仁左衛門日記

The Diary of Nizaemon

寄合酒 / 春風亭一之輔

2021年10月31日 | エンタメ
落語『寄合酒』春風亭一之輔。
噺は、「手に入れた酒三升を一人で飲んでしまうのも申し訳ないから、みんなで飲もうという。ただ、酒の肴がないので、みんな何か一つ持ち寄ってくれとのこと。さっそく源ちゃんが鯛を一匹持ってきたので、"高かっただろ?" と聞くと、"うん。買えば高いだろうね" との返事がかえってきて・・・」との内容。
"正直源ちゃん"と呼ばれていると言うが、それは自称。
どうにも怪しいので詳しく聞けば、往来に放置されていた魚金のはんだいから "金ちゃん、猫が鯛を一匹咥えて逃げて行ったぜ" と何故か言ってしまったので、つじつまを合わせるために一匹持ってきたという。
それはアウト。
(^。^)
続けて何かを持ってくる連中みんながそんな感じなものだから、ホントどうしようもない。
さて、演者の春風亭一之輔師匠は、枕で風邪のことを話されていたが、確かに不特定多数が集まる所に出掛けるようだと風邪は防げない。
客席の人達もやっぱりアウトだ。

ヒート

2021年10月30日 | ムービー
『ヒート(原題HEAT)』(1995年/マイケル・マン監督/アメリカ)を見た。
物語は、「ロサンゼルス。ニール・マッコーリー(ロバート・デ・ニーロ)の強盗チームは現金輸送車を襲い、ロジャー・ヴァン・ザント(ウィリアム・フィクナー)所有の160万ドルの無記名債権を奪った。その周到な計画は無事に成功したかと思えたが、新入りのウェイングロー(ケヴィン・ゲイジ)が無意味に警備員を射殺してしまったことから、計3人を殺害するに至った。一方、捜査を担当することになったロス市警察のヴィンセント・ハナ警部補(アル・パチーノ)は、目撃者証言の "スリック" という言葉から一味のマイケル・チェリト(トム・サイズモア)を探し出し、ニールのグループのクリス・シヘリス(ヴァル・キルマー)、トレヨ(ダニー・トレホ)等の監視を始めた。"30秒フラットで高跳び出来るように面倒な関わりを持つな" が信条のニールだったが、よく行く書店の店員イーディ(エイミー・ブレネマン)に話しかけられたことをきっかけに・・・」という内容。
アンダーグラウンドの世界もしっかり分業制が敷かれているらしく、ニールはネイト(ジョン・ヴォイト)を通して仕事の企画を紹介されたり、偽の身分証明や逃走ルートの手配を発注しているのだが、長年の付き合いなのか、随分と信頼しあっているし、チームのメンバーも家族ぐるみでの付き合いがあるようで、プライベートがうまくいっていないヴィンセントとの対比が妙に面白い。
仕事以外に楽しみを見つけられないヴィンセントより、ニール達のほうが人生を楽しんでいる。
「こんな信条の俺を捕まえようというのに結婚しようなんて間違ってる」と言われてしまっては、警察官も可哀想だ。
(^_^;)
この作品の劇場公開時、どこかの映画館で見た時は、街中での銃撃戦の場面を長過ぎると感じたはずだったのだが、今回は、長過ぎるというほどでもないと思った。
それは、その前後の展開や登場人物達についての描写が深く理解できたからなのかもしれない。
170分もある随分と長い映画作品だけれども、退屈せずに見られるのが凄い。

袈裟御前 / 林家たけ平

2021年10月24日 | エンタメ
落語『袈裟御前林家たけ平
噺は、「平安時代末期。北面の武士・遠藤盛遠は袈裟御前に一目惚れ。しかし、袈裟御前は同じ北面の武士・渡辺渡の妻だった。夫ある身の袈裟御前に横恋慕した盛遠は・・・」という内容。
「俺の言うことを聞かねば、お前の母を殺すぞ」と袈裟御前を脅す遠藤盛遠。
これはかなりイカれてる奴だ。
調べてみると、実在した遠藤盛遠(1139年~1203年)は十九歳で出家しているらしいのだが、『源平盛衰記』(作者不明)では「出家の原因は従兄弟で同僚の渡辺渡の妻・袈裟御前に横恋慕し、誤って殺してしまったことにある」というような記述があるらしい。
また、『袈裟の良人』(1923年/菊池寛)を原作とした映画『地獄門』(1953年/衣笠貞之助監督)は、第七回カンヌ国際映画祭(1954年)でパルムドールを受賞しているらしいので、この物語は世界的に周知されている物語なのかもしれない。
なかなかに衝撃的な物語だ。
さて、演者の林家たけ平師匠は落語協会所属で、平成28(2016)年に真打ちに昇進をしている。
平成13(2001)年に林家こぶ平(現・林家正蔵)師匠に弟子入りした時からの名前・たけ平をそのまま使い続けているが、袴をはいたり、ざっくばらんな語り口だったり、初代林家三平(1925年~1980年)師匠を相当に意識しているのだろうか。
(^_^)


ロッキー

2021年10月23日 | ムービー
『ロッキー(原題Rocky)』(1976年/ジョン・G・アヴィルドセン監督/アメリカ)を見た。
物語は、「フィラデルフィア。試合で勝利しても65ドルのファイトマネー(手取り40ドル55セント)しか貰えないボクサーのロッキー・バルボア(ロバート・バルボア/シルヴェスター・スタローン)は、ボクシングだけでは生活ができず、高利貸ガッツオの取立ての仕事を請け負っている。スパイダーとの試合に2ラウンドKOで勝った翌日に、所属しているミッキー・ゴールドミル(バージェス・メレディス)のジムへ行くと、6年間使っている自分のロッカーの鍵を変えられ、用具をずだ袋に入れられていた。ろくに練習もせず、30歳を過ぎても芽が出ないロッキーは、ミッキーに愛想を尽かされ追い出されてしまったのだ。そんなロッキーだが、楽しみは親友ポーリー(バート・ヤング)の妹エイドリアン(タリア・シャイア)が働いているペットショップに通い、彼女に冗談を言うことくらいで・・・」という内容。
どうにもうまく行かないロッキーに運が回ってきたのは、世界ヘビー級チャンピオンのアポロ・クリード(カール・ウェザース)の対戦相手に選ばれたこと。
名前だけで選ばれるだなんて、運以外の何物でもないのだが、これは、アポロを実力で勝ち上がったチャンピオンだと以前からきちんとリスペクトしていたことや、引退をしても趣味として続けていくというほどにボクシングが好きだったからなのではないか。
きっとロッキーの深層心理がチャンスを引き寄せたと思うのだ。
(^_^)
しかし、エイドリアンとの初デートの時、二人で玄関を出た数秒後に花壇に唾を吐きかけたのはどうにもいただけなかった。
(^_^;)
エイドリアンがハッとしてそれを見ながらも、何も言わず一緒に出掛けたのは、普段まったくの無関心を装いながらも、実はロッキーのことを気に入っていたというわけだ。
これは第49回アカデミー賞(1977年3月28日)で作品賞を受賞している、なかなかに面白い物語なのだった。

のめる / 柳亭市馬(四代目)

2021年10月17日 | エンタメ
落語『のめる柳亭市馬(四代目)。
噺は、「何かと"つまらねぇ、つまらねぇ"と言うたつ公に、"陰気臭いからやめたほうがいい"と助言したところ、お前だっていつも、"のめる、のめる"って言ってるじゃねえかと返された八っつぁん。お互いに悪い口癖だから、一言でも口癖を言ったら、一回一円の罰金を取ろうと取り決めたのだが・・・」という内容。
罰金と言い出したのはたつ公。
賭けを切り出すだけあって少しずる賢い人のようだ。
八っつぁんのほうは、何だか呑気な人らしく、たつ公の策にすぐに引っ掛かってしまうのだった。
相談され、面白がって策を授けるご隠居さんも楽しんでいるようなのがいい。
さて、演者の四代目柳亭市馬師匠の出囃子は、吾妻八景(あづまはっけい)という長唄。
これは、四世杵屋六三郎(一世六翁)が作曲したものの(作詞者は不詳らしい)ようで、文政12(1829)年に初演されたのだという。
日本橋、御殿山、高輪、駿河台、浅草、隅田川、吉原、池の端といった江戸の八景を四季の移り変わりとともに歌っているのだそうだ。

荒野の1ドル銀貨

2021年10月16日 | ムービー
『荒野の1ドル銀貨(原題Un dollaro bucato)』(1965年/ジョルジオ・フェローニ監督/イタリア・フランス)を見た。
物語は、「1865年4月、ジョンストン将軍がノースカロライナ州で北軍に降伏し、アメリカの南北戦争は終結した。弟フィル(ニコラス・セントジョン)と共に南軍の兵士として出征していたゲイリー・オハラ(ジュリアーノ・ジェンマ)は捕虜となっていたが、解放後、妻ジュディ(イヴリン・スチュワート)が待っている故郷へ帰る。フィルは負け犬のまま故郷へ帰る気になれないと、西部の町イエローストーンへ旅立つ。帰郷したゲイリーは "南部の町に俺達の未来はない" と考えるに至り、ジュディに半年後の再会を約束し、フィルがいるイエローストーンへと向かうことにしたのだが・・・」という内容。
フィルから貯金箱を貰っていたゲイリーは、1ドル銀貨1枚だけを受け取り、後はジュディの生活費として渡した。
自分だってこれからの旅でどうなるか分からないというのに、「それじゃ二人で分けよう」と言って、ほぼすべてを奥さんに渡すのだから、出来る男だ。
しかし、たどり着いた町では「よそ者に回す仕事はない」と、南軍残党の略奪行為に悩まされている住民達には、そう簡単に受け入れてはもらえないのだった。
いくら「もう戦争は終わった」といっても、世の中あらゆる人の戦争が終わるまでには相当の時間を要するものなのだろう。
何とか町の実力者マッコリー(ピーター・クロス)から仕事を貰えることが出来たゲイリーだったものの、これがさらに人生を狂わせる大事件に繋がってしまうのだから、一寸先は闇だ。
これはマカロニウエスタンを代表する作品のひとつ。
よく出来た面白い話だ。

花筏 / 柳家小さん(六代目)

2021年10月10日 | エンタメ
落語『花筏柳家小さん(六代目)。
噺は、「銚子での花相撲を請け負ったはいいものの、客の目当ての大関・花筏は病に伏せっていて、とても相撲など取れない。興業の前金も花筏の薬代に使ってしまったので、返金した上での中止も出来ず、ほとほと困り果てた親方は、知り合いのちょうちん屋を訪ねた。相撲は取らなくていいからと、花筏に顔や体格がそっくりのちょうちん屋を代役に仕立て、銚子に同行させようとするのだが・・・」という内容。
花相撲の七日間は土俵だまりで好きな相撲を見て、宿に帰れば飲み放題食い放題。
一日ちょうちんを張っての手間賃は一分だが、銚子に行けば一日二分のお金がもらえるというのだから、ちょうちん屋に断る理由がない。
移動を含めての十四~十五日間、楽して儲けられるというわけだが、そう上手く行くはずがないのが落語の世界だ。
(^。^)
さて、演者の六代目柳家小さん師匠は、実の父親でもある人間国宝・五代目柳家小さん(1915年~2002年)師匠の弟子。
昭和51(1976)年、二十九歳の時に戦後生まれとしては初の真打ち昇進を果たし、三代目柳家三語楼を襲名。
平成14(2002)年、五代目小さん師匠の死去によって兄弟子・鈴々舎馬風門下に移り、六代目柳家小さんを襲名したのは平成18(2006)年だという。
先代が人間国宝というのは、なかなかの圧力なのではないかと思う。
柳家花緑師匠は甥とのことだ。

グッドナイト&グッドラック

2021年10月09日 | ムービー
『グッドナイト&グッドラック(原題Good Night, and Good Luck.)』(2005年/ジョージ・クルーニー監督/アメリカ・フランス・イギリス・日本)を見た。
物語は、「第二次世界戦争が終わり、東西冷戦の時代。アメリカでは、ジョセフ・マッカーシー上院議員が中心になって推し進める"マッカーシズム"(赤狩り)が市民の生活を脅かしていた。法的な手続きを無視して共産主義者の排除を推し進めようとするだけでなく、自分の意にそぐわない者も攻撃するマッカーシー上院議員。しかし、誰もが自分も標的にされることを恐れ、マッカーシーの手法を公式に批判することはないのだった。そのような風潮の中、CBSテレビのエドワード・R・マロー(デヴィッド・ストラザーン)、フレッド・フレンドリー(ジョージ・クルーニー)、ジョー・ワーシュバ(ロバート・ダウニー・Jr)、シャーリー・ワーシュバ(パトリシア・クラークソン)らのチームは、火曜夜のテレビ番組 "See it Now"で、マッカーシズムと対決していくのだが・・・」という内容。
議員との対決姿勢を鮮明にしたのは1953年、デトロイトの地元新聞の「ミシガン州空軍予備役マイロ・ラドゥロヴィッチ中尉が、父親と妹が共産主義者だという告発を元に除隊勧告を受けたことに対し異議を申し立てた」という小さな記事を取り上げたことと、1954年に放映された『See it Now / A Report on Senator Joseph McCarthy(ジョセフ・マッカーシー上院議員についてのレポート)』という特別番組で、放送前や放送後の局内における様々なやり取りが面白い。
本作品はドキュメンタリードラマなのだそうで、作品中に登場するマッカーシー上院議員や議会の様子は、1950年代の実際の映像が使われているのだが、古い画像ではあるものの、作品自体がモノクロ作品なので違和感なく見られてしまう。
登場人物達が手から煙草を離さず、室内を始終煙が漂っている様子も、時代を感じさせる雰囲気だ。
(^_^)
全体的にヘビーな展開の中で、ワーシュバ夫妻が登場する場面が幾分息抜き的なエピソードであるのだが、自由の国であるはずのアメリカの大手マスメディアが社内結婚を禁止し、人員削減の際には二人に自発的な退職を促すというのもなかなかに興味深い展開だった。


寝床 / 三遊亭圓生(六代目)

2021年10月03日 | エンタメ
落語『寝床三遊亭圓生(六代目)。
噺は、「義太夫が趣味の旦那。人を集めて語りたがるのだが、友人や親戚でさえ一度は来ても初回で懲りてしまい、誰も立ち寄らなくなった。仕方がないので出入りの者達を集め、いろいろ御馳走をしたうえで義太夫を語るのだが・・・」という内容。
仕事があるからと一度は断った豆腐屋、大工の棟梁が思い直して義太夫を聞きに来たのだが、あまりに誉めるものだから、機嫌を直した旦那が「それじゃ今夜は気分を変えてどっさりやろう」とすっかり乗り気になってしまったのが笑える。
これはおべんちゃらを使い過ぎた。
(^。^)
このような大店の旦那が義太夫の一段でも習ってみようとするものの、稽古で師匠から少しでもやかましい小言を言われると、「私は別にこれで商売をするでもなし。そう言われた所で私には覚えきれないから、もう面倒だし、やめましょう」などと、すぐにへそを曲げてしまう。
そういうのを "旦那芸" と呼ぶのだそうで、機嫌を取りながら教えなければならないお師匠さんも大変だし、これでは上達なんかするわけがない。
(^_^;)
さて、演者の六代目三遊亭圓生(1900年~1979年)師匠の出囃子 "正札付" は、正札附根元草摺引(こんげんくさずりびき)という本外題なのだそうで、咄家でも、いわば横綱級でなければ使えないという出囃子なのだそうだ。
さすが圓生師匠。

ソイレント・グリーン

2021年10月02日 | ムービー
『ソイレント・グリーン(原題Soylent Green)』(1973年/リチャード・フライシャー監督/アメリカ)を観た。
物語は、「2022年。人口爆発により資源が枯渇し、世界の富は一握りの人間が独占していた。格差がとてつもなく大きくなり、人口4,000万人を超えたニューヨークでは、路上駐車のクルマの中や建物の階段にもホームレスが溢れているのだった。ある日、特権階級のサイモンソン(ジョゼフ・コットン)が高級マンションの自宅で殺害され、市警察殺人課のソーン刑事(チャールトン・ヘストン)が事件の捜査に当たることになったのだが・・・」という内容。
肉や野菜など本物の食料品は高価過ぎて一般市民はとても手に入れることが出来ない。
ほとんどの人間は高濃縮栄養素 "ソイレント・イエロー" や "ソイレント・レッド" という加工品の配給を受けて生き延びているのだが、この5センチ四方ほどのタイルのような形状のもの数百グラムを得るためには朝から何時間も列に並ばなければ手に入れることができないばかりか、手に入らないこともあるようだ。
供給体制をほぼ独占しているソイレント社の幹部だった男が殺害され、しかも家からは何も盗まれておらず、捜査中のソーンが何者かに尾行されるとなれば、大事件に発展する可能性もある事案のはずなのに、上司が捜査打ち切りを命令するという展開は、見ていて単純過ぎる構図なのだが、原作小説『人間がいっぱい(原題Make Room! Make Room!)』 (1966年/ハリイ・ハリスン著)が出版された時代を考えれば、分かりやすい展開というのも、まぁ仕方がない所かもしれない。
(^_^;)
地球が温暖化したために毎日が熱帯夜だとか、家具と呼ばれる美しい女性が特権階級の住む高級マンションに備え付けられているとか、白い紙すら貴重品で書籍の出版は途絶えたとか、ソル・ロス(エドワード・G・ロビンソン)のような本と呼ばれる人間が知識を交換する "交換所" という場所が存在するとか、妙な設定がいろいろあって面白い。
この物語を原案にして作り直してもそこそこ面白い作品になるのではないかと思うので、ぜひ日本映画界でこれをリブートしてほしいものである。
(^_^)