幼い頃、帰省の列車が青森駅に着く前に車掌さんが乗船名簿を配りに来た。
青森から先に行く人は青函連絡船に乗るのですよ。
夏休みだし北海道は人気だし、連絡船の乗り場まで人がぞろぞろ歩いてました。
連絡船には、雑魚寝が出来る広い座敷(カーペット敷き)と、部屋になっていて入口にカーテンが付いている婦人専用室と、座席の部屋と、個室でベッド付きの特別室がある。
我が家はいつも婦人専用室を使っていた。
荷物を置くと、母は売店に「荒巻弁当」とお味噌汁を買いに行く。
これがまた美味かった。
割りばしの袋には、「ぱしゅい」と書いてあった。アイヌ語で「箸」の事だそうだ。
袋の裏には他にもいくつかアイヌ語が紹介されていた。
たまにお弁当ではなく、食堂で食べる事もあったが必ず「海峡ラーメン」を頼んでいた。
基本、函館塩味でワカメがたくさんトッピングされていて、これまた美味かった。
さて、日中特急列車で来ると後は寝るだけだったが、寝台で来るともう明るいのであちこち船内を探検しに行く。
座席の部屋に行き、意味もなく座ってみたり、甲板に出たり…。
いつも知っている「端っこの海」ではない、「真ん中の海」はとても濃い色で果てしなく深く思えて、少し恐れながら見入ってたもんです。
で、船から降りるといつまでも揺れてる感じがして、これも楽しかった。
電車とかの揺れは踏ん張ってないと持ってかれそうな揺れだけど、連絡船の揺れはなんか上から押し付けられたまま横に「ぐいぃぃぃぃ~ん」って引っ張られる感じがして好きでした。
小さい頃から毎年列車と船で長旅をしていた我が家、乗り物酔いとは無縁です。
そして、帰りはじーちゃん・ばーちゃんが桟橋で見送る中出航です。
銅鑼の音が響き、ホタルノヒカリが流れる中ゆっくりと船が動き出すと、毎年号泣でした。
結婚してから行った時も、条件反射のように涙が溢れ、トイレに駆け込み号泣。
どうやら「銅鑼の音・ホタルノヒカリ・出航」と「号泣」はセットになってしまったようです。
そんな青函連絡船も廃止になって久しい…。
懐かしい思い出のひとつです。