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仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

おとなのワケあり恋愛講座

2018年06月28日 | ムービー
『おとなのワケあり恋愛講座(原題HOW TO MAKE LOVE LIKE AN ENGLISHMAM)』(2014年/トム・ヴォーン監督/アメリカ・イギリス)を見た。
物語は、「リチャード・ヘイグ教授(ピアース・ブロスナン)は、ケンブリッジ大学で"ロマン主義と文学理論"と題した講義をしているが、ロマン主義に理論など無いというのが実際の主張だ。プレイボーイのリチャードは、自分の講義を受講していた学生ケイト(ジェシカ・アルバ)と半年間付き合い、彼女は妊娠。卒業後の良い就職先が見つかったという彼女と一緒にアメリカに引っ越すことにしたのだが・・・」という内容。
ケイトの父親と会うはずだった日、ウェイティングバーのカウンターで魅力的な女性と出会い、さっそく口説こうとするリチャードだったが、なんと彼女はケイトの姉オリビア(サルマ・ハエック)だった。
しかし、この2人は父親が重婚をしていたことから母親が違う姉妹。
未来の三角関係を想像させてしまう、どうにもありきたりで分かりやすい展開だったが、そこは邦題でも織り込み済みのようなものだから、まぁ仕方がない。
ケイトのことを「素敵な娘だよ。利口で美しくて野心的で」と言うリチャードに、「今までで一番重要な忠告をしてやる。アメリカの女は最初は楽しいかもしれんが、扱いづらくて身勝手で虚栄心の強い生き物だ。間違っても手を出すな」と忠告をするのは、彼の父親ゴードン(マルコム・マクダウェル)だったが、ロサンゼルスに移り住んだ数年後には、ケイトは同僚ブライアンとの不倫の挙げ句、リチャードとは離婚することになったのだから、父親のこの忠告は正しかったわけだ。
さすがに4回も結婚しただけのことはある。
(^_^;)
「バイロンこそがロマン派の代表だ。恋愛賛美ではなく我が道を貫いた。権威に負けず心の向くまま大物に歯向かう。それがロマン主義だ」と言う父親のようになりたいと願っていたリチャードだったが、彼の振る舞いはあまりにも自己中心的過ぎて、自由の国と言われるアメリカでさえ彼の居場所になり得なかったのは自業自得だろう。
「お酒で薬を飲まないように」と説明されていながら、それを無視してワインで薬を流し込み、おまけに飲酒運転というのがとても象徴的なエピソードだった。
「ちょっとバスに轢かれてきます」と言ってホームパーティーをあとにしたリチャードだったが、一度轢かれたほうがいろいろ改まってよかったかもしれない。

パトリオット・ゲーム

2018年06月24日 | ムービー
『パトリオット・ゲーム(原題Patriot Games)』(1992年/フィリップ・ノイス監督/アメリカ)を見た。
物語は、「CIA分析官を辞め、アメリカ海軍兵学校の教官となったジャック・ライアン(ハリソン・フォード)は、眼科医をしている妻キャシー(アン・アーチャー)と、まだ幼稚園に通っている娘サリー(ソーラ・バーチ)との3人でロンドンに来ていた。講演の仕事を終えて、家族との待ち合わせ場所である都心の広場に着いたライアンは、テロ事件の現場に遭遇してしまう。北アイルランド担当国務長官を務めているイギリス王室のホームズ卿(ジェームズ・フォックス)がショーン・ミラー(ショーン・ビーン)らIRAの分派である過激派グループ達に襲われたのだ。ライアンはショーンから奪った銃で彼の弟を射殺するなどして、ホームズ卿一家を救ったのだが・・・」という内容。
丸腰のライアンがこのテロ事件に関わってしまったのは、持ち前の正義感からだったが、これは危険すぎる行動だった。
ケガだけで済んだのは奇跡と思っていい。
弟を初めてのテロ行為に誘ったショーンは、自分の銃から発射された弾丸でその16歳にもならない弟を死に至らしめてしまった。
裁判に証人として出廷したライアンに、被告のショーンは「無関係なのになぜ手を出した!!」と叫んだが、責めるべきはライアンではなく自分ではないのか。
完全な逆恨みだ。
アイルランドの武装組織による活動は相当に根が深いようで、政府内や警察内にもテロ活動の支援者がいるらしかった。
収監されていたショーンがあっという間に脱走してしまうのも、警察内部の協力者による情報提供が原因。
収監された犯人が脱走して事件への協力者を襲うだなんて、何とも恐ろしい物語だ。
犯罪者心理というものはよく分からないが、"逆恨み"という怒りの気持ちは、相当に強いエネルギー源になるようだ。

ボーン・スプレマシー

2018年06月20日 | ムービー
『ボーン・スプレマシー(原題The Bourne Supremacy)』(2004年/ポール・グリーングラス監督/アメリカ)を見た。
物語は、「CIAのパメラ・ランディ(ジョアン・アレン)は、ベルリンでチームを指揮し、事件の調査を行っていたが、何者かの襲撃を受けて作戦は失敗。部下も殺された。現場に残された不発の爆破装置に付いていた指紋から、ジェイソン・ボーン(マット・デイモン)の犯行と推測したのだが、CIAの深いレベルにある機密事項に触れることができない。一方、恋人のマリー・クルーツ(フランカ・ポテンテ)とインドで暮らしていたボーンには、何者かにより刺客が放たれ、マリーが犠牲になってしまった。ボーンはCIAが自分を狙っていると考え、マリーの復讐のため、ベルリンへと向かうのだが・・・」という内容。
前作『ボーン・アイデンティティー』に登場し、その中で廃棄もされた"トレッドストーン計画"だったが、アレクサンダー・コンクリン(クリス・クーパー)が死に、計画そのものも中止になったとはいえ、まだまだその影響が残っているようだった。
まぁ、中間管理職のコンクリンが口封じのために殺されてしまったのだから、実際には事件は解決していなかったというわけだ。
(^_^;)
前作ではボーンと一緒に何度も危機的状況を乗り越え、追っ手から逃げ延びていたマリーだったのに、本作では序盤であっけなく死んでしまったのには驚いたのだが、しかし、また二人で逃げ回るという似たような展開になってしまうと、わざわざ続編を作る意味が無くなってしまうということで、いきなりの退場になってしまったのだろう。
確かに本作では、逃げ回るのではなく、ボーンがどんどん攻めていく展開になっていたようではある。
残念なのは、前作を引き継いでいる物語なので、早い段階で犯人が誰なのか、明らかになってしまったこと。
シリーズはまだ続くので、これは次作に期待だ。

お!バカンス家族

2018年06月16日 | ムービー
『お!バカンス家族(原題VACATION)』(2015年/ジョン・フランシス・デイリージョナサン・M・ゴールドスタイン監督/アメリカ)を見た。
物語は、「海外路線がある大手航空会社のスカウトも断って家族と一緒に過ごす時間にこだわり、弱小航空会社でパイロットとして働いているラスティ・グリズワルド(エド・ヘルムズ)。壊れかけた家族の絆を取り戻すため、妻のデビー(クリスティーナ・フップルゲイト)、長男ジェームズ(スカイラー・ギソンド)、次男ケヴィン(スティール・ステビンズ)を連れて全米有数のテーマパーク、ワリーワールドを目指す大陸横断の旅を計画したのだが、クルマの故障やガス欠、次々と見舞われる災難で一家のストレスが積み重なっていく。一家の大黒柱としての威厳と家族愛を取り戻そうと奮闘するラスティではあったが・・・」という内容。
ラスティがレンタルしたのは、"アルバニアのホンダ" と呼ばれるというタータン社のプランサーという車種で、どっちが前なのか後ろなのかよく分からない不思議なデザイン。
しかも、プラグインハイブリッドとはいえ、螺旋形のプラグなんて見たことないし、クルマの外側にカップホルダーが飛び出すという謎の設計だ。
付属の多機能リモコンキーホルダーについている意味不明なボタンを押した時、走行中なのに運転席が回転し出したのには爆笑してしまったのだった。
(^。^)
途中、「子供たちに君の出身校を見せよう」とデビーが卒業した大学に立ち寄りはしたものの、「アイビーリーグにしか興味がない」と言うジェームズに「クソガキ」とつぶやいてしまうデビーは、今も後輩たちにレジェンドと崇められている"無敵のデビー"という存在だった。
どうしようもなくトラブルを引き寄せてしまうラスティの陰に隠れてしまっている存在だが、実は彼女はこの作品中で一番強烈なキャラクターだったのではないかと思う。
(^。^)
もう一度見たいなどとは思わないが、何ともくだらなくて面白い作品だった。

リスボンに誘われて

2018年06月12日 | ムービー
『リスボンに誘われて(原題NIGHT TRAIN TO LISBON)』(2013年/ビレ・アウグスト監督/ドイツ・スイス・ポルトガル)を見た。
物語は、「ベルン(スイス)で古典文献学の高校教師をしているライムント・グレゴリウス(ジェレミー・アイアンズ)は、知性と教養に溢れ、同僚や生徒からも尊敬されていた。5年前に離婚してからは独り暮らしをしているが、ある雨の朝、出勤の際に吊橋から飛び降りようとしていたポルトガル人女性を助ける。その女性を放ってもおけないことから、自分が担当している授業中、教室の椅子に座らせていたものの、女性は途中で教室から飛び出し、行方をくらませてしまうのだった。グレゴリウスは、彼女が残した1冊の本に挟んであったリスボン(ポルトガルの首都)行きの列車の切符を見つける。15分後に発車するその列車に乗ろうとするだろう女性を駅で見つけようとしたのだが、見つけることができない。そして、衝動的にその夜行列車に飛び乗ってしまうのだった」という内容。
その『言葉の金細工師(UM OURIVES DAS PALAVRAS)』という本に書かれている「人生の一部しか生き得ないなら残りはどうなるのだ?」、「我々は今ここに生きる。以前、別の場所で起きたことは過去であり、忘れ去られる」といった散文に感銘を受けたグレゴリウス。
リスボン到着後、著者アマデウ・デ・プラド(ジャック・ヒューストン)の家を訪ねる。
その本に著者の住所が書かれていたらしいのだが、「この著者の住所は分りますか?」と聞いたグレゴリウスに、その日の宿泊先に決めたホテルの経営者は、無言だが満面の笑みを浮かべ、分厚い電話帳を差し出す。
何て素晴らしいサービスだ。
(^。^)
電話帳を受け取ったグレゴリウスも「ありがとう」と笑顔なのが面白いが、ヨーロッパでのサービスというのはそのくらいが普通なのだろう。
探し当てた家にはピカピカに光る診療所の看板が掲げられていて、対応してくれた妹アドリアーナ(シャーロット・ランプリング)によると、その本は100冊しか出版されていない本で、手元には6冊が残っているという。
作者は医者だったようだが、実はアマデウは随分と昔に死んでしまった人。
その妹は、兄がまるで今も生きているかのように振る舞うのが謎であり、幾分不気味にも思える展開を予想させるのだった。
メガネが壊れてしまったことで知り合ったマリアナ(マルティナ・ゲデック)は魅力的な女性だった。
紅茶のストックを切らし、ゴミ箱の中からつまんだ使用済みのティーバッグで朝食を摂るような冴えない生活をしていたグレゴリウスにとって、本も人も、すべてが何とも刺激的な出会いだったわけだ。
これはとても面白い物語だった。

愛を複製する女

2018年06月08日 | ムービー
『愛を複製する女(原題WOMB)』(2010年/バネデク・フリーガオフ監督/ドイツ・ハンガリー・フランス)を見た。
物語は、「近未来。少女レベッカ(ルビー・O・フィー/少女期)は、海辺の街にある祖父の家に滞在中、地元の少年トーマス(トミー/トリスタン・クリストファー)と出会った。しかし、ほどなくして母親の仕事の都合で東京へ。大学を卒業し、ソナー装置のソフト設計をしているレベッカ(エヴァ・グリーン)は、12年ぶりに海辺の街を訪れた。トーマス(トミー/マット・スミス)と再会し、以前の関係を取り戻した二人だったものの、トミーが交通事故で死んでしまう。悲しみに沈むレベッカは、トミーのクローンを産もうと・・・」という内容。
子供だった二人がどれくらいの時間を一緒に過ごしたのか、それはハッキリと描かれていなかったが、長い期間ではなかったはすだ。
大人になったレベッカが、亡くなった祖父の家があるとはいえ、トミーがいるだろうその地に帰ったのは、
短い時間だったとはいえ、それが随分と大きな出来事だったからなのだろう。
また、見送りをすると言っていたはずのトミーが、フェリー発着所に現れなかった理由をずっと知りたいと思っていたからかもしれない。
(^_^;)
二人が再会した際にトミーの家にいた恋人のローズ(ナタリア・テナ)は、自分のことをないがしろにして再会の時を楽しみ、その後は確実にうまくやっていくんだろう二人を前にしてしまって、どうにもいたたまれなかったはずだ。
これはレベッカにとっても残念な状況といえたが、トミーが二人の女性に対して、それぞれの相手の尊厳を充分に尊重した対応をとっていれば、この物語も随分と違うものになっていったかもしれない。
(^_^)
祖母のクローンだというディマ(ジーナ・スティービッツ)という少女が登場するエピソードでは、何かと閉鎖がちな田舎町で生活している母親達の、"コピー人間"に対して忌み嫌う気持ちが描かれていた。
トミーの父親ラルフ(ピーター・ワイト)と母親ジュディス(レスリー・マンヴィル)に対しては自分の気持ちを素直に話せていたレベッカも、子供の人間関係や環境を考えると、そこでは事実を話せなかったというのはつらいところだったろう。
物語の舞台はドイツ北部なのか、随分と寒々しい砂浜の風景が広がる場所だ。
何もない小さなフェリー発着所にある巨大なトドのオブジェと、「あの子のことだからまた海を愛するだろう」という台詞がとても強く印象に残った。

ロスト・イン・トランスレーション

2018年05月28日 | ムービー
『ロスト・イン・トランスレーション(原題Lost In Translation)』(2003年/ソフィア・コッポラ監督/アメリカ)を見た。
物語は、「200万ドルのギャラでサントリーのCM撮影のため来日したアメリカ人俳優ボブ・ハリス(ビル・マーレイ)は、結婚して25年になる妻リディアとの生活に倦怠感を抱いていた。一方、シャーロット(スカーレット・ヨハンソン)は、カメラマンの夫ジョン(ジョバンニ・リビシ)の仕事に帯同して来日したが、どこへ行くにも一人ぼっちで退屈していた。どうにも気が晴れない二人が、宿泊先のパークハイアット東京のバーで出会う。何となく気が合ったボブとシャーロットは・・・」という内容。
動画や写真の撮影中、日本人監督やカメラマンの指示が上手くボブに伝わらない。
それは両者の間に通訳が入るからでもあるのだが、元々の指示自体大したことは言ってないようにも見えたのは面白かった。
また、一人で寺に出掛けたシャーロットが、電話を掛けてきた母親に「僧侶達が歌ってた」と話していたのも、ある意味、"ロスト・イン・トランスレーション"か。
(^_^)
「なぜ日本人はRとLが苦手なの?」
「わざとさ。ふざけてるんだ」
というシャーロットとボブの会話があったが、物語全体が不思議の国ニッポンをアメリカに(世界に?)紹介している作品のようにも思えた。
この監督は、きっと日本のことが結構好きなのだろう。
実際にテレビ朝日系列で放送されていて、たまに見ていたマシュ-・G・南(藤井隆)司会の『ベストヒットTV』(2001年~2006年)にボブが出演するエピソードには笑ってしまったが、確かにあれは不思議過ぎるテレビ番組だった。
(^。^)

セッション

2018年05月24日 | ムービー
『セッション(原題Whiplash)』(2014年/デミアン・チャゼル監督/アメリカ)を見た。
物語は、「偉大なドラマーになることを夢見ている19歳のアンドリュー・ニーマン(マイルズ・テラー)は、アメリカで最高水準にあるシェイファー音楽学校へと進学し、日々練習に打ち込んでいた。ある日、校内最高の指揮者として名高いテレンス・フレッチャー(J・K・シモンズ)が彼の音に興味を持ち、ニーマンは最高峰であるフレッチャーのスタジオ・バンドに招かれる事になったのだが・・・」という内容。
フレッチャーの指導は異常としか見えない。
明朝午前6時にスタジオ集合と言っておきながら、実際の集合時間は9時。
練習開始早々には、「音がずれている奴がいる。忌々しい」と言ってトロンボーンのメッツを追い出すが、メッツが教室の外に出てから「メッツはズレてない。お前だ、エリクソン」とぬけぬけと本当のことを言う。
休憩時間に「チャーリー・パーカーがバードになれたのはシンバルを投げられたからだ」とニーマンに持論を展開をしたあとの練習では、「テンポが違う」と椅子を投げつけ、ビンタをし、両親を侮辱し、ドラムセットすら放り投げて、ニーマンを追い込む。
同じ場所にいる他の学生達は終始うつむいていて誰も何も言えない。
彼の指導は度を越していると判断するしかないし、相手を人間として扱っていないようだ。
壊れても替わりがある部品くらいにしか思っていなかったのではないだろうか。
さて、2018年のリアル日本では、3月に女子レスリングのオリンピック金メダリストであり、同4連覇中の伊調馨(いちょうかおり)選手が、高校時代から師弟関係にあった栄和人日本レスリング協会強化本部長(当時)兼至学館大学監督から陰湿なパワハラを受けていたとの告発があり、さらに、日本レスリング協会副会長兼至学館大学学長・谷岡郁子氏の反論会見では、「彼女は選手なんですか?」との暴言もあったりして、パワハラ問題に関する同協会や同大学の意識の欠如が明らかになる案件が世間を騒がした。
さらに5月には、日本大学アメリカンフットボール部の選手が、関西学院大学との定期戦で危険なタックル等の反則行為をした問題では、日本大学・内田正人監督(当時)兼同大常務理事の指示によるものではないか、加害選手を追い込んでコントロールしたのではないかとの疑惑が発覚し、スポーツ庁の鈴木大地長官が早速、「監督の辞任ではなく真相の究明を」と日本大学を非難するという事件も世間を騒がせている。
日本大学・内田正人監督(当時)は、自身からは何ら真相を明かさぬまま監督を辞任し、うやむやのうちに事件の収束を図ったのではないかと思えるし、同大常務理事との役職については本件とは無関係として辞任するつもりが無いとのことだが、彼が常務理事として同大学の人事を握っているために、大学内の人間は表立った批判ができない環境にあるとの報道もあり、その職のほうを辞任しないことで、自身が身内からも攻撃を受けないための防御としているのではないかと思えてしまう。
"いきすぎた指導"だったり、"パワハラ"だったり、人の上に立ってはいけないような人間性の持ち主が、その技術や成績のみの評価で、持ち上げられたり引き上げられたりした結果、次の世代の優秀な人材が潰されていく可能性があるのはとても理不尽だ。
本作品でフレッチャーを演じたJ・K・シモンズは、第87回アカデミー賞(2015年2月22日)で助演男優賞を受賞したとのこと。
演技の世界において、悪役や常軌を逸した人間を突き詰めていき、作品に登場する人間の人格を作り上げていくという作業は楽しいのだろう。
これはとても素晴らしい演技だったわけだが、現実世界においては、ハラスメントの類いの馬鹿な行為はやめてほしいものである。

岸辺の旅

2018年05月20日 | ムービー
『岸辺の旅』(2015年/黒沢清監督)を見た。
物語は、「ある夜。失踪した薮内優介(浅野忠信)が3年ぶりに、突然部屋の中に現れた。靴を履いている。自分はすでに死んでいると言う優介。翌朝、妻の瑞希(深津絵里)は、"変な夢・・・"と目を覚ますが、優介は再び現れた。そして、思い出の地を巡る旅に出ようと瑞季を誘う。初めに訪ねたのは、島影(小松政夫)が経営する新聞販売店。優介は過去にここで働いたことがあり・・・」という内容。
優介が最初に現れたのは暗闇の中だったので、不気味に展開する物語なのかと思ったのだが、その後は昼夜関係なしに出ずっぱり。
瑞季にしか見えないということもなく、優介自ら駅員に話しかけたり、生きている人間と変わりなく描かれていたが、一人の男の子だけは何かに気がついたようだった。
じっと見つめている。
(^_^;)
ただ、不思議なことは不思議なまま、どこかに線引きをすることもなく曖昧に物語は進行する。
いつ優介が消えてしまうのかと不安な瑞季と同じように、観客もまた不安を覚えるような演出が素晴らしいと思った。
(^_^)
生前の優介が心を通わせていたらしい彼の同僚・松崎朋子(蒼井優)が登場したエピソードは生きている人間の生々しさが強烈に表現されていた場面だった。
生きることに刺激を求めようとする、その貪欲さが強く描かれていたような気がする。
何とも不気味に見える松崎朋子の笑顔だった。
稲荷神社の祈願書や、死者の世界に通じる洞窟というのは出てきたが、特に何らかの宗教に基づいた死生観を表現していることもないので、清々しさはないものの嫌な感じも受けない。
ハッピーエンドではなく、ここから始めようという物語だった。

ボーン・アイデンティティー

2018年05月16日 | ムービー
『ボーン・アイデンティティー(原題The Bourne Identity)』(2002年/ダグ・リーマン監督/アメリカ)を見た。
物語は、「荒れる海で漁船に救助された記憶喪失の男(マット・デイモン)。身体には二発の銃弾が打ち込まれていて、スイスの銀行口座を示すマイクロカプセルも埋め込まれていた。マルセイユ上陸後、チューリッヒに到着した彼は、銀行の貸金庫から、"ジェイソン・ボーン"と記されたアメリカ合衆国パスポートをはじめ、多数の偽造パスポート、様々な国の高額紙幣の札束等を取り出す。自分は一体何者なのか。アメリカ領事館を訪れた時には、前夜に起こした傷害事件により現地警察から手配されていたばかりではなく、領事館詰め海兵隊員により拘束されようとした。何とか領事館から脱出した彼は、偶然居合わせたマリー・クルーツ(フランカ・ポテンテ)を運転手として雇い、パリに向かったのだが・・・」という内容。
記憶はなくても身体はいろいろなことを覚えているようで、攻撃されれば俊敏に反応するし、スイス語、フランス語、ドイツ語の会話も自然だ。
様々な危険な場面に遭遇しながらも、それらを乗り越えていけるのは、とてつもない訓練の賜物のようなのだが、可哀想なのは、巻き込まれてしまうアパートの管理人や、単に職務をまっとうしようとしているだけの警察官。
(^_^;)
何もかも知っていそうなアレクサンダー・コンクリン(クリス・クーパー)は、いかにも「私は悪い人間です」と顔に書いてあるような"悪人ヅラ"だし、その上司ワード・アボット(ブライアン・コックス)も会議室でのうのうとしている元締めのような存在だ。
(^。^)
これは随分と人気が高かった作品のようで、これを第1作としてシリーズ化され、第5作まで作られたようなのだが、哲学的な意味での"俺は何者なんだ?"ではなく、"リアル俺は何者なんだ?シリーズ"で5作品も作れるのは凄いのではないかと思う。
次の次あたりで、また記憶を無くしたりするのか?
機会があれば次作品以降も見てみよう。
(^_^)

砂漠の流れ者

2018年05月12日 | ムービー
『砂漠の流れ者/ケーブル・ホーグのバラード(The Ballad of Cable Hogue)』(1970年/サム・ペキンパー監督/アメリカ)を見た。
物語は、「アメリカ西部開拓時代の末期。砂金掘りのケーブル・ホーグ(ジェイソン・ロバーズ)は、仲間と思っていたタガート(L・Q・ジョーンズ)とボウエン(ストローザー・マーティン)にすべてを奪われ、砂漠のど真ん中に取り残された。水も無く砂漠をさ迷い、死を覚悟したホーグだったが、倒れた砂嵐の中で奇跡的に水源を発見し、命拾いをしたのだった。砂嵐が去り、落ち着いて辺りを見渡すと、近くを駅馬車が通る。聞くと、ジャッカス平原の辺り半径20マイルほどには中継駅がないので不便だということから、水場を作って商売をしようと考えた。そこへインチキ牧師のジョシュア・ダンカン(デビッド・ワーナー)という男が現れ・・・」という内容。
倒れながらも当てなく砂漠を歩き続けるホーグは、何度も神に話し掛ける。
「神様、罪を犯してきたが水をくれたら二度と悪いことはしません。本当です」
困った時の神頼みというのはおそらく誰でもするのだろうが、社会のルールなど守りそうにもない西部のワイルドな男が「二度と悪いことはしません」と言うのには笑ってしまった。
まぁ、これも神頼みのあるあるかもしれないが。
(^。^)
ジョシュアは胡散臭い男だったものの、ホーグは彼のおかげで助かった。
ジョシュアの助言に従って町の公有地管理事務所へ赴き、ひとり320エーカー購入できるという砂漠地法により、水源の土地を合法的に所有することができたのだから。
有り金をはたいて買えたのは、2エーカー(1エーカー当たり1ドル25セントという登記料)だけだったものの、「俺の土地だ!!」と大喜びだ。
(^_^)
絶体絶命から息を吹き返したホーグには、町で良い出会いが続いた。
銀行のクッシング頭取(ピーター・ホイットニー)は35ドルを借りたいというホーグに100ドルを融資し、娼婦のヒルディ(ステラ・スティーヴンス)は彼に頑張る気力を与えた。
また、駅馬車の会社を経営しているクイットナー(R・G・アームストロング)に一度は契約を断られたのだが、"ケーブルの泉"の隣接地で13日間掘り続けても水が出なかったものだから、諦めてホーグと契約するに至り、ホーグは正式に駅の経営者になった。
人生の深い谷に落ち、「俺もこれまでか」と一度は死を覚悟した男が駅の経営者になり、プレゼントされた星条旗を掲げ、帽子をとって殊勝に、かつ、神妙な面持ちで旗を見上げる。
モータリゼーションが始まる直前の時代を舞台とした、変化球的な西部劇であり、なかなか面白い作品だった。

クライム・ボーダー

2018年05月08日 | ムービー
『クライム・ボーダー 贖罪の街(原題Two Men In Town)』(2014年/ラシッド・ブシャール監督/フランス・ベルギー・アルジェリア・アメリカ)を見た。
物語は、「保安官代理を殺害したウィリアム・ガーネット(フォレスト・ウィテカー)は、懲役21年の判決を受けて服役し、18年後に仮出所。刑務所内で学問を身につけ、イスラム教に改宗、新しい人生をスタートさせようとしていた。真っ当な仕事に就き、恋人テレサ・フローレス(ドロレス・エレディア)とも出会い、保護監察官エミリー・スミス(ブレンダ・ブレシン)との信頼も築け、新生活は順調かと思われたのだが、かつて部下を殺されたビル・アガティ保安官(ハーヴェイ・カイテル)は18年経とうともガーネットの罪を許そうとしない。彼は常にガーネットへの監視の目を光らせ・・・」という内容。
仮出所したガーネットは出所後説明会で、報償金として作業料2800ドルと仮釈放手当200ドルを受け取った。
18年間に稼いだ金額が300ドル(1ドル=106円として約31万8000円)とは・・・。
人生の大半を刑務所内で過ごすというのは、本当に残念なことのようだ。
しかも、仮釈放というのは完全に自由の身になれたわけではなく、3年間は自由に移動できないし、午後9時から午前6時までの外出は許可が必要でもあり、さらにはいかなる武器の所有もできないという。
どれだけ凶悪な銃による犯罪が起きようと、国民の権利だからと銃規制が行われることがないアメリカという国において、銃を所有できないとは、相当な厳しさだ。
昔の仲間テレンス・サルダーノ(ルイス・グスマン)が闇の世界に引き戻そうと近づいてくるし、アガティ保安官も部下を使ってしつこく干渉してくる。
収監されて罪を償ったとはいえ、出所した人間が更正しようとするのはどうにも大変なことらしい。

エアー

2018年05月04日 | ムービー
『エアー(原題AIR)』(2015年/クリスチャン・カンタメッサ監督/アメリカ)を見た。
物語は、「地上での生存が不可能になった近未来。外気とは遮断された地下シェルター内で長期冷凍睡眠中の人間達を管理する技術者2人がいた。自分達も短期冷凍睡眠を繰り返しながら設備の機能を維持する作業を続けていたのだが、ある時、不注意から火災をおこしてしまい・・・」という内容。
アメリカ政府に選ばれた科学者や技術者、医師など数百人が、"ノアの方舟"と呼ばれる地下施設で冷凍睡眠しているらしいのだが、冒頭のアメリカ大統領の会見シーンでは「今夜、我々は世界から専制政治を一掃すべく最後の作戦を決行する。備えは万全で、何が起ころうとアメリカは安泰だ。我々の文明が途絶えることは決してない」との説明があったものの、終末感がありあり。
2015年の作品ということもあってか、何だか近年の北朝鮮が関わる核開発騒動を意識させる台詞でもある。
(^_^;)
自分達のタンク・ベッドから半年ぶりに目覚めた技術者のバウアー(クリス・パセット)とカートライト(クリスチャン・カンタメッサ)は、2時間ほど起きていられるらしいが、その間に設備のメンテナンスをしなければならないようで、プライベートな時間などまったくない。
2時間経つと施設内の酸素の供給が自動的に停止してしまうのだ。
起きていられる2時間のうち、1時間40分ほど作業をして、あわててタンクベッドに入り、また半年間眠りにつく。
しかも仕事とはいえ、反りの合わないいけすかない奴がパートナーともなれば、これは精神的におかしくなりそうだ。
(-_-;)
もし自分が何でもちゃかしてすんなり物ごとを進めようとしないバウアーのような人間と一緒にいなければならないとなれば、次に目覚めるのがイヤになってしまうかもしれない。

ア・フュー・グッドメン

2018年04月30日 | ムービー
『ア・フュー・グッドメン(原題A Few Good Men)』(1992年/ロブ・ライナー監督/アメリカ)を見た。
物語は、「キューバのグアンタナモ海軍基地において、海兵隊の模範的な海兵であるハロルド・W・ドーソン上等兵(ウォルフガング・ボディソン)とローデン・ダウニー1等兵(ジェームズ・マーシャル)の2人が、落伍兵であるウィリアム・T・サンティアゴ1等兵(マイケル・デロレンツォ)に暴行を加え、被害者が1時間後に死亡するという事件が起きた。ワシントン法務監本部は、おそらく"コード・レッド"が引き起こした事件ではないかと推察したうえで被告の弁護を希望したジョアン・ギャロウェイ少佐(デミ・ムーア)を不適任と判断し、入隊9ヶ月でありながら44件の示談を成立させていたダニエル・キャフィ中尉(トム・クルーズ)を適任とし、彼に2人の弁護をするよう指名したのだが・・・」という内容。
"コード・レッド"とは、訓練中にミスをした海兵に対し、上官の命令によって行われる、いわば"体罰"で、国家安全保障会議の時期メンバーと目されているグアンタナモ基地司令官ネイサン・R・ジェセップ大佐(ジャック・ニコルソン)が、これを公認しているというのだから、過去の遺物ともいえるとてつもなく厄介なローカルルール。
いち早くそれを察知したギャロウェイ少佐だったものの、過去2年間で扱った訴訟が3件とあっては、経験不足と判断され、この重大案件の担当にさせてもらえなかったのも当然だろう。
軍としては、騒ぎになる前に内々に示談にして終わらせたかったはずで、そうなると、新人とはいえキャフィ中尉は最も適任だったわけだ。
ただ、ギャロウェイ小佐に「まともな弁護士が欲しかった」と言わしめたキャフィ中尉は、弁護士としての実績以前に「人としてどうなの?」と疑念を持たれるくらいの未熟な人間に描かれていた。
挫折を知らない若者というのは、往々にしてそういうものなのだろう。
対して、直属の上司からキャフィの監督役に指名されたサム・ワインバーグ中尉(ケヴィン・ポラック)は、幾らか歳上ということもあるのだろうが、とても冷静で頼りになる人だった。
このような人がバランス感覚が良いという範疇に入る人なのだろう。
規律と命令系統の重要性を重んじるという軍隊内部の、なかなかに興味深い物語だった。

カサブランカ

2018年04月29日 | ムービー
『カサブランカ(原題Casablanca)』(1942年/マイケル・カーティス監督/アメリカ)を見た。
物語は、「1941年。ニューヨーク出身のリック・ブレイン(ハンフリー・ボガート)は、ピアニストのサム(ドーリー・ウィルソン)と共に列車でパリから脱出し、辿り着いたフランス領モロッコの都市カサブランカにおいて酒場"リックのカフェ・アメリカン"を経営していた。カサブランカはすでに実質ドイツ軍の支配下にあったものの、リックの店はフランス警察のルノー署長(クロード・レインズ)によって営業を許可され、アメリカ渡航のためのビザの発給を待つ人々やドイツ兵で溢れかえっていた。2人のドイツ人が殺害されドイツ軍が発行したビザが強奪された日、ウガーテ(ピーター・ローレ)という男がリックを訪ねてくる。ある男と待ち合わせをしているという。その男とは著名なレジスタンスのビクター・ラズロ(ポール・ヘンリード)。そして、彼が連れていたミス・ラント(イングリッド・バーグマン)という女性は・・・」という内容。
警察官でありながらビザの高額な取引で私腹を肥やしているルノーは、同業に参入してこないリックの店だからと営業許可を与え、リックは店のカジノでルノーを勝たせている。
リックはルノーの目の前で事務所の大きな金庫を開けて札束を出すし、ルノーは、客と一緒に酒を飲まない、客に酒をおごらないというマイルールを守り通しているリックのことを良く知っている。
この2人はナカナカの腐れ縁だ。
その2つのルールを破ったのが、ミス・ラントと名乗ったイルザが店に来た夜だったのだから、これは何かある。
(^。^)
「君の瞳に乾杯」だなんて格好イイんだか恥ずかしいんだかよく分からない台詞と共にシャンパンを飲むリックとイルザ。
♪時の過ぎゆくまま(As Time Goes By)♪がとても切なく聞こえる物語だが、さらに印象的なのは、リックの店で我が物顔に♪ラインの守り♪を歌うドイツ軍士官達を目にしたラズロが、バンドにフランス国歌を演奏させて対抗し、店内の全ての客が起立して歌うという場面。
ドイツ兵と付き合っていたイヴォンヌ(マデリーン・ルボー)が涙を流しながら歌っている姿が悲しく見えた。