平成30年1月19日 iJAMP
総務省 30自治体で「関係人口」事業=地域活性化でモデル公募
総務省は2018年度、「関係人口」を活用した地域活性化を目指すモデル事業について、合計30ほどの自治体を選定する。
地域の出身者やふるさと納税の寄付者といった既に特定の地域と関わりがある人に加え、「どこかの地域で支援活動をしたい」という意欲を持つ都市部の人材も巻き込む。
4~5月ごろ公募で自治体を選定し、夏ごろから事業を展開。
同省は必要経費の補助などで支援する。
関係人口は、長期的に住む「定住人口」と、旅行などで訪れた「交流人口」の中間にある概念。総務省は、人口が減少する地域で、外部から継続的に関わりを持ちながら、過疎や高齢化といった課題に取り組む人材を増やす必要があるとみている。
18年度は、既に関係人口となっている人として、
①地域出身者や勤務経験者
②ふるさと納税の寄付者―に対象を絞り、それぞれ10ほどの自治体でモデル事業を行う。
①については、対象者のリストを作った上で、まちづくりに関する意見を募ったり、景観維持活動や伝統行事への参加を呼び掛けたりすることを想定している。
②についても、寄付者の登録名簿を作った上で、寄付金を活用した事業の実施状況を伝えるほか、現地見学会を開くなどの取り組みを求める。
先行事例としては、鳥取県日野町や
香川県三木町が展開している「ふるさと住民票制度」があるという。
一方、モデル事業では、特定地域との関わりはないものの、今後どこかの地域で活動したいと考えている都市部人材も活用する。
こうした人材の受け入れを希望する約10自治体を選定。
各自治体で4、5人程度を引き受ける。
モデル地域から比較的近い大都市で、地域が抱える課題などに関する講座を複数回開くほか、現地滞在しながら課題解決に向けた活動を行う。
先行事例では、島根県が展開している「しまコトアカデミー」がある。
総務省 関係人口」活動基盤整備へ=モデル事業で自治体公募
2017/9/21
総務省は、出身者や勤務経験者といった現在居住はしていないものの、地域と継続的な関わりがある「関係人口」を地域活性化に生かすため、受け入れ体制づくりを後押しする。
「地域との関わり創出事業」として、複数自治体をモデル指定して取り組む方針だ。
2018年度予算概算要求に必要経費2億4000万円を盛り込んだ。
関係人口は、長期的に住む「定住人口」と、旅行などで訪れた「交流人口」の中間に位置付けられる概念。
地域出身者のほか、仕事や勉強のため一定期間住んだことのある人らが該当する。
総務省は、こうした人が週末にもっと「里帰り」して、地域のイベントやボランティア活動に参加するよう促す考えだ。
関係人口による地域活動を推進するには、例えば該当者の登録名簿を作って、イベントやボランティア活動などに関する情報を随時周知するといった取り組みが考えられ、これを行う組織や人材が必要になる。
モデル事業を希望する自治体には、組織の整備や人材育成の計画に加え、関係人口と協力して取り組む地域の課題も併せて提案書としてまとめ、応募してもらう方針だ。
組織の整備については、新たに立ち上げたり、既存のNPOなどを活用したりすることが想定される。
モデル事業の実施団体数など詳細はこれから詰めるが、最終的には、事業を通じて得られたノウハウを取りまとめ、他の自治体に同様の取り組みを広げることを目指す。
地域の「関係人口」に注目を
地方創生、ボトムアップで―小田切明治大教授インタビュー
2017/10/3
地方創生をめぐり、各自治体が定めた5年間の総合戦略の折り返し地点を迎えた。
移住施策や過疎問題に詳しい明治大学の小田切徳美教授はインタビューに応じ、今後の地方創生の取り組みに関し、市町村より小さな小学校区単位で住民が参加するボトムアップ型で戦略構築を進める重要性を強調。
その上で、移住に至っていないが地域と多様な形で関わる人を指す「関係人口」に注目し、移住・定住施策などを進めていくことが必要だと指摘した。
主なやりとりは以下の通り。
▼2017年度は総合戦略の中間年に当たり、折り返し地点を迎えた。
これまでの取り組みの評価は。
これまで国レベル、自治体レベルでそれぞれ総合戦略が作られたが、ある意味、地方創生は急ぎ過ぎた面がある。地方の動向に光を当て、短い期間で政策を組み立てることができたのは、(「消滅可能性都市」を明示し)非常にインパクトが強かった「増田リポート」の「功」の部分だ。
ただ、「罪」の部分として、当初の段階の地方創生は「とにかく急ぐんだ」という空気がまん延し、コミュニティーレベルでボトムアップする地道な動きにつながらなかった。
中間年ではあるが、今はコミュニティーレベルの地方創生がいよいよ本格化した段階だ。
▼コミュニティーレベルの地方創生の在り方は。
どのくらい人を呼び込めば高齢化率を抑えることができるかや、あの空き家はまだ使えるとか、あの家の息子が来年定年で帰ってくるらしいとか、具体的な可能性を、今まさに地域の中で議論してほしい。
最大のポイントは時間をしっかり取ること。
時間を取って地域のワークショップを開き、(住民が)「自分たちの問題だ」という意識をつくらないといけない。
ワークショップで地域の資源や課題などを確認することで初めて、「何かしようじゃないか」と思うようになり、計画が出てくる。
市町村は、交付金の獲得だけを意識して既存の総合計画を机上で再編し、KPI(重要業績評価指標)を付けただけの総合戦略ではなく、小学校区単位からボトムアップした上で共通項目などを独自に考えるのが本来の在り方だ。
総合戦略は制度的にはいつ改定してもよいので、(不十分な内容の場合は)極端に言えば、今すぐにでも改定のプロセスに入るべきだ。
▼人口減少対策の一つの柱である移住促進に関し、(小田切氏が座長を務める)総務省の「これからの移住・交流施策のあり方に関する検討会」の中間取りまとめでは、「関係人口」に着目した取り組みの重要性を指摘した。
現在の移住・定住の議論では、移住前のプロセスを考えずに無関心の人をいきなり移住させようという発想があるのではないか。
銀座で不特定多数に移住フェアで呼び掛けたとしても、大きな効果は得られない。
ふるさと納税で寄付をしたり、単なる観光客でなくボランティアをしたり、移住前に地域に何らかの形で関係を持つプロセスをきちんと評価すべきだ。
「関係人口」は、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、中間の概念。(「関係人口」に位置付けられる人々には)最終的に移住する人も、東京から応援する人もいるだろう。
移住に至る次のプロセスに移りやすくすることが移住施策になるし、移住しなくても地域に関係を持つ人を尊重する考え方もある。
▼「関係人口」の考え方を今後どう発展させていくべきか。
各自治体に関係人口がどのくらいいて、どのくらいのスピードで増えているのか、実態を把握することが重要だ。その上で、そうした人々との関係を維持、発展させることになってくる。
「構想日本」の提言と考え方が近いが、検討会では、「ふるさと住民票」という形で住民登録し、自治体は広報やSNS(インターネット交流サイト)での情報提供などを通じて関係を維持するアイデアが出ている。
自治体が独自に取り組んでネットワーク化する形がよいのか、国として制度にするのかはまだまとまっていないが、(制度上位置付ける場合)例えば、「ふるさと住民票」の形で住民登録した自治体に、その人が住所地に納めている住民税が流れる仕組みをつくったり、ふるさと住民票の人口を地方交付税の算定に反映させたり、アイデアレベルだがいろいろ出てくると思う。
▼現行の過疎地域自立促進特別措置法(過疎法)は20年度末で期限切れになる。過疎地域の現状をどうみるか。
過疎法で指定されている過疎地域の「二極化」が進んでいる。
一方で移住者を受け入れて社会増を実現している「にぎやかな過疎」が出始めているが、もう一方で地域住民の当事者意識が全く生まれず、少なくとも移住や地域づくりで成果が出ていないという両極分解がかつてなく激しい。
こうした状況が、今の過疎法をどうするのかという議論と当然結び付いてくる。
▼人口減少問題の一つの側面として、地方議員の成り手不足もクローズアップされている。総務省「町村議会のあり方に関する研究会」で座長を務める立場から、今後の議論の方向性は。
私見だが、三つのレベルの議論があり得る。
長野県飯綱町議会の「政策サポーター制度」のように、現行制度の下でできる取り組みをどう横展開するかが一つ。
二つ目は、兼職禁止の緩和など地方制度調査会などで既に指摘されて、まだ制度的な対応ができていないものがある。
できるだけ速やかに対応すべきだという意見があるだろう。
三つ目として、制度の枠組みを大幅に変える議論もある。
現行制度で町村総会と議会は並置できないが、並置するような制度改正も考えられる。
議員の成り手がいないという脈絡から、すぐに町村総会ではなく、議会制度を充実させ、それにより成り手を増やすという考え方だ。
この三つのバランスが重要だが、どう最終的にまとめていくかは今後の課題だ。