先生が学生時代に取り組んでおられたミカン園での研究から近年参加されておられるマレーシアはサラワクの熱帯雨林における研究の成果まで、短い時間のなかで大変内容の濃い話で、改めてミカン園と共に歩んできた農薬ゼミの歴史の深さとそこに積み上げられてきた膨大なデータを想像するのに十分過ぎるほどでした。また、熱帯雨林での研究に関しては、スケールが大きすぎて何かしらのヒントを自分の畑に還元しようと賢しい考えをもっていたことが恥ずかしくなるくらい。一つ確信できたことは、野菜というものがヒトの手によって過保護すぎるほどに育てられた自然界における変異種だということ。
アリとカイガラムシが食料の供給など何かしら互いに依存するギブアンドテイクの関係、栄養共生を軸に話が進められましたが、その多様性と奥深さ、熱帯の生態系においては解明されていないことだらけだという事実。ディスカッションにおいても、次から次に問題提起がされ、嬉々としてそれらの課題について言及される先生の姿は、研究者として目指すべき姿として映りました。少なくとも、私自身、何かに魅せられたのか、普段忌み嫌うはずの虫の写真などを食い入るように凝視していました。まぁ、開口一番「アリすげぇ。」などと稚拙極まりない感想を口にしていたのも事実ですが。
熱帯雨林の生態系の多様さとリンクして、教育現場における問題点や課題にも話題は及びました。多種多様な分野の人と交流し、議論し、意見を交わすことで何か新しいことをつくる創造力は身に付くのではないでしょうか。発想力豊かで興味深い市岡先生の話を聴きながら、私が学生のころから考えていたことをふと思い出しました。いろんな学部の人と真剣に議論できる農薬ゼミ。チャンスです。創造的で自由な生き方という豊かさを発見する。
最後に、熱帯雨林において、多種多様な生物が生存をかけてせめぎあい、時にはだましあう姿を人間の世界にたとえてしまいそうになりますが、そもそもあれだけ神秘的とも呼べる世界を人間の基準に当てはめようとすることがある種の傲慢なのかもしれませんね。
(農業者 かんばら)
今回は、農薬ゼミ出身で現在、京大で生態学の分野の教鞭をとる傍ら、東南アジアの熱帯雨林の昆虫生態学を研究するプロジェクトに参加されている市岡孝朗先生に「ミカン園から熱帯雨林へ:アリとカイガラムシの生態学」というテーマで講演していただきました。私自身、極力農薬を使わない方法で野菜を栽培していますので、作物に害を及ぼす虫との付き合いは宿命と言っても過言ではありません。実際の農業現場に応用できる知識なりが得られれば、という気持ちで話を聞かせてもらいました。
感想を先に述べると、「甘かった」です。何が?私の昆虫に対する、といいますか、生態系のミクロマクロ含めた営みに対する認識が、です。私なんかは、立場上どうしても虫を見る時も、その個体が有益か害悪か、といった二元論的な狭い視野に終始してしまいがちです。しかし、その道のプロフェッショナルともいうべき市岡先生の見ている昆虫の世界は、私が想像できる二つ三つ先にありました。
講演タイトルの通り、先生が学生時代に取り組んでおられたミカン園での研究から近年参加されておられるマレーシアはサラワクの熱帯雨林における研究の成果まで、短い時間のなかで大変内容の濃い話で、改めてミカン園と共に歩んできた農薬ゼミの歴史の深さとそこに積み上げられてきた膨大なデータを想像するのに十分過ぎるほどでした。また、熱帯雨林での研究に関しては、スケールが大きすぎて何かしらのヒントを自分の畑に還元しようと賢しい考えをもっていたことが恥ずかしくなるくらい。一つ確信できたことは、野菜というものがヒトの手によって過保護すぎるほどに育てられた自然界における変異種だということ。
アリとカイガラムシが食料の供給など何かしら互いに依存するギブアンドテイクの関係、栄養共生を軸に話が進められましたが、その多様性と奥深さ、熱帯の生態系においては解明されていないことだらけだという事実。ディスカッションにおいても、次から次に問題提起がされ、嬉々としてそれらの課題について言及される先生の姿は、研究者として目指すべき姿として映りました。少なくとも、私自身、何かに魅せられたのか、普段忌み嫌うはずの虫の写真などを食い入るように凝視していました。まぁ、開口一番「アリすげぇ。」などと稚拙極まりない感想を口にしていたのも事実ですが。
熱帯雨林の生態系の多様さとリンクして、教育現場における問題点や課題にも話題は及びました。多種多様な分野の人と交流し、議論し、意見を交わすことで何か新しいことをつくる創造力は身に付くのではないでしょうか。発想力豊かで興味深い市岡先生の話を聴きながら、私が学生のころから考えていたことをふと思い出しました。いろんな学部の人と真剣に議論できる農薬ゼミ。チャンスです。創造的で自由な生き方という豊かさを発見する。
最後に、熱帯雨林において、多種多様な生物が生存をかけてせめぎあい、時にはだましあう姿を人間の世界にたとえてしまいそうになりますが、そもそもあれだけ神秘的とも呼べる世界を人間の基準に当てはめようとすることがある種の傲慢なのかもしれませんね。
(農業者 かんばら)