アルジェリア人質事件はとても痛ましい結末となった。安否確認ができないまま不安な日々を過ごしていた家族の一縷の望みも断ち切られ、「日揮」の日本人10名、外国人7名の合計17名のうち、日本人7名と外国人3名の死亡が確認されたという。
アルジェリアのプラント建設現場では12カ国の国籍の人々が働いていたそうだが、今回は特に日本人が標的にされたようにも思える。日揮は中東や北アフリカの土地で30年以上もいろいろな案件を手掛けてきており、日揮の社員にとってアルジェリアは彼らの主戦場だったという。社員にとってアルジェリアは勝手知ったる土地で、そこで働くことのリスクも十分に承知しているという。
日本では考えられないことであるが、世界の至るところで活躍する日本企業の社員は、日々、こうした危険と背中合わせで、それこそ毎日が命がけであろう。これが企業戦士の宿命かもしれないが、それでも人命よりプラントを守ることを優先したアルジェリア政府の人道無視のやり方は非難されるべきである。が、「人命は地球より重い」「人命第一」いう考え方が通用するのは日本だけで、外国では通用しないらしい。
先日テレビの情報番組で「人命優先」について論議されたとき、ソフトブレーン創業者の宋文洲が、「日本は優しい国だから…」と言った。が、それが賛美の言葉と素直に受け取ることはできなかった。
こんなときにこんな話は不謹慎だが、私にはアルジェリアのカスバ、モロッコのカサブランカなどの地名が妙に懐かく思えるのである。と言っても、実際に行ったことがあるわけではなく、映画や歌などからその地名が鮮明に残っているというだけである。この人質事件が起きたときもすぐに “ここは地の果てアルジェリア”というフレーズが頭に浮かんできた。これは1955年、芸術プロの映画『深夜の女』の主題歌として作られた「カスバの女」という歌の中に出てくる。私はなぜか、この「カスバの女」という歌が好きで、若かりし頃、カラオケに行くといつも歌っていたものである。
なぜ、アルジェリアが地の果てなのか。歌詞にパリやモロッコが出てくるが、アルジェリアもモロッコもフランスの植民地だったことから、パリとの対比において島流し的な意味での地の果てなのだろうという。独立した現在も、天然ガスや石油が豊富な資源国でありながら、若者の失業率80%以上という貧困国である。
ネット検索のパクリだが、「カスバの女」は日本で作られた歌で、アルジェリア独立戦争の闘いが激しかった時、パリからの流亡の果てにアルジェのカスバの酒場に売られた女性が華やかだった若い時代のパリを望郷しつつ、やはりフランス軍に雇われて派遣されてきたアルジェリア民族解放戦線(FNL)討伐部隊の外国人雇い兵(当時は「外人部隊」と呼んだ)との結ばれぬ恋のやるせなさを歌ったものである。
しかし、当時は遠い北アフリカの独立戦争に関心を抱く人は少なく、いつの間にか忘れ去られたが、それが12年後の1967年、当時の有名歌手が競うように番組で歌って大ブレークしたという。ちょうど時代は、ベトナム反戦運動が、日本はじめ先進国で燃え盛っていた時期で、まさに時代がこの歌を求めたのだろうといわれている。
映画と言えば、1930年製作のアメリカ映画『モロッコ』。主演はゲイリー・クーパー、マレーネ・ディートリッヒ。小学6年の頃から洋画ばかり見ていた私だが、1950年以前の映画は、当然、名画の再上映を見たものである。この地名がロマンチックに聞こえた。
次に、1937年制作のフランス映画『望郷』。主演はジャン・ギャバン、ガルリエル・ガブリオ。ジャン・ギャバンは有名だが、ガルリエル・ガブリオという俳優はよく知らない。
そして、1943年制作のアメリカ映画『カサブランカ』。主演はハンフリー・ボガート、イングリット・バーグマン。第二次大戦下、フランス領モロッコのカサブランカで、運命的に再会した男女の別れをドラマティックに描き、アカデミー賞作品賞を受賞した恋愛映画の古典的名作である。
この時代には、アルジェリアやモロッコなどフランスの植民地を舞台にした映画がたくさんあったようである。映画がどれもロマンチックな悲恋物語だから、地名にまでそんなメージを抱いたのであろう。が、現在のアルジェリアやモロッコはイスラム原理主義勢力によるテロが吹き荒れ、略奪や誘拐が横行する恐ろしい国となっており、昔の面影はないようである。今回の事件で、平和な日本に生きていることの幸せを感謝している。
娘が20年程前、アルジェリアの石油掘削プロジェクトに入り現地にいき、帰ってくるまで身の細る思いをしました。
退職も考えましたが、インドネシアに移動しほっとした事もありました。懐かしい思い出・・と思っていたらとんでもない。まだまだ危険の連続ですね。
娘さんをよく外国に出されましたね。
20年前といえば、やはり危険なところに変わりなく、ご心配されたでしょうね。
かつて日本赤軍が横行していたときも、お金をやって仲間を釈放し、ご丁寧に外国へ送り出したことがありますね。
凶悪犯でも「人命第一」で射殺することはめったにありません。
今回の事件で海外へ進出する企業は、本当に命を賭けてゆかねばなりませんが、こんな恐ろしい国に志願してゆく社員がいるでしょうかね。