村岡知事の知事としての最初の上関・公有水面問題の言及は、2月25日の記者会見です。
山口県庁ホームページ 知事記者会見録から
日時 平成26年(2014年)2月25日(火曜日) 13時00分~13時30分 場所 県庁2階 記者会見室
http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a11000/interview/20140225.html
該当箇所をコピーします。赤文字の強調は、引用者です。
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中国新聞
中国新聞です。このたびは当選おめでとうございます。
選挙中、選挙前の時にもお伺いしましたが、あらためて上関原発の公有水面埋立の件についてお尋ねしますが、従来おっしゃってらっしゃった方針、その方針は今もお変わりない、そういう方針で公有水面埋立については認められるかというのをお伺いします。
知事
今現在は中国電力からの回答を待っている状態にありますので、その回答を受けてそれを精査し、法的な関係も整理をして公有水面埋立法上の判断をしていくということになると思います。
中国新聞
これまで、県の方が補足説明を求めるという形で、回答期限を延ばしてきたという経緯があるんですが、今度この4月に締切期限が来ますけれども、その回答内容次第ではさらに補足説明を求めるという可能性もあるんでしょうか。
知事
そこは、回答内容を踏まえて考えていくということになると思います。
中国新聞
逆にそこの回答だけを見て即判断するかもしれないし、そこはもう。
知事
そこは回答内容を踏まえて検討し、判断するということですね。
中国新聞
エネルギー政策、上関原発の新設については、これは国策だということで、国の方で議論してほしいという申し出をされていたと思いますけれども、そこについてはどうでしょうか。
知事
やはり、国のエネルギー政策というのは、国民生活の安定とか向上、それから国民経済の維持・発展のためにとても重要なものであります。国として、国策としてどのようにするかという判断が必要な事柄だと思っておりますので、そこについての考え方の変更はありません。
中国新聞
弊社の方が有権者の出口調査をさせていただいたときには、県内の投票された方の7割ぐらいの方が上関原発の建設計画については撤回あるいは凍結という回答をされてらっしゃいます。そういう意味で建設推進を求める声よりも、建設に対して慎重な見方をされる方もかなりいらっしゃると思うんですけど、その辺りの有権者の声、県民の声に対してはどういうふうに向き合っていかれますか。
知事
やはり、できるだけ原発に依存しないエネルギー構造に持っていくべきというのは、私自身もこの3.11を経験した日本人としては当然のことであろうと思います。
県として、県民の皆さま方の安全・安心が第一ということも同時に考えております。他方で、エネルギー政策というのは、まず国がどのようにするかということを責任を持って判断してもらうということであると考えております。
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毎日新聞
毎日新聞です。ご当選おめでとうございます。上関の話、少し戻させていただいて聞くんですけど、二井元知事は、いったん埋立免許は失効させるという法的整理を出されましたが、村岡知事はこの法的整理は継承されるお考えでしょうか。
知事
二井知事がどういう場面でどういうお考えで言われたのかというのは十分承知していないので、それそのものに対するコメントは難しいと思っておりますけれども、先ほど申しましたように、今、中国電力からの、手続き的には、回答を待っている状態でありますので、それを踏まえて判断するということに尽きると考えています。
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3月議会中の新聞記事 赤文字の強調は、引用者です。
毎日新聞 2014年03月12日 地方版
上関原発建設計画:埋め立て免許、二井元知事の法的整理 村岡知事「引き継ぐ」 /山口
http://mainichi.jp/area/yamaguchi/news/20140312ddlk35040272000c.html
中国電力の上関原発計画について村岡嗣政知事は11日、「福島原発事故後の新たな安全基準に基づく土地利用計画が不透明であれば、公有水面埋立法上の要件である『正当な事由』がなく、埋め立て免許の延長を認めることはできない」とする二井関成元知事の法的整理を引き継ぐ考えを初めて示した。
県議会終了後、報道陣の質問に答えた。村岡知事は埋め立て免許の審査について▽土地利用の確定が必要▽公有水面埋立法に基づき適正に審査する??の2点が「法的整理」との認識を示した。
藤部秀則副知事はこの日の県議会で「二井元知事の答弁は、延長申請がなされる前の時点で、福島原発事故に鑑み示された認識。申請は適法なもので、原発の安全性と埋め立て免許は法体系を別にしている」などと述べ、山本繁太郎前知事の答弁を踏襲した。一方、二井元知事の「法的整理」の内容については明確な言及を避けた。【尾村洋介】
参考に
直近の山口県職員の対応をアップしておきます。
【動画】県職員の対応3月26日
3・8上関原発を建てさせない全県民集会実行委員会事務局の申し入れに際して
http://www.ustream.tv/recorded/45363503
以上から論点の整理を行っておきます。
1,経過の変転
二井・元知事は、「公有水面埋立は、申請があっても不許可にする」と言っています。
このことは、議会答弁で示した通り(討議資料1)ですが、さらに退任前の記者会見でも、次のように強調しています。
曖昧さの入り込む余地のない、強い表現です。
知事記者会見録
平成24年(2012年)7月31日(火曜日)
http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cms/a11000/interview/120731.html
日本経済新聞
選挙全般のご講評はともかくとしまして、知事が後継とおっしゃっていた山本候補が当選ということで、二井知事のこれまでの路線が評価されたという見方が一つあると思います。上関原発については凍結、オスプレイについては知事のおっしゃっていることを重要な判断だということで継承するとおっしゃっていますが、山本候補が引き継ぐ課題について、この点は、という点を改めてお示しいただければと思います。
知事
やはり、国の政策に絡んだ問題については、私もいろいろ考えた末にそれぞれの方向性についての結論を出してきておりますから、上関原発の問題にしても、オスプレイの問題にしても、私の考え方を引き継いでやっていただきたいと願っております。
それ以外のことについては、私のこれまで16年間の基盤は継承すると言われておりますから、継承しながら、私のやってきたことについて、この辺は見直した方がいいということがあれば、山本カラーをしっかりと出して考え方を変えていただいて結構ですし、山本さんらしい県づくりをしっかりと進めてもらえれば私としては大変ありがたいと思っています。
山本前知事が、「上関は凍結」「脱原発依存は当然」などと公約を掲げながら、公約そのものも、二井元知事の判断をも、捨て去ってしまったことはすでに見た通りです。
今回、県の当局に忘れ去られ、消されていた二井・元知事の判断が脚光を浴びたのは、3月県議会で副知事が「村岡知事は、二井元知事の法的整理を引き継ぐ」と発言し、村岡知事も曖昧さを残しながら記者に同様に語って、それが記事になったからです。(毎日新聞3月12日)
2,3・11東京電力福島第一原発の事故をどうとらえるか?
村岡知事は、就任直後の記者会見で、記者の質問に答えて、
二井知事がどういう場面でどういうお考えで言われたのかというのは十分承知していないので、それそのものに対するコメントは難しいと思っておりますけれども、先ほど申しましたように、今、中国電力からの、手続き的には、回答を待っている状態でありますので、それを踏まえて判断するということに尽きると考えています。
と言っています。この言い方は、不誠実ではないでしょうか。
いやしくも、ひとつの県の行政を預かる県知事という政治家が、従来の自ら許可してしてきた公有水面埋立の延長に際して、「次は申請があっても不許可にする」と判断した。そのことは、従来、ほぼ全部の任期中、「国の政策に忠実に」原発推進政策をとってきたことを大きく転換し、上関凍結・計画中止という道に舵を切ることであります。県民には歓迎されても、一部保守系推進議員からは抵抗があったことは、「討議資料1」の故・伊藤議員の質問からもわかります。決断の重さを軽視しています。
二井・元知事の決断の根拠は、3・11福島の原発事故です。
「討議資料2」に掲載した毎日新聞がシャープに分析して紹介しているように、二井・元知事はこの決断の時間を2011年3・11から、2012年6月議会までかけて行っています。これを「特殊事情」として軽く扱うことはできません。
村岡知事は、
やはり、できるだけ原発に依存しないエネルギー構造に持っていくべきというのは、私自身もこの3.11を経験した日本人としては当然のことであろうと思います。
県として、県民の皆さま方の安全・安心が第一ということも同時に考えております。他方で、エネルギー政策というのは、まず国がどのようにするかということを責任を持って判断してもらうということであると考えております。
と言っていますが、本当に3・11のことを考えているのか。言葉だけなぞっているのではないか、そんな危惧をもたざるをえません。もし、祝島をはじめ県民が上関原発に反対せず工事が行われて完成していたら、巨大地震のたびに、原発事故の恐怖に怯えなければならない。南海トラフの想定に絶えず上関原発を加えなければならない。福島の現状を知ったとき、どれほど上関祝島のみなさんの30年余のたたかいに多くの県民が感謝したことでしょう。
3,行政による既成事実の強制と県民の暮らしと声の無視。
この間の申入れの度に県職員は、「法律に則って審議判断する」「原子力の安全性の審査と公有水面埋立の許認可は、法体系を異にする」と絶えず繰り返して来ました。そうして、自らは法律に忠実なように装い、しかし、中国電力の延長申請に対しては、県の標準行政処理の規則ばかりか、法の定める期限も延長して、しかも前代未聞の質問の繰り返しと1年延長を行ってきました。ここにおいて、県民の存在がまったく無視されていることは、中電と県とのやりとりの中身が「黒塗り回答」として開示されていないことに明らかです。
二井・元知事の法的整理・判断、上関凍結、公有水面埋立て延長不許可の判断が、どのようにして曲解され消されてきたのか。
その方法は、「中電からの延長申請が行われる前」と「延長申請が行われたあと」では、状況が違うという論点すり替えです。
二井・元知事は、「申請があっても不許可にする」と言っている。
この間の県事務方は、「適法な申請があったから審査する」と言ってずるずるとごまかしている。
申請前後になにか状況変化があったのか。3・11原発事故の恐怖は和らぐようなことが起こったか、福島の事故はなかったことにしてもいいのか。仮に、原発を県内につくった場合、本当に県民の安全安心は担保できるのか。
このことについては、何一つ触れず、「申請があった」「受け取った」という既成事実を重ねて、問題の核心を隠し続けているのが実態です。
論点というよりも断罪点という言葉のほうがふさわしいかも知れませんが、県当局事務方の思考法なのか、山本前知事の編み出したものなのか、更には、国・地方をを問わず、行政官僚の手法なのか、由来は詳細にはわかりませんが、行政事務・法的根拠に則したかにみえる手法で県民の利益を損なうやり口と言わざるをえません。
一体、政治をどちらを向いて行うのか。
村岡知事の決断に注目したいと考えます。
二井・元知事が任期最後に到達した結論を、最初のスタートにして正しく継承されることを強く望みます。(了)