崖っぷちロー

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東日本大震災と亀井氏「軍政」発言

2011-03-29 01:06:23 | ニュース系
 国民新党の亀井代表の「誤解があるかもしれず、物騒(な言葉)だが、『軍政を敷く』くらいなことをやった方がいい。一番頼りになるのは自衛隊、警察、消防だ。そうしたことがしっかりした中でボランティアも機能する」という発言には驚かされました。その意味は自衛隊等のしっかりとした組織により強い主導性を発揮させろということであろうし、亀井氏本人も慎重に前置きをしてはいますが、『軍政を敷く』という言葉はやはり重いものがあります。
 参照:亀井氏、物騒だが「軍政を敷く」くらいなことを


 ここで『軍政』といわれると、まずは「戦争・内乱などに際し、軍が行政を担当すること」を意味すると考えるのが自然ですが、亀井氏としては関東大震災時の旧日本軍による戒厳をイメージしているのでしょうか。日本国内の災害に対処するという点では今回の大震災と共通しています。
 参照:デジタル大辞泉

 もっとも、戒厳では地方行政事務と司法事務の軍事に関係ある事件が軍隊によって掌握されますが、亀井氏も司法事務については考えていないでしょう。他方、今回の大震災に対応するための「軍政」であれば地方行政事務の掌握では全く不十分で、その意味では「軍政」に国家レベルでの行政事務の掌握を含ませているのかもしれません。

 そうすると、『軍政』の意味のうちの「軍事政権」という意味に近づくのかもしれませんが、もちろん、このような体制は現行憲法の下では許容されることはありません。

 また、そもそも現代のように極めて複雑化した国家の行政を自衛隊(や警察消防)が担うことには無理があります。太平洋戦争についても、戒厳令ひいては軍隊には、「進歩して複雑な機構となっている近代国家の運営を統制することは困難」であり、「特に総動員態勢業務の遂行には不適」だったという評価があります。(宮崎弘毅「日本・旧軍」大平善梧他『世界の国防制度』) 

 自衛隊は決して万能の組織ではありません。仙台の災統合任務部隊司令部では東北方面総監以下600名近い数の幕僚が集まっているということであり、今回の大震災に対して絶大な効果を発揮していますが、これ以上となるとかなり厳しいのではないでしょうか。

 政治(家)は自衛隊や警察消防に全てを押し付けて投げ出すのではなく、彼らが最善の活動をできるようにサポートをするべきでしょう。行政府立法府として、やるべきことは多いはずです。

 また、中長期的には、このような広域にわたる大災害に対応するためにどのような国家制度・地方自治制度を作るべきかということも問題になるでしょう。政治家はボランティアや募金活動などの肉体的なパフォーマンスをするのではなく、頭を働かせるべきです。

 参照:宮城にボランティア派遣=民主
    民主党は24日、被災地に党所属議員や秘書らをボランティアとして派遣することを決めた。

○道州制について
 おそらく、このような大災害に対しては、市町村レベルはもちろん都道府県レベルでも力が足りないのではないかと思われます。今回自衛隊が組織としてその力を発揮している要因の一つには、方面隊という広域を管轄するレベルが存在していることがあるといえるでしょう。

 また、地方行政としては、関西広域連合による支援が話題になっています。直接の被災地でない自治体も、都道府県市町村レベルではなくこのように広い範囲にわたって力を集めることで、より協力な支援に繋がっているのではないでしょうか。

 将来的には、このような関西広域連合の仕組みをより強化するため、道州制を導入するべきでしょう(もちろん道州制にすべき理由はこれだけではありませんが)。

 そして、その道州制の区分に応じて、警察や消防も広域にまたがる統制態勢を強化すべきでしょう。最終的には、道州区分と警察(管区)、消防(広域)、自衛隊(方面隊ないし師団等)が一致することが望ましいのではないかと思います。

※3月29日追加
軍事アナリストの小川和久さんのツイート
御意。日本版FEMA(危機管理庁)のブロックごとの出先が消防、警察、自衛隊を調整すれば実現します。 RT @j760339: @kazuhisa_ogawa 自衛隊とは別に、日本の各ブロック(関東、近畿、九州など)単位で編成される災害救助部隊が必要だと思いますが、どうでしょうか?
http://twitter.com/#!/kazuhisa_ogawa/status/52731430605819904

○戒厳について
 なお、戒厳等の制度の整理は北博昭著『戒厳その歴史とシステム』が分かりやすいと思います。

 まず大枠として、軍隊による治安維持全体を指す「非常警察」という概念があり、それが「戒厳」と「治安出兵」に分かれています。この「治安出兵」は軍隊が地方行政にも司法にもかかわらないもので、今日の自衛隊法78条以下における「治安出動」に引き継がれていると言っていいのかもしれません。

 他方、「戒厳」は、戦時等に使うための「戒厳令」に規定のある「真正戒厳」と、平時の緊急事態に対応するための「行政戒厳」に分かれます。この「行政戒厳」は法令等に直接の規定がなく、「戒厳令」を目的論的に(苦しい)解釈をして正当化されるものです。

 関東大震災に対しても、この「行政戒厳」が使われました。
 
非常警察
 ├戒厳
 │ ├真正戒厳
 │ └行政戒厳
 │
 └治安出兵


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