ペットの存在は人間以上？・・・

　今やペットはわが子同然、いや、それ以上の存在になっている。特にお犬さまは別格で、その待遇は人間以上。知れば知るほど、なんともはやうらやましい限りである。 

　夫婦が離婚することになった場合、婚姻中に飼っていたペットをどちらが引き取るかについて揉める「ペット紛争」。夫婦間の未成年者の親権問題をもじって「ペットの親権問題」などと呼ばれたりするという。ペットは法律上、財産のひとつとして扱われ、離婚後にペットを引き取る者を決めるのは、親権問題ではなく財産分与の範疇となるという。
　財産分与のペットの“親権”については、今後の住居環境や経済事情等によっては、引き取りを主張しても認められないこともある。しかし、双方ともにこれらの条件を満たしている場合は、未成年の子供の親権さながらの紛争が繰り広げられることもあるらしい。さらに、引き取りを諦めた者も、話し合いで、離婚後もペットと「面会」する約束を取り付けたりすることもあるそうで、わが子ならいざ知らず、これほどのペットへの執着心は、私にはとうてい理解できない。 

　また昨今は、高齢化するペットの最期も、今や人間同様に深刻に考えられているという。医療の向上やドッグフードの改良で、犬の寿命は１０年前より倍になっているという。最近では各地に、老犬ホームや介護施設、デイサービスなどがオープンし、病気や高齢化で飼えなくなった犬を預ける飼い主が増えているという。費用は小型犬で１ヶ月１０万円・大型犬で２０万円（食費・消耗品費・カメラ使用代・治療費など含む）、いやはや恐れ入った。
　高額な費用を取るだけに至れり尽くせりで、寝たきりになった犬のため床には柔らかい布を引いて、室内はエアコンで適温に保たれているという。また、犬の様子を頻繁に知らせてくれて、最期までの様子がメールで逐一届いて感激したという飼い主も少なくないとか。
　裕福な飼い主のおかげで、こうした施設で大事にされ最期を看取られてゆくお犬さまがうらやましい。それに引きかえ人間さまの老後は、と考えると複雑な気持ちになる。まあ、それもわが子の心根次第だろうが…。
　しかし、こうした業者の中には悪質な業者もいるそうで、宇都宮市では２００９年、飼い主に「死ぬまで面倒を見る」と言って有料でペットを預かったＮＰＯ法人が、自治体に引き取らせていた問題が発覚したという。ペットは物を言わないからどうにでもなる、今の世の中ならそう考える悪い奴がいても不思議ではない。
　昔なら飼えなくなったペットは自治体で殺処分してもらっていたが、昨今は自治体が拒否できるようになったとかで、ペットの扱いに飼い主も頭を痛めているだろう。が、今では獣医師が認めれば安楽死も容易に実行可能らしい。そこが人間さまとペットの違うところだろう。日本でも人間の安楽死を法律で容認するかについて議論されてはいるらしいが、なかなか進みそうにはない。

　裕福な家に飼われている犬は、大金を払って死ぬまで手厚く世話してくれる施設に入れてもらえるし、お墓を作って丁重に埋葬、年忌法要までする飼い主もいるとか。そうでなくても医師のもとで安楽死させてもらえるから、今では行き倒れで死ぬペットなど見たことも聞いたこともない。だが、人間さまの世界では、行き倒れで亡くなった身元不明者をいう「行旅死亡人」が多くいると聞く。親を捨てる子供もめずらしくない。ほんと、お犬さまがうらやましいよ。
　時代が変わればこうもなるのか。こうした人間並みのお犬さまには人権ならぬ“犬権”の存在を感じる。まるで徳川５代将軍綱吉の『生類憐みの令』のお犬さまである。