たいへん遅ればせながら、
3月21日に行われた『上関原発を建てさせない山口県民大集会』の、動画が次々とアップされていたので、お知らせします。
共同代表の那須正幹さんのスピーチです。
続いて、弁護士の田川章次さんスピーチです。
引き続き、祝島の上関原発を建てさせない祝島島民の会代表の清水敏保さん、スラップ裁判で訴えられているカヤック隊の岡田和樹さん、長島の自然を守る会の高島美登里さん、祝島市場の山戸孝さんのご挨拶と続きます。
また、3月21日の『上関原発を建てさせない山口県民大集会』での、武藤類子さんのお話は、福島から遠く離れた私たちには、とても勉強になるものでした。
前回に動画を紹介しましたが、動画では聞き逃したことがあるとお考えのみなさんに、動画を文字起こししました。
動画はこちらです。
《武藤類子さんスピーチ 文字起こし》
皆さん、おはようございます。「上関原発を建てさせない山口県民大集会」にお集まりくださいまして、本当にありがとうございます。
私は、福島県の三春町というところから参りました、武藤類子と申します。
祝島の皆さんを初めとして、上関原発建設に反対し、本当に長い間、厳しい戦いをしてこられた皆さんを心から尊敬いたします。そして感謝したいと思います。祝島の皆さん、ありがとうございます。(拍手)そして山口県民の皆さん、県外から支援されている皆さん、本当にありがとうございます。(拍手)
私は1986年のチェルノブイリ原発事故が起きたときから、原発の反対運動を細々としてまいりましたけれども、福島原発が事故を起こしたことにより、日本中の原発がとまると思いました。しかし、たった4年、たった4年の間に、また原発の再稼働、原発新設、そして原発の輸出までもがもくろまれようとしています。このありさまを呆然とした思いでながめています。
福島原発事故は、いまだに何一つ解決されていません。きょうは、原発事故から4年たった福島の現状を皆さんにお聞きいただきたいと思います。
事故を起こした福島原発からは、今も1時間に1,000万ベクレルの放射性物質が空気中に放出されています。そして、海にも「京」という天文学的な数値の放射性物質が流されてきました。
原発のサイト内では、1日約7,000人の作業員の方々が過酷な被曝労働をしています。もともと、原発労働は多重な下請け構造の中にありましたが、事故後にさらに多重化し、賃金搾取や劣悪な環境の中での労働が強いられています。原発作業員は被曝限度を超えると働けなくなるため、ベテランの作業員がいなくなり、原発労働の未経験者がたくさんサイト内で働いています。そのために、先月、相次いで2件の死亡事故が起きてしまいました。また、労働力の確保のために、被曝線量限度の引き上げも今もくろまれようとしています。
そして、汚染水の問題が深刻さを増しています。
汚染水対策のおくれから、高濃度の汚染水が海に漏れ出し、海を汚し続けています。
安倍首相がオリンピック誘致のときに、「福島の汚染水は完全にコントロールされている。港湾内でブロックされている。」と言いましたけれども、それは真っ赤なうそです。毎日、冷却するために原子炉に注がれる水や建屋に流れ込む地下水は、タンクに収納し切れず、海に流れ出ています。また、そのタンクからも地面への汚染水の漏洩事故がありました。
つい先月には、2号機の屋根にたまった放射性物質が、雨に混じって排水路を通って外洋に流れ出ていたことが発覚しました。東京電力はそのことを知りながら、1年近くも公表してはいませんでした。規制委員会もその事実を知りながら、きちんと指導しませんでした。東電と国の隠蔽と無責任体質は、事故の前も事故の後も変わっていません。
昨年、その排水路からの汚染水が流れ出たころに、いわき市の海水浴場が解禁となり、何も知らない子供たちが海で泳いでいました。
2011年の終わりごろ、原発事故の収束宣言が出され、国は「除染・帰還・復興」という路線に入りました。福島県内のあちこちで除染が始まりましたが、除染廃棄物が人々の生活圏に山積みにされています。あるいは、校庭や庭や公園に埋められています。その上に土をかぶせ、人々は暮らしています。
除染労働もまた深刻な被曝労働です。15歳の少年が日当3,000円で労働させられていたという事件もありました。莫大な資金が投入される除染の利権は、原発でもうけた大手企業にあります。しかし、一度の除染では、十分に線量の下がらない場所がたくさんあります。一度下がった線量も雨が降ると、また放射性物質が流れ込み、落ち葉などがたまるところは再び線量が上がってしまいます。
帰還政策は、まだ十分に線量が下がらない地区に人々を帰していきます。国は、除染の目標を「年間1ミリシーベルト以下を目指す」と言いましたけれども、いつの間にか「20ミリシーベルト以下は安全だ」という論理にすりかえられてしまいました。
環境省は、「場の線量」から「人の線量へ」などと言い出し、必要ならば積算線量計を貸し出すので自分で管理をしなさい、ということを言っています。
避難区域が解除されると、小・中学校もまた元の場所に戻っていきます。学校は除染されていますが、通学路には線量の高いところもあります。まだ避難地に家のある子供たちは、バスに乗って40分もかけて元の学校に通っています。
子供たちの学校給食は、事故直後、県内産の食材は使わないところも多かったのですけれども、今はほとんど地産地消に戻っています。学校には確かに食品測定器が置かれていますが、子供たちの食の安全を考えると、放射性物質の一切入っていないものを食べさせるべきだと思います。
学校では、今、外での体育や運動会、プールが当たり前のように行われています。マラソン大会や駅伝なども行われています。
2011年の4月6日、福島県内ではどの学校でも入学式が行われました。たくさんの子供たちが避難先から戻ってきました。この国の子供に対する人権感覚のなさを痛切に感じています。
昨年からことしにかけて、帰還困難区域を通る高速道路や国道6号線が開通しました。そこでは、車中でも毎時4~7マイクロシーベルトの地域をたくさんの車が行き交っています。子供たちが通ってはいけないという決まりはありません。
「つながる想い、つながる笑顔」という標語が、車の窓から顔を出す子供たちの笑顔の写真とともに、ポスターとなって県内に貼られています。
8,000ベクレル以上の農林関係の放射性廃棄物の減容化施設が建設されています。もともと焼却炉は、放射性物質が100ベクレル以下のものしか焼却できないことになっていました。しかし、原発事故後、急に8,000ベクレルまでは普通の焼却場で燃やしていいという決まりになりました。
しかし、8,000ベクレル以上の農林関係の廃棄物には、特別の焼却炉が今つくられています。県内に20個つくられていますが、これらの焼却炉は、1基500億円や600億円もする巨大なものです。しかし、燃やすべきものを燃やし終えたら解体してしまうという仮設の焼却炉です。解体された後は巨大な放射性のごみとなるでしょう。
さらに、仮設であることから、環境影響評価という、環境にどんな影響があるかというアセスメントはしなくてもいい、ということになっています。 放射性ゴミの焼却は本当に安全なのか、灰に凝縮された高濃度の放射性物質をどのように管理していくのか、周辺住民への説明は尽くされているのかなど、とても問題の多い施設だと思っています。
当初は、燃やすべきごみを想定して焼却炉の数や規模を決めたはずなのに、後のアンケートにより、燃やすべきごみが最初の想定の7分の1だったことがわかりました。焼却炉の受注は三菱、日立、石川島播磨など、やはり原発でもうけた大手企業です。原発の前も後も利権構造は変わりません。避難区域が解除されて帰る場所にも焼却炉がつくられる例や、地権者の承諾もなしに建設されている例もあります。しかし、それに対し、小さいながらも各地で反対運動が起きています。
現在、大熊町や双葉町に建設中の除染廃棄物の中間貯蔵施設は、住民への十分な説明もないままに推し進められようとしています。30年後にこの廃棄物は県外移設されると言われていますけれども、福島県で出た放射性の廃棄物をほかの土地に持っていくということを私はとても耐えられない思いでいます。引き受けるところもないと思っています。
最も心配されるのは子供たちの健康被害です。福島県県民健康調査による甲状腺検査では、原発事故当時18歳以下の約37万人のうち、30万人が検査を受けました。ことしの2月12日の発表では、甲状腺がんと確定診断された子供が86人、がんの疑いが24人でした。そのうち1人は良性でした。現在、本格検査と言われている二巡目の検査が行われています。これまでで約10万人が検査を受けました。新たに1人が甲状腺がん、7人が甲状腺がんの疑いとされています。3月24日にはまた新たな検査結果が発表されます。
福島県県民健康調査は、今回の原発事故と甲状腺がんとの因果関係は考えにくいと言っていますが、果たしてそうなのでしょうか。疫学の研究者の中には、これは多発であるという意見もあります。子供の健康に関しては予防原則に立ち、治療を伴う詳細な健康調査と被曝低減策が必要だと思います。
今、全国の心ある皆さんが福島の子供たちの保養を受け入れてくださっています。けれども、それは全ての子供たちには行き渡らない現状です。2012年に「子ども・被災者支援法」が制定されましたが、予算もつかず、具体的な方策は立てられていません。結果的にはこの支援法は骨抜きにされてしまい、制度としての子供たちの保養は行われていないというのが現状です。
しかも、福島県内では帰還政策のもとで放射能安全キャンペーンが行われているために、放射能に対する不安を声に出しにくい状況があります。例えば放射能教育という名のもとに、自然界にも放射能はある、飛行機に乗っても被曝をする、放射能は医学にも寄与しているなどという安全プロパガンダが、あちらこちらで子供たちを対象に行われています。
私の住む三春町には、人々に対して放射能教育を行うという「環境創造センター」なるものが建設されています。そこには、JAEA、そして国立環境研究所が運営母体としてあります。そして、IAEAもそこに事務局を置くことになっています。
福島をじっと見ていると、日本という国家のあり方が見えてきます。原発事故前には自然豊かで美しかった私のふるさと福島は、現在、まるで戦場のように感じます。機関銃やミサイルはありませんが、人々の健康や命がじわじわと脅かされていきます。国の政策や方向に不安や疑問を持つ人の口は封じられていきます。地域の人々の関係性はバラバラにされていきます。今、福島で起きていることは、やがて日本のどこでも起こり得ることだと思います。
福島原発事故が私たちから奪うものは生きる尊厳そのものです。私は、原発事故の責任がきちんと問われていないことがその一つの原因だと思います。
私たちは2012年に福島原発告訴団を結成しました。国と東電の刑事責任を問うために、東京電力の幹部、それから国の経産省の役人、そして御用学者と言われる人たちを告訴しました。しかし、2013年9月、東京地検により、この告訴は被疑者全員が不起訴となりました。
私たちは直ちに、東電の6人に被疑者を絞って検察審査会というところに申し立てをしました。翌2014年7月、検察審査会は、東電トップ3名を起訴相当と議決しました。検察審査会というのは、一般市民11人が選ばれて、検察が出した処分が本当に妥当かどうかということを審査する機関です。その検察審査会が3名を起訴相当としましたが、東京地検は再び再捜査のもとに、ことし1月22日に再び3名を不起訴としました。事件は現在、また検察審査会に戻って審議されています。検察審査会において再び起訴相当の議決が出れば、強制起訴となり、ようやく刑事裁判が開かれます。
東京電力は、大津波が来ること、大きな地震が来ることを予見していました。しかし、その事実を隠し、対策を怠ってきたのです。その結果、このような甚大な被害を人々に及ぼしながら、誰一人今も責任は問われていません。私たちの告訴の目的は、二度と悲劇を繰り返さないために、なぜこんな事故が起きてしまったのかを明らかにすることにあります。ぜひ告訴の行方にご注目ください。
また、吉田調書を初めとした政府事故調の調書の開示によって、津波が来ることを予見していながら、その事実を隠し、対策を怠ってきた具体的な人物が特定されてきました。私たちは、ことし1月から新たに東電と旧保安院の国の官僚を新告訴しています。そして、現在、全国の皆様にも、告訴人となり、ともに責任追及をしてくださることを呼びかけています。きょうも、マルシェのP5、6のブースに新しい告訴の委任状セットというものを置いてあります。今、下で掲げている茶色い封筒です。どうかこの告訴セットをお持ちになって、皆さんも告訴人の一人になって、ともに国や東電の責任を追及してください。よろしくお願いいたします。(拍手)
それから、署名のお願いをいたします。
一つは、「原発事故被害者の住宅・健康・保養支援の立法化と完全賠償の実現を求める請願署名」です。先ほど申し上げた、「子ども・被災者支援法」が骨抜きにされ、形骸化されてしまっている中で、非常に困っている被害者たちの住宅問題、それから子供たちの健康問題、保養支援の立法化が急がれます。それについての署名をどうぞよろしくお願いいたします。
それからもう一つ、原発のある双葉町に掲げられている「原子力 明るい未来のエネルギー」という原発のPR看板をご存じでしょうか。これは、現在、双葉町から埼玉県に避難されている大沼勇治さんという方が、小学生のときに応募して採用された標語です。この看板が老朽化を理由に撤去されようとしています。しかし、大沼さんは、原発を推進してきた負の遺産として現場に残すべきだと考え、双葉町長や町議会に向けての請願署名を集めています。これもマルシェのブースに置いてあります。ぜひともご協力をお願いいたします。
それから、映画の宣伝を2つさせてください。私たち原発告訴団の弁護士・河合弘之がつくりました『日本と原発』という映画があります。これは、原発がどのようにつくられてきたか、どんな問題があるか、そして、どうしてなくしていかなければならないかということが大変わかりやすく描かれている映画です。ぜひこの映画を上映してください。そして、ごらんになってください。
それからもう一つ、鎌仲ひとみ監督の『小さき声のカノン』という映画があります。この映画も、子供たちの健康被害や保養の必要性について非常に重要な提言をしています。ぜひこちらもごらんください。
実は、この中でスモルニコワさんというベラルーシのお医者さんが出てくるんですけれども、その方の声の吹きかえを私がやっています。初めての経験で、とても上ずったり、一人なまっているのが私の声なんです。聞いていただけるとわかると思うんですけれども。ぜひともこの映画もごらんになってください。
さて、今回の原発事故は、若い人や子供たち、そして未来世代の人々に膨大な放射性のごみと負の遺産を残しました。さらに、人類だけでなく、たくさんのほかの生き物たちの命も巻き込みました。私たちは地球に生きる生き物として、この事故について深く考えていかなければならないと思います。川内原発を初めとする原発の再稼働への動きや上関原発計画を推進していく動きは、福島原発事故の悲劇をあざ笑う行為です。
私たちは、どうしたら原発をなくし、あらゆる命が尊重され、一人一人が大切にされる世界をつくっていけるのかを考えていかなければならないと思います。
それには、「自分の頭で考え、自分にできる行動を一人一人がしていく」ことだと思います。福島原発事故を経験した私たちと上関原発建設計画に反対する皆さんとが手をつなぎ、力を合わせ、原発のない新しい世界をつくっていきましょう。
きょうの集会が新しいつながりの一歩となりますように。皆さん、長い間聞いてくださいまして、どうもありがとうございました。(拍手)
《4月「いのち・未来 うべ」市民学習会のお知らせ》
●4月17日(金)
テーマ:上関原発用地埋立禁止住民訴訟について
講師:小畑太作さん(訴訟団代表、緑橋教会牧師)
いずれも、時間は19時~20時半、参加費は100円、場所は宇部市役所裏の緑橋教会2階です。
ご興味のある方は、どなたでも参加できますので、どうぞご参加ください。
その前にある脱原発を訴える『金曜ウォーク』(宇部市役所前18時集合。サイレントアピール。)にも、
ご都合がよろしければ、ご参加ください。
問合せ:080-6331-0960(安藤)
※お詫び
弁護士の田川さんの動画が抜けていたので、追加しました。
たいへん失礼しました。
(み)